出会いは道ばたで
「・・・うわ〜、もうこんな時間!?早く帰らないと!!」
もう日が暮れ、空は薄暗くなっていた。周りには誰もいなく、静まりかえっている。
彼女の名前は前原やよい。雪咲高校に入学して約3ヶ月、だいぶ高校に慣れてきたまぁ普通(?)の高校生で、現在生徒会に入っている。
生徒会の仕事はあまり楽じゃないらしく、むしろ大変で、今日も居残りして仕事をかたづけていた。
「何で同じ1年の子は仕事ないのよ!これってイジメじゃないの!?あーもう!!今日は大事な日なのに〜!!これじゃあ今日厄日じゃん!!」
やよいは一人でぶつぶつと呟きながら、猛スピードで走った。学校から家まではそう遠くない。
ふと見えたのは家の近くの曲がり角。この角を曲がったら家はすぐそこだ。
「よかった!思ったより早く家に着きそう!」
そう言ってその角を曲がろうとした‥そのとき‥‥‥。
“ゲシッ”
何か柔らかい物を蹴ったような‥‥‥?
やよいは止まって周りを見てみると、周囲には羽が何枚か散らばっていた。
そしてそこには、おそらくさっきのやよいの蹴りを受けてしまったであろう鳩が、ひっくり返っていた。
「…ひ‥ひょっとしてわたしが殺しちゃった‥‥!?」
慌ててその鳩に近寄った。運良く、その鳩は気絶していただけで、ちゃんと生きていた。
「よ‥よかった〜(よくないだろ)。あ、でも怪我してる!手当してあげないと!」
やよいはその鳩をそっと拾い上げた。そして両手に抱いて、また家まで走っていった。
その選択が、後に後悔することになるとは知らずに‥‥‥。
鳩に気を取られてるうちに、もう辺りは真っ暗になっていた。
「ただいま〜!!」
「やよいお姉ちゃん遅い!今日はわたしの誕生日なのに!!」
「ごめん!すみれ。でもわざわざ待っててくれたんだ。ありがとう。そして誕生日おめでとう。」
「…///分かればいいの!」
すみれはやよいとは5つ離れた妹で、意外なところで結構鋭い。
「ところでお姉ちゃん。手に持ってる物なに?」
「あ‥これは‥‥‥道ばたで拾ったの。怪我してた(怪我させた)から‥‥‥。」
「かわいそう‥‥。大丈夫?この子。しかもキジバトじゃん。」
「大丈夫だよ。ちょっと待ってて。この子の手当てしてくるから。」
「あ、下におりてくるときは、あのペンダントしてきてね〜!」
「はいはい。」
やよいはそう言って、急いで2階の自分の部屋へ向かった。
「お姉ちゃん大丈夫かな‥‥。すっごくぶきっちょだから‥‥ちゃんと手当できるのかな‥‥。」
そして、やよいの部屋では‥‥‥
「手当はこんなもんでいいかな?いいよね!よしOK!!」
彼女いわく手当は終わったらしい。
だが、その鳩は頭以外すべて包帯でぐるぐる巻きにされていて、飛ぶことはおろか、羽を動かすことすらできない状態だった。
はっきり言ってこれでは手当どころか怪我が悪化しそうだ。
しかしやよいはすっかり満足したようで、服を着替えてペンダントをつけていた。
どうやらそのペンダントは去年、妹が姉に渡したプレゼントらしい。
支度が済んだので、下におりようとした。だがそのとき、鳩が少し動いた‥‥‥ように見えた。
「あれ?ひょっとして気がついた?」
そう思ってよく見てみたが、まだ気絶していた。
「そういえばなんかこの子地味だな〜(お前のせいだろ)。」
包帯まみれにしても、たしかにこの鳩は地味だった。
「そうだ!このペンダントの色違いがあったから、それをつけてあげたら‥‥‥。」
と言って、つけているのとは色違いのペンダントを手に取り、その鳩にかけた。そのとき‥‥
「‥‥いってえ!!な‥なんやこれ!!おいお前!!なんちゅーことを‥‥」
「・・・・!?」
やよいは一瞬、何が起こったのか分からなかった。だがすぐに大声で叫んだ。
「えええええええええ!?は‥鳩が‥‥‥‥しゃ‥‥しゃしゃ‥‥しゃべった〜!?」
「驚くより先にこの包帯とペンダントをなんとかせえ!!」
しゃべる鳩は必死に抗議するが、やよいは全く聞いてない。
「な‥‥なによ!!キジバトでも普通は‥‥」
「あ‥‥アホ!!それ言うたら‥‥‥」
鳩がそう言った瞬間、ものすごい光がやよいとその鳩を包んだ。
「な‥‥なによこれ‥‥‥」
そう言って、やよいは意識を手放した。
「くそ‥‥」
その鳩も同じように、気を失った。
すぐに光は消えたが、やよいと鳩のペンダントだけは光輝いていた。