あわただしくて悲惨な朝
「いってきま〜す!!」
やよいはそう言って家を飛び出した。
普段とはそんなに変わらない。
だが、変わったと言えば‥‥‥
「おい。何をそんなに急いどるんや?」
彼‥‥雉の存在だった。
一昨日出会ってとばっちりで契約してしまい、昨日は死んだはずの姉に会ったり、友達や家族に誤解されたり‥‥‥。
とにかく彼と会ってから、ろくな目にあっていない。
「うるさい!!昨日生徒会の集まり行くの忘れてたから、仕事がたまってんの!!たぶん!!」
やよいはぶっきらぼうに言い放った。
「お前、結構大変やねんなぁ〜。」
「そう思うなら昨日の瞬間移動やってよ!!」
「昨日力使いすぎたんや。せやから無理。残念でした〜。」
「こんの役立たず〜!!」
「なんやとぉ!?お前と違って力使えるねんで!?」
もはやお約束になってしまったけんかが始まった。が、学校が見えたのですぐに終わった。
「じゃあ雉!いらないことしないでよ!!」
「へいへい。わかっとるわ。」
そう言って、やよいは生徒会室に向かって走っていった。
やよいは生徒会室のドアを勢いよく開けた。
「し‥‥失礼します‥‥。(息切れ)」
「あ、おはよう前原さん。」
「会長!!!!」
やよいに声をかけたのは生徒会会長の朝倉恭祐。
さわやかでかっこよく、人気がある生徒で、やよいの憧れの人でもある。
「昨日はどうしたの?ひょっとして一昨日遅くまで残って仕事やってたせい?」
「い‥‥いえ!!違うんです!!!その‥‥昨日はちょっといろいろあって‥‥。」
「そっか。一応仕事は代わりにやっといたから。」
「あ‥‥ありがとうございます!!」
やよいは笑顔でそう言った。
「やっぱり雉とは違うなあ〜。さすが会長!!」
と、心の中で思ったそのとき、
「あら〜前原さん。私も手伝ってあげたのに私には何も言ってくれないんですの〜?」
彼女は林 満里奈といって、やよいと同じ生徒会の広報総務で同じく1年生である。
ただ、お嬢様育ちなのでかなり生意気だ。(やよい説)
「へぇ〜。いっつもいっつも仕事をわたしに押しつけておいて、少し仕事したら礼を言えって?」
「いつもあなたが勝手に私の仕事をやってるんじゃありませんの!?」
「んなわけないでしょ!!会長!!ちょっとこれどう思います?」
「まぁ!!自分が不利になったと思ったら会長にたよるんですか?」
「なんですって!?」
二人は犬猿の仲で、いつもけんかしている。
まるで雉とやよいみたいに。
「まあまあ二人とも落ち着いて。二人で仲良くやったらきっと早く終わるよ!」
会長が笑顔でそう言うので、二人はしぶしぶ従った。
「あ、そろそろ僕行かないと。後はよろしくね。」
「「はい!!!」」
二人はそう言った後、にらみ合った。
会長はそんなことは知らず、笑顔で生徒会室を出て行った。
「ああもう!!なんでこんな人が同じ広報総務なんですの!?ありえませんわ!!」
「うるさい!!わたしはただ生徒会の仕事をやりたかっただけなの!!」
さっきから同じような会話が続いている。
しかし、急に空気が変わった‥‥‥ような気がした‥‥‥‥。
「ねえ、何か‥‥変じゃない‥‥?」
「変なのはあなたの頭じゃないんですの?」
「ああもういい!!」
やよいはそう言って生徒会室を飛び出した。
「ちょっと!!前原さん!?」
満里奈の叫び声が聞こえたが、無視して走った。
校舎の隅の木が茂っているところにいくと、そこには人間の姿の雉が立っていた。
「雉!何かあったの?」
「‥‥‥‥少し面倒なことになりそうや‥‥‥。」
「それってどういう‥‥‥」
「やよいは気にせずに授業受けとけ。俺一人で何とかする。」
雉はそう言って飛び立とうとしたが、やよいに阻止された。
「ちょっと!!どういうことかちゃんと説明しなさいよ!!」
「‥‥‥この学校のどこかからまがまがしい力を感じるんや。」
「何で!?ひょっとして何かいるの?」
「たぶんそうやろうな。お前みたいに霊感強そうな奴ここには結構いるみたいやし。」
雉はそう言って、手を前に出した。
やよいが何をしているのか聞こうとした瞬間、雉の手が青白く光り出した。
そして、光が消えた時、
「さっきお前がいたところから気配がする‥‥。」
と、雉は言った。
「ちょっと待って!それって‥‥あいつが危ないんじゃ!?」
やよいは満里奈のことを思い出し、慌てて走ろうとした。が、
「こっちの方が早い!」
そう言って雉はやよいを抱きかかえて飛び立った。
「なによ!力使えるじゃない!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
雉は何も答えなかった‥‥‥。
「全く‥‥前原さんったら!!」
満里奈は何も知らず、生徒会室でお茶を飲んでいた。(仕事しろよ!)
しかしそのとき、生徒会室の窓ガラスが突然割れた。
「きゃあぁぁぁぁぁ!!な‥‥なんなの!?」
満里奈には見えていなかった。そこにはまがまがしい力を放った悪霊が。
「‥‥お前の体‥‥‥もらい受けるぞ‥‥‥」
満里奈は、そんな声が聞こえたかと思った瞬間、悪霊に取り憑かれた‥‥‥。
「満里奈!!大丈夫!?」
やよいと雉が来たのはちょうどそのときだった。
「満里奈!」
「離れろ!!」
雉がそう言った瞬間、満里奈から先ほどよりも強くて毒々しい力がでていた。
「‥‥‥ふふふ‥‥これで‥‥わたしは自由だ!!後は‥‥」
満里奈に取り憑いた悪霊は雉を見た。
「お前を殺せば‥‥もうわたしの邪魔をする奴はいない!!」
「‥‥ち‥‥まだしぶとく残っとったんかい‥‥‥」
「雉!?」
「やよい。離れとけ。」
そう言う雉の顔は青ざめていた。
「こいつは‥‥‥‥早くやらんと‥‥満里奈っていう子が危ない‥‥。」
「何ですって!?」
「ふふふふふふ‥‥はははははははは!!」
満里奈の声で、悪霊は大声で笑った。