15.
今まで一人で過ごす事が多く、内心寂しがっていた哲平は、駿一と静が暫く一緒に暮らすことに抵抗するどころか、大喜びで歓迎した。特に駿一とは男同士でもあり、翔平が彗に多く時間を割いていることもあって、もう一人兄ができたかのように懐いた。
その日も学校から帰って、まず宿題を済ませる。というのも翔平が、宿題は教師と生徒の間の約束事だと言って、それを先に済ませないと怒るのだ。で、それをやってしまってから、リビングで駿一と格闘ゲームで対戦しながら、お喋りをしていた。
静は、彗の負担を少しでも軽くしようと、台所に立っている。
翔平は彗の下校を見張りに行っていた。
「ねぇ、駿一さんと兄さんって、仕事仲間なんだよね?どんな仕事、やってんの?」
「どんな、って翔から聞いてねぇのか?」
「うん。全然。」
「しょうがねぇなぁ、翔も。彗ちゃんは可哀想かもしれないが、放っておかれる哲も可哀想だろうが。血の繋がった弟なのによ。」
哲平は笑顔で首を振った。コントローラーを扱う指は忙しく動いている。
「ううん。俺が兄さんに頼んだから、彗のこと。」
「そうなのか?」
「うん。兄さんから聞いたと思うけど、彗、辛い思いいっぱいしてきてるからさ、少しでも幸せになって欲しいんだ。」
「………哲平は優しいな。」
口では褒めていても、指は手加減しない。駿一は技のコマンドを入力した。
「そうじゃないよ。四年も一緒にいたら、俺にとってはもう姉さんなんだ。だって、毎日欠かさずご飯作ってくれて、掃除も洗濯もしてくれてたんだよ?アルバイトもしていたのにさ。」
言いつつ哲平は掛けられた技をかわし、コマンド入力し返す。
「翔よりよっぽど家族らしいんじゃないか?!」
「そんなんじゃないよ。俺にとっては、兄さんも彗も同じように大事ってだけ。」
「良い子だな、哲平は。」
「だから違うって。」
「………まぁ、俺達の仕事については、また翔から聞けよ。それも兄弟のコミュニケーションだろう?!ただ、これだけは言っておく。俺にとって翔は単なる仕事仲間なんかじゃない。そんな軽い間柄じゃなくて、唯一無二の相棒だ。映画やドラマでよく出てくるような『背中を預かられる』っていう……、そういう相手だ。」
「そうなんだ?!」
哲平が嬉しそうに微笑むのを感じて、駿一は苦虫を噛み潰したような表情になった。
「哲。俺がそんなことを言ったっていうのは、翔には言うなよ?」
「何で?別に良いじゃん。」
「良いから。男同士の約束な。」
静が笑った。
「哲平くんがわざわざ言わなくても、解ってるわよ、翔は。」
「うん。そうだね。じゃあ、約束。」
哲平も笑って拳を突き上げた。その瞬間、コマンド入力した技も決まり、哲平の勝利が決まったのだ。
「しまった~~~っ!」
駿一はコントローラーを投げ出して絶叫した。




