25.
「………ねぇ、駿。」
哲平とゲームをしていた駿一に、哲平がトイレに行っている間に、静は言った。
「後で翔にも話すつもりなんだけど、ちょっと調べてみたら、『根本』の現社長に息子がいるの。」
「息子?彗ちゃんの従兄って訳か?」
「そう。……それがちょっと、ううん、かなり強烈な人らしくて、彗ちゃんのご両親が生きていた頃から、彗ちゃんにしつこかったらしいのよ。業界ではストーカーと称されて噂になってたくらい……。しかも、親がそれを応援していたようよ。二人が結婚できたら、財産が入ってくるからって………。」
「……そうなのか?」
「うん。………ご両親が亡くなって財産を取り上げてしまったから、現社長夫妻にとっては彗ちゃんは不要になってしまって、息子も泣く泣く彗ちゃんから手を引く格好になってしまったけれど、今でも彗ちゃんを狙っていておかしくないって話だわ。」
「それは困るね。」
聞こえていたのだろう、リビングの扉を開けながら哲平が言った。
「……聞こえちゃった?ごめんなさい。不安にさせるかと思って、内緒にしようと思ったんだけど………。」
謝る静に、哲平はちょっと笑った。
「俺には気を遣わなくて良いよ。結構、図太いから。」
「……だが、彗ちゃんは遺産を放棄したんだろう?」
「って聞いてるけど、実際に確かめた訳じゃないんだ、俺。」
「じゃあ、確認した方が良いわね。もし残っている財産があったとしたら、その財産と彗ちゃん本人、一挙両得を狙ってくるかもしれないわ。」
「兄さんが簡単にそれを赦すとは思えないけど。」
「そりゃそうだ。」
哲平が難しそうな顔をする。
「もし遺産の一部が残っていた場合、俺が人質的な意味で狙われる可能性ってある?」
「………どうだろうな。向こうの人間性次第だから、調査の足りない今の段階では、何とも言えないな。」
「彗のお父さんが亡くなった時、彗も彗のお母さんも暴力団にまで追われたって話だったから、そこまでしてくる相手なのかなって思って。俺、嫌なんだ。彗や兄さんの足枷になるの……。」
「なら、暫く俺が一緒に登下校してやろうか?事態がはっきりするまで。」
「でも、そうなると駿さん、動きにくくならない?彗に何か遭った時、兄さんのフォローに行きにくくなったり………。」
「いや、お前を拉致される方が、よっぽど動きにくくなる。」
静が頷いた。
「確かにその通りね。翔にとっても彗ちゃんにとっても、絶対に大事な存在だから。」
「それに、その辺の暴力団員数人程度なら、翔一人でも何とかできる。」
「楽勝ね。」
二人の意見を聞いて、哲平は駿一に向き直った。
「じゃあ、悪いけど駿さん、お願いします。」
「解った。」
笑顔を交わす駿一と哲平に、静の頬も緩む。
「………でも、その可能性を読む力といい、感情の割り切り方といい、哲平くんって大人ね。小学生だとはとても思えないわ。」
「そりゃ、兄さんが出て行って、他人だった彗がやってきて、俺も大人にならなくちゃいけなかったし。」
言いつつ、哲平は悪戯っぽく笑った。
「しかも俺、こんな小生意気な自分が嫌いじゃなかったりするんだ。これが自分らしいって言うか、ね。だからつい、そういう言動に走っちゃうんだ。」
「………哲。」
「何?駿さん。」
「お前もモテるだろう?」
哲平は声を出して笑った。
「うん。兄さんのダンボール三箱には負けるけど、それなりにはね。」




