エピローグ
雨の中、薄暗いところに一人の青年が立っていた。
周りには誰もいない。土は水を吸って、泥になっている。
突然、泥となった土から、何十体、何百体もの魔物が青年を取り囲むように現れた。
青年は全く焦らず、ただ周囲を見渡した。
そして刹那、見えない何かですべての魔物を切り裂いた。
辺りは突如、血の海と化した。
「おいおいやっこさん達。もっとまともな奴はおらんのか?」
青年は軽い関西弁でそう言った。
だが、余裕を見せすぎたらしい。背後からの敵に気づくのが遅かった。
「死ねぇ!!」
敵の剣をかわしきれなかった。だが、急所はうまく避けた。
「‥‥背後から斬りつけてくるとは‥‥なかなか汚い手口やなぁ‥‥‥」
「ふふふ。あなたにはこのくらいしないと殺せないでしょ?」
敵は女だった。その女は口元にうっすらと笑みを浮かべている。
「‥‥悪いなぁ。俺はそう簡単に死なへんで‥‥‥。」
「でも立っているのがやっとのようね。さすがの雉でも。」
雉と呼ばれた青年は表情をゆがませた。本当に立っているのがやっとのようだ。
女はその様子をしっかりと見ていた。さらに口元の笑みを深めてこう言った。
「じゃあ、そろそろ死んでもらおうかしら。」
女は刀を握り、雉に向かって振り下ろそうとした。
だが突然、雉の体が光った。
「な‥なに!?」
焦る女を見ながら、雉は苦しそうに告げた。
「‥‥悪いなぁ。‥‥まだ‥死ぬ訳にはいかんのや‥‥‥‥」
そう言うと、雉の体は光に包まれ、消えていった。
光に包まれた雉が気がついたのは、コンクリートの道ばただった。
周りは夕焼け色に染まっている。
だが、1分もしないうちに、コンクリートは雉の血で赤く染まろうとしていた。
「‥‥あかん‥‥‥もう‥‥限界や‥‥‥‥‥」
雉は人間からキジバトに姿を変えていった。
そうして静かに気を失った。
雉は時を超え、雉にとっては未来の“現代”に来てしまった‥‥‥。