現れた、新たな謎
雉が治って1週間が経った。
‥‥‥いや、経っていたと言う方が無難かもしれない。
「ねえ!!大丈夫だったの!?やっぱり誘拐!?」
「ちゃんといってよ!!」
「まさか神隠しとかいうんじゃないだろうな。」
やよいと琉度は学校に帰ってきた瞬間、質問攻めだった。
やよいは最初、わけがわからなかった。
「ちょ‥‥‥ちょっと!!いったい何の‥‥‥」
そう言いかけたやよいの代わりに琉度が凛とした声でこういった。
「悪いけど、警察に口止めされてるんだ。事件の事は決してもらすなって。」
そう言ってやよいを引き連れて琉度は教室を後にした。
そしてまたまた屋上にやってきた。
「あ〜もうどうなってんのよこれ!!」
「カレンダー見たでしょ?その通りだよ。」
「じゃあなんであの木の中ではだいたい1時間ぐらいしかいなかったのに帰ってきたら1週間も経ってるのよ!!」
そう、やよい達が元の世界に帰ってきたときには、雉を助けるために霊樹に入ったときからなんと1週間も経っていたらしい。
その間は警察沙汰にもなり、大きな話題になったようだ。
やよいの問いにはふと出てきた雉が答えた。
「あの木の中は空間が歪んどるからな。何が起こるかわからんねん。」
「雉!!(びっくりした)‥‥‥それってどういう事?」
「簡単に言うとやなぁ〜‥‥‥木の中から出るときに空間を無理矢理こじ開けて帰ってきたさかい、ただ3分ぐらいしか歩いてなくても実際の世界では多くの時間が経ってしまったっちゅうこっちゃ。」
「そんな‥‥‥」
「学校側はなんとか隠しきってくれてるようだけど‥‥‥結構まずい事になりそうだよ。」
琉度はそう言ってため息をついた。
確かに生徒が昼休みに突然消えて、1週間後に何もなかったかのように現れてと、学校側からしたらとても不可解な現象である。
多分教師達には何を言っても無駄かもしれない。
「じゃあ‥‥‥いったいどうすれば‥‥‥‥。」
やよいはそう言ってため息をついた。
「じゃあ、僕が何とかしてあげるよ。」
「琉度!?」
琉度はそう言ってにこっと笑った。
「やよいちゃんならボロが出るかもしれないでしょ?僕に任せてよ!!」
「でも‥‥‥」
「いいからいいから。雉の事はちゃんと伏せとく。」
そう言って琉度は職員室に向かって屋上を後にした。
「大丈夫かなぁ〜琉度‥‥‥」
「あいつの事やから何かたくらんどるんやろ。心配あらへん。」
雉はそう言ってやよいの頭にポンっと手を置いた。
「言い忘れとったけど‥‥‥ありがとうな‥‥‥。」
雉はそれだけいうと、ふっと鳩に姿を変えて飛んでいった。
「‥‥‥‥‥馬鹿‥‥‥‥‥」
小さな言葉は誰にも聞こえなかった。
授業があるので教室に帰ってきた。
教室に帰るとてっきり質問攻めにされると覚悟していたが、
「やよい〜どこ行ってたの?次は移動だよ!!」
「早く行こうよ!!」
など、質問とはかけ離れた声をかけられた。
まるで何もなかったかのように。
「‥‥‥‥え‥‥‥?」
ぽかんとしているやよいの耳に、追い打ちをかけるような声が聞こえた。
「やよいちゃんも早く行かないと遅れるよ〜!!」
その声は琉度だった。
「あ‥‥ちょっと待って!!」
訳がわからないまま慌ててみんなの後を追っていった。
結局、その日は屋上から教室に戻って一度も1週間消えていた事を質問されなかった。
しかも、家に帰っても同じように、何事もなかったかのように
「おかえり〜お姉ちゃん。あ、雉さんもいらっしゃ〜い。」
「おかえりやよい。あ、どうも〜。」
ごく普通な返事がかけられただけだった。
何もなかった。
いや、1週間やよいと琉度(と雉)が消えていたという事実がなくなっていた。
「どうなってんの‥‥‥!?」
現れた、新たな謎。