10.
翔平の単車の後ろに乗せられた彗は、そのまま家まで連れて来られた。
リビングに連れられて、翔平の正面に座らされた彗には、彼が怒っているのが凄く伝わってくる。はっきり言って、やっぱり怖かった。
帰りの遅い彗を心配して、哲平も起きて待っていた。その哲平が兄に懇願する。
「兄さん、お願い!彗を叱らないで!」
だがそれには答えず、翔平は、感情を抑えたままの彗を睨みながら、駿一に向けて言った。
「駿。」
「はいよ。」
「静を呼んでくれ。」
「静を?何で?」
「鎧を剥ぐ。」
「……ふうん………。」
駿一は携帯で連絡を取る為、廊下に出て行った。
「哲。お前も、もう寝ろ。明日も学校だろう。」
「………うん。」
哲平は心配そうな顔をしながらも、兄に従って部屋を出て行った。
彗は翔平と二人、取り残される。
「……彗。」
翔平の低い声に、彗の細い肩がぴくんと揺れた。
「お前がしなきゃならなかったのは、橋から飛んで母親に会いに行くことじゃなく、真っ直ぐここに帰ってくることだった筈だ。………違うか?」
彗は俯いた。あの時はぼんやりと思ったことを口にしただけで、本心からそうしようと思った訳ではない。けれど、怒る翔平が怖くて言い出せなかった。
「俺はお前がそんなことをするのを赦すつもりはない。そういう行動は取らないだろうと信じていたんだが、そんな俺の信頼を裏切った以上、お前を監視させてもらう。二度と母親の元に行こうとしないようにな。」
彗は驚いて瞳を見開いた。
「監視っ?!」
「反論するな。元々俺の命令には絶対服従だと言ってあった筈だ。」
「でも、監視なんて!」
翔平は意地の悪い笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。トイレや風呂は勿論、学校の中やアルバイト中の家にまで乱入したりはしない。だが。」
翔平の眼光が鋭利な刃物のように鋭く変わる。
「それ以外は俺か静がお前に付くと思え。それから、当分の間、お前は俺の部屋で過ごせ。お前の部屋は静に使わせる。」
「寝る時も?」
「寝る時も。………寝静まった後に出て行かれたら大変だからな。」
「そ、んな………。」
「ゴキブリからは守ってやるぜ?」
翔平はニヤリと笑う。
「傲慢だと思うか?だがこれがお前の兄貴になった男だ、諦めるんだな。」
そこに駿一が戻ってきて言った。
「静と連絡が取れたぜ?今から来るってさ。」
「さんきゅ。」




