変わる朝
気づけばもう朝だった。
「‥あれ‥‥?わたしいつの間に寝ちゃったんだろ‥‥‥?」
ふと、時計を見ようとすると、そこには‥‥‥‥
堂々と雉が寝ていた。
「‥‥‥‥な‥‥なんであんたがこんなところで寝てんのよ〜!!!」
「‥‥‥なんやねん‥‥朝っぱらからうるさいのぉ‥‥‥。」
雉はゆっくりと目を覚ました。どうやらなかなか口論に終止符がうたれなかったらしい。うっすらと目に隈ができている。
「お前とぎゃーぎゃーさわいどったうちに寝てもうたんやろ。」
雉はあくびをしながらそう答えた。そうとう眠いらしい。
だが、やよいはそんなことは無視して言った。
「いったいいつまでここにいるのよ!!契約を破棄する方法を探すんでしょ?」
「それができるんやったらとっくの昔にやっとるがな。」
「‥‥どういうこと?」
やよいはおそるおそる聞いた。なんだかいやな予感がする。
「一度契約したら契約したもの同士は30M以上離れることができんのや。」
「なにそれ!?!?そんなの初耳だよ!?」
やよいのいやな予感が的中した。
「お前がなんか力持っとったら少しは変わってくるねんけど‥‥‥見たところこれといったものはないしなぁ。」
「じゃあ、わたし学校どうすれば‥‥‥あ、そういえば‥‥‥」
やよいはふと思い出したように時計を見た。
時計の針は、7時30分を指していた。
「やば〜っ!!!!遅刻する〜!!!」
そう叫んだ瞬間、ドアをノックする音が聞こえた。
「お姉ちゃん?入るよ〜。」
その声は妹だった。
「や‥‥やば!!雉!!早く隠れて!!!!」
「えええ!?!?」
「お姉ちゃん。‥‥何やってたの?」
やよいは雉をクローゼットの中にほり込んだ。
どうやら、妹には、クローゼットを勢いよく閉める姉の姿しか見えなかったようだ。
「いや‥‥その‥‥今起きたところで‥‥‥急いでたからつい‥‥あはは。」
「今日は早く行かなくていいの?」
「き‥‥今日はいいの!!今から着替えるから、先に下にいっといて!!」
「‥‥‥変なお姉ちゃん‥‥‥。」
そういって、静かにドアを閉めた。
「‥‥もう出てもええか?」
「着替えるからもう少しそこにいて。」
そう言ってやよいは1分ぐらいで制服に着替えた。
「雉。もう出てきてもいいよ。」
そう言われたので、雉はそっと出てきた。
「それよりあんた、学校までついてくるつもり?」
「契約してもうたからしゃーないやろ。鳩になってお前の近くにある電線にでも止まっとくわ。」
「授業の邪魔とかは一切しないでよ!!」
「んなことするわけないやん。特にお前になんか。」
「なによ!どういうこと!?」
またけんかが始まりそうになった。だがそのとき、
「やよい〜!!早くしないと遅刻するわよ〜!!」
という母の声がしたので、やよいは雉を睨みながらも下へとおりていった。
「ねえ、お姉ちゃん。昨日何かあったの?」
食事中、いきなり核心に触れるようなことを妹に問われ、やよいは食べていた焼き魚をのどに詰まらせた。
「ごほごほ!!な‥何もないよ?」
やよいは何とかごまかそうとした。
だが、すみれは一歩も退かない。
「何もなかったら、いきなりぎゃーぎゃー騒がないよね?」
「う‥‥‥あ!もう学校行かなきゃ!!ごちそうさま〜!!」
「あ、ちょっと!お姉ちゃん!!」
「やよい!」
やよいは、食べかけのものを台所に持っていくと、急いで鞄を取りに部屋へ向かった。
二人の声が聞こえたが、やよいは無視して部屋に行き、鞄を持って走りながら玄関を出た。
「いってきま〜す!!」
慌ててそう言って、逃げるように走った。
「お姉ちゃん‥‥ますます怪しい。」
「ああもう最悪!!なんで朝からこんなに焦らないといけないのよ!!」
「それは自業自得やで。」
「うわあ!!脅かさないでよ!!」
ぶつぶつと呟いていると、いつの間にか雉が目の前にいた。
突然だったので、やよいは尻餅をつきそうになった。
「って、人間の姿でついてくるつもりなの!?」
「ちゃうちゃう。俺は、昨日倒れとったところまでいったらキジバトになるつもりや。」
そう言っているうちに、雉が倒れていたところに着いた。
そこには先客がいた。
ワンピースを着た長髪の、やよいと同い年ぐらいの少女だった。
「あれ‥‥?誰かいる。」
「‥‥やっぱ見えるんか‥‥‥。」
やよいは今の雉の言葉の意味がわからなかった。
何のことか聞こうと雉の方を見ると、雉は鋭い目で前に立っている少女を睨んでいた。
ふと、前に立っている少女がこっちを見て、そっと口を開いた。
「やよい。」
少女はそう言って微笑んだ。
「嘘‥‥かすみ姉!?なんで‥‥!?」
やよいの目は驚きの色しか映さなかった。
そう、やよいの姉、かすみは、3年前に死んだはずだから。