24.
翌日の日曜日。翔平と彗は約束通り一緒に出掛けた。
色の付いたサングラスをしている翔平は、もの凄く目立った。怖い人に見られたのならまだ良い。芸能人かモデルかという雰囲気になり、女の子達の視線が集中するのだ。更に彗が履き慣れていないミュールを履いていると解っていて、手を繋いでゆっくり歩いてくれている。翔平には悪気は全く無いのだが、女の子達の嫉妬や羨望が突き刺さるようで、彗は居心地が悪くて仕方なかった。
翔平は何も言わずに、ただ前を歩いていく。歩調はゆっくりだが、振り返りもしないのが、彗を不安にさせた。
翔平が、とあるビルの一階の自動扉をくぐり抜けた。そこでやっと彗の手を離す。見回すとそこはアクセサリーショップだった。煌びやかな店内を、彗がぼうっと見ている間に、翔平は店員と何か話して、自分は店の隅へと移った。
その店員が彗に近寄ってくる。
「お客様、こちらへどうぞ。」
店員に連れて行かれたのは、ネックレスやペンダントのコーナーだった。彗が戸惑っていると、その店員は微笑んで耳打ちしてくる。
「あの方、彼氏ですよね?あなたにネックレスかペンダントをプレゼントしたいけれど、何が良いか判らないから、一緒に選んであげてくれって、おっしゃってました。………愛されてるんですね。羨ましいです。」
それは無い!と思った彗だが、顔は熱くなってくる。
「あ、の……兄なんです………。」
彗は言い訳したが、店員は微笑んで
「そんなに恥ずかしがらなくても、とってもお似合いですよ。」
と言いながら、色々なものを並べ始めた。
気さくな店員と話しながら選んでいって、最後に二種類、候補が残った。ひとつはチェーンネックレス。だが、単なるチェーンでなく、幾何学的な、少し変わったチェーンだ。もうひとつはシンプルなチェーンに小さな流線型の、何の形なのか解らないが、ペンダントヘッドが付いているもの。薄い水色の石が付いている。
「最後は彼氏に選んでもらいましょう?せっかくですから、『買ってもらった』という感じが残せるともっと幸せですからね。」
店員が悪戯っぽく言って翔平のところに二本のネックレスを持って行った。
「彗。」
店員が事情を説明したのだろう、翔平が彗を呼んだ。二本を交替に付けさせる。
「こっちが良い。」
翔平が選んだのはペンダントヘッドが付いた方だ。彗はそのままネックレスを付けて、アクセサリーケースだけが入った袋を受け取って店を出ることになった。
また手を繋いで歩き出してから、我慢できなくなって、彗は翔平に尋ねた。
「翔平さん。あの……、どうして………。」
「今まで丸首のTシャツだったのが、そういうのを着ると、首元がかなり空いて見える気がしたんだ。それにお前、装飾品なんて持ってないだろう?ひとつくらいあっても良いだろうと思ってな。」
彗はとても嬉しくなった。嬉しくて嬉しくて思わず笑顔になる。
「翔平さん、ありがとう。」
「………やっと笑ったな。」
翔平が微笑んで頭をクシャッと撫でるから、彗はもっと嬉しくなる。そんな彗の耳元に、翔平は唇を寄せた。
「もうひとつ教えてやる。俺が女に何かをやるのは、死んだ母親以外ではこれが初めてだ。」
彗は瞳を上げた。
「必要経費、じゃないの?」
「洋服は必要だが、装飾品はあっても無くても良いものだ。だからこれは違う。………だが、アイツ等にはそんなこと言うなよ。」
彗は信じられない程嬉しくて、涙が出てしまいそうだった。
「うん。」
小さく頷いた。




