表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブルS  作者: かじき
30/36

30.


 昼寝なんてしなければ良かった。

 今更ながら、彗は後悔した。

いくら翔平に助けられて、その腕に縋って安心できたからと言って、眠ってしまうんじゃなかった。夜がどんなに辛くても、眠りに逃げることができなくなってしまったのだから。

浅い眠りの中で聞いた静の声。

『マンションはどうするの?』

 それに対する翔平の答えは

『ここで一緒に暮らせたら……。』

だった。

 その会話は、おそらく夢ではなくて、現実に交わされたものだろう。

 でも、考えたくはない。毎日、翔平の隣に静が寄り添う姿を見なければならない未来も、翔平の愛情も優しさも静に注がれている様を感じなければならない未来も、そんな二人の想いを笑顔で受け止めて見守っていかなければならない未来も………!

 だが、一緒に暮らすのを嫌がれば、翔平は静の元へ帰ってしまうかもしれない。手の届かない、声の聞こえない、笑顔を見ることさえかなわない、私の知らないどこかに行ってしまうかもしれないのだ。

 常に恋人と一緒にいる姿を見続ける日々と、遠く離れて会うこともままならない時間のどちらが苦しいのだろう?辛いのだろう?

 そう考えると涙が溢れてしまいそうだった。でも泣いてはいけない。翔平に起きていることが判ってしまう。いや、悪夢を見たと、泣いて縋り付いてしまった方が良いのだろうか?その腕のぬくもりが自分のものではないと知っているのに?

 最初の頃の厳しい翔平の姿をずっと貫いてくれていたら、こんなに心を占められることは無かったのに。静を想うのなら、自分にまで優しくしてくれなければ良かったのに。

 ひとりぼっちになってから初めて見つけた大切な人は、最初から失うことが決まっていたのだ。こんなに好きなのに……。ずっと側にいたいのに………。

 想いは混乱してゆく。自分にとって確かなのは、繋いだ翔平の掌の温度だけなのに、求めることが赦されないのであれば、これから先どうやって生きていけば良いのかさえ彗には解らなかった。

 夜の非情な長さを、彗は改めて思い知らされた。



短いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ