表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣のクラスの「氷の令嬢」が、隣の部屋で空腹のあまり倒れていた件。〜胃袋を掴まれた彼女が、俺の前でだけ「ふにゃふにゃ」になるまで〜  作者: 比津磁界
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/69

第33話:忘れていた誕生日と、特別な鍋の約束

前話では、凛ちゃんのまさかの「踏みマッサージ」によって、朝陽くんが新しい世界(?)の片鱗を見てしまいました。しかし、その効果は絶大。今朝の朝陽くんは、かつてないほど絶好調な目覚めを迎えます。


さて、今日は夏休み前、最後の登校日です。

「……軽い」


朝、目が覚めて真っ先に感じたのは、身体の異様な軽さだった。

いつもなら調理場の立ち仕事で重く沈んでいるはずの肩や腰が、まるで羽でも生えたかのようにスッと動く。

昨夜の凛の「踏みマッサージ」、正直に言って効果がありすぎて怖い。


「おはよう、朝陽くん。……なんだか、今日は顔色がすごくいいね」


キッチンに立つ僕を見て、凛が不思議そうに首を傾げた。


「ああ、昨日のマッサージのおかげだよ。本当にありがとうな」


「ふふ、なら良かった。……あ、それでね、朝陽くん。今日、お願いがあるんだけど」


トーストを口に運んでいた凛が、いたずらっぽく、けれど真剣な瞳で僕を見つめてきた。


「今日は一学期の最後でしょ? だから、夜に二人で『打ち上げ』しない? 私、午後いっぱい使って今の仕事を全部片付けちゃうから」


「打ち上げか。いいな。……何か食べたいものはあるか?」


「ミルフィーユ鍋! お肉と白菜がぎっしり詰まったやつが食べたいな」


「わかった。じゃあ今夜はミルフィーユ鍋とお菓子とジュースでパーティだな」


「やった! 楽しみにしてるね!」


凛は少女のように声を弾ませ、上機嫌で学校へ向かっていった。僕は彼女と少し時間を空けて、後を追うように家を出た。


学校に到着し、廊下を歩いていると、向こうから大輝と寺田(紗季)さんが駆け寄ってきた。


「朝陽! 誕生日おめでとう!」


大輝が僕の肩を叩き、寺田さんも満面の笑みで「おめでとう、朝陽くん!」と声をかけてくれる。

僕は一瞬、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまった。


「……え? あ、今日、二十日か。……忘れてたよ」


「自分でも忘れてんのかよ、相変わらずだな」


大輝が呆れたように笑う。

「でさ、急な思いつきで悪いんだけど、今夜誕生日祝いに朝陽の家行ってもいいか? 無理なら断ってくれていいんだけど」


気持ちは、本当に嬉しかった。大輝も寺田さんも、僕にとって大切な友人だ。

けれど、僕の口からは、考えるよりも先に返事が出ていた。


「ごめん。気持ちはめちゃくちゃ嬉しいんだけど……今日は先約があるんだ」


二人は顔を見合わせると、同時にニヤリと……いや、ニヤニヤと僕を覗き込んできた。


「先約ぅ? 朝陽、ついに彼女でもできたか?」


「違うよ。……でも、大切な友達ができたんだ」


僕がそう答えると、大輝は茶化すのをやめ、少しだけ真面目な顔をして僕の肩をギュッと掴んだ。


「……そっか。良かったな、朝陽。最近のお前、なんだか顔が生き生きしてたからさ。その友達のおかげなんだな」


「お前のことを理解してくれる人が増えて、俺たちは本当に嬉しいよ」


大輝の言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「……ありがとう。もちろん、大輝や寺田さんにも感謝してる。今度、その友達も紹介できたら……今度な」


「おう、楽しみにしてるぜ!」


放課後、スーパーで豚バラ肉と大きな白菜を買い込み、僕はアパートに戻った。

自分の部屋で、フライング気味に夏休みの宿題を広げる。


「誕生日、か……」

(凛は僕の誕生日を知らないはずだよな。)


正直、自分の誕生日にはあまり思い入れがなかった。けれど、今日これほどまでに約束を優先した自分に、少しだけ驚いている。

僕はいつの間にか、凛と過ごす時間を何よりも守りたいと思うようになっていた。


(……そういえば、凛の誕生日はいつなんだろう?)


マッサージの時も、食事の時も、まだ聞いたことがなかった。

(……もしこれから来るなら、絶対にお祝いしたい。)


夕方になる。

ふと、玄関が開く音がした。

「ただいまー! 終わらせてきたよ、仕事!」


凛の明るい声がリビングに響く。

一学期の打ち上げが、今、静かに始まろうとしていた。

第33話をお読みいただき、ありがとうございました。

「自分の誕生日を忘れていた」という朝陽くんの無頓着さが、逆に凛ちゃんとの「先約」の重みを際立たせる回になりましたね。大輝たちの「理解者が増えて嬉しい」という言葉、朝陽くんが孤独な料理人から「誰かと生きる喜び」を知り始めている様子が伝わっていれば幸いです。

続きが気になると少しでも思っていただけたら、ぜひブックマークや下の評価【☆☆☆☆☆】で応援をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ