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流血や抗争等のシーンがございます。ご注意願います。
親父が交通事故を起こした。相手は女性で、小学校高学年くらいの子供の手を引いて、道路に飛び出して来たらしい。子供は軽傷で済んだが、彼女は命を落としてしまった。後で判ったのだが、彼女は富豪の未亡人だった。親類縁者には、富豪に色目を使って財産を横取りした悪女だと、そう言われる存在だった。その為、責められるどころか、事故に対する慰謝料さえも払わずに済んだのだが、ひとつだけ条件があった。それは、たった一人残された子供を引き取ることだった。
と急に言われて、納得できる筈が無い。地元のとある高校に通う水沢 翔平も、猛烈に反発した。翔平は父親と年の離れた弟、哲平の三人で暮らしていた。母親は弟の出産の際に命を落として、既に八年が経っている。翔平なりに、小さかった弟の面倒を見、家事をこなして、三人の生活を支えてきたつもりだ。
それが、何の前触れも無く、いきなり家族が増えることになった。数ヶ月後に受験を控えたこの時期に。
腹立ち紛れに、翔平は家出を決行した。自分の部屋の壁に、グリーンのカラースプレーでGOOD―BYEと書き殴って。
新作です。宜しくお願い致します。