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第24話:嵐の夜の、小さな震え

いつも応援ありがとうございます!

鶏鍋でお腹も心も満たされた朝陽と凛。

窓の外を切り裂くような稲妻が、二人の穏やかな夜を一変させます。


「……雷、怖いから。今夜、こっちで仕事していい?」

「――ひゃっ!?」


地響きのような雷鳴が轟いた瞬間、凛が短く悲鳴を上げて僕の腕に飛びついてきた。

さっきまで夏休みの話をしていた平穏な空気は、一瞬で吹き飛ぶ。


「だ、大丈夫か? 結構近くに落ちたみたいだけど……」


「……うう。朝陽くん、私……雷、すごく苦手なの。……お願い、今夜、こっちで仕事させてもらってもいい? 一人だと怖くて、全然集中できないから……っ」


潤んだ瞳で見上げられ、断れるはずもなかった。

「……まあ、机なら空いてるし、それくらいならいいけど」と答えると、彼女はパッと表情を明るくした。


「ありがとう! すぐに道具持ってくるね!」


そう言って、凛は隣の自分の部屋へと駆けていった。


彼女がいなくなって、わずか数分。

さっきまで凛の話し声、そして鍋の湯気で溢れていた部屋が、急に広く、冷たく感じられた。


(……あれ。僕、もしかして……寂しいのか?)


たった数分、隣の部屋に行っただけだ。

それなのに、胸の奥にぽっかりと穴が開いたような、落ち着かない感覚。

自分の生活の中に、いつの間にか彼女の存在がどれほど深く根を張っているのかを突きつけられた気がして、僕は一人、ソファの上で困惑していた。


「……お待たせ、朝陽くん!」


ほどなくして戻ってきた凛は、タブレットといった仕事道具の他に、なぜかパンパンに膨らんだ大きなバッグを抱えていた。

嫌な予感がした。

「……凛。そのバッグ、何が入ってるんだ?」


「え? えーっと、着替えとか、お風呂セットとか、お菓子とか……」


「……なんで?」


僕の至極真っ当な問いに、凛は少しだけ頬を赤らめ、視線を逸らしながらも、堂々と言い放った。


「だって、あっちの部屋でお風呂に入ってる時に雷が鳴ったら、怖すぎてパニックになっちゃうもん! こっちで入らせて。……ほら、さっき私がお風呂掃除したばっかりだし、ね?」


「……いつもはどうしてるんだ……?」


「一人の時は、お風呂は怖いから、濡れタオルで体を拭いてる!」


「仕事は?」


「集中できないから、やめて次の日徹夜してる…。」


(さすがに徹夜させるわけにはいかないな…。)


嫌な予感しかしない。けれど、震えながら「私が掃除したから」と食い下がる彼女を追い出す非情さを、僕は持ち合わせていなかった。

結局、僕は「……わかったよ」と、半分諦めたように首を振るしかなかった。


凛はお風呂を済ませると(当然、僕はその間キッチンに避難していたが)、慣れた手つきでダイニングテーブルに液タブを広げ、作業を開始した。

僕は少し離れたソファで、彼女が書いたイラストが使われたラノベを広げる。

窓の外を叩く激しい雨音。けれど室内には、彼女が引くペンの音と、僕がページを捲る音だけが心地よく響いていた。


――その時だった。


カッ!!


世界が真っ白に染まった直後、地を揺らすような爆音が鼓膜を震わせた。

それと同時に、パチン、と乾いた音がして、部屋の照明がすべて消え去った。


「…………っ!!」


「停電……か」


凛のタブレットはバッテリー駆動のため、画面だけが暗闇の中でぼんやりと青白い光を放っている。

その光に照らされた彼女の肩が、カタカタと、これまでにないほど激しく震えているのがわかった。


「……凛?」


僕が声をかけると、彼女は声にならない悲鳴を上げながら、椅子から転げ落ちるようにして僕の方へと縋り付いてきた。

暗闇の中、僕のパーカーをぎゅっと掴む彼女の手が、驚くほど冷たくて、そして小さかった。

お読みいただきありがとうございました!


ついに来てしまった「お泊まりセット持参」の凛ちゃん。

「自分が掃除したお風呂だから」という、なんともちゃっかりした(?)口実が彼女らしくて可愛いですよね。

そして、訪れた停電。

暗闇は、普段なら言えない本音や、抑えていた弱さを引き出す最高のきっかけになります。

震える凛ちゃんを、朝陽くんはどう受け止めるのか……。

「停電の中での密着、朝陽の理性大丈夫か!?」と思ってくださった方は、ぜひ評価やブクマで応援お願いします!

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