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ダブルS  作者: かじき
27/36

27.


 家に入って、リビングのソファに座っても、彗は翔平から離れなかった。

 駿一が、翔平の振りをして、学校に彗の欠席の連絡を入れる。静が彗にホットミルクを淹れた。

「………で、何があった?」

 電話を終えた駿一が尋ねた。

「これだけ彗ちゃんがショックを受けてんだ。何も無かった訳じゃないだろう?」

 翔平の歯切れが悪くなる。

「うん、まぁ、ちょっと、な………。」

「あの、真樹とかいうヤツに迫られたのか?」

 翔平は愕然とする。

「駿!お前、もしかして見ていたのか?」

 駿一はニヤリと笑った。

「現場を見てなくても、あの坊やが彗ちゃんに夢中なのは、明らかだったろ?!」

「そう、だな。」

 そして翔平は、自分にくっついたままの彗の顔を覗き込む。

「だが彗は気付いて無かっただろう?だからショックだったんだよな?」

 彗は小さく頷いた。

「でも、翔がいたんだから未遂よね?」

 静に問われて翔平は頷いた。

「当たり前だ。俺がアイツに遅れをとるか。」

「なら、良かったわ。やっぱり女の子は、何事も好きな人相手じゃないと、ね。」

彗も微かに頷いた。

「………うん。……好きな人とじゃなきゃ、やだ………。」

 翔平が彗の頭を撫でる。

「まぁ、そりゃそうだよな。」

 駿一が面白そうに言う。

「じゃあ、先に好きな男にしてもらったらどうだ?最初っから最後まで。」

 途端に翔平が顔をしかめる。

「駿。彗が傷付いている時に、そういう冗談はよせ。」

 だが、駿一は更に楽しむように、瞳を煌めかせて言った。

「翔にとってはそれだけじゃねぇだろう?ヤキモチっつーか、独占欲っつーか、そういうのもあるんじゃねぇのか?」

「お前は想像力が過ぎる。」

「そうか?じゃあ聞くが、いずれは彗ちゃんも男を連れてくるかもしれないんだぜ?この人とお付き合いしています、とか、彗ちゃんを僕に下さい、とか……。そういう男に、ヤキモチを焼かずにあっさり彗ちゃんを譲れるのか?ん?翔平くん。」

 ニヤニヤしている駿一に、翔平は断言した。

「彗の保護者として、俺は、俺が認めた男にしか彗はやらない。そう決めている。」

 駿一がちょっと笑った。

「まるっきりガンコ親父だな。それが独占欲でなくて何なんだ?」

 翔平が答える前に静が尋ねた。

「じゃあ、もしも、もしもよ。真樹くんだっけ。彼がそういう行動を取ってなかったら、彗ちゃんを譲れた?」

「駄目だ。」

「どうして?」

「四年もコイツの側にいて、コイツの心の傷を癒せていない。」

「それ言っちゃうと、すんげーハードル高くなっちまうぜ?彗ちゃん、大変だな。半端な彼氏じゃ、翔は認めてくれないぞ?」

 彗は子供のように首を振った。

「彼氏なんて、いらない。」

 翔平以外は。

 そんな彗の内心に気付かずに、翔平はちょっと笑った。

「なら、好きな男ができるまではずっと、俺の横に居れば良い。」

「うん。」

 彗は素直に頷いた。

 そんな二人に、駿一と静は視線を交わし合いつつ苦笑した。



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