第21話:契約の先へ、秘密の共有者
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「俺は、壊れてるんだ」
震える声でそう告げた朝陽を、凛は真っ直ぐな瞳と温かなハグで包み込みました。
最悪の夜を乗り越え、二人の間には昨日までとは違う、柔らかで熱い空気が流れ始めます。
「パートナー」という言葉では足りなくなった二人が交わす、新しい約束。
そして学校では、鋭すぎる観察眼を持つ「あの親友」が、朝陽を待ち構えていました。
隠し通してきた秘密の生活に、初めての「協力者」が現れる!?
【凛視点】
彼を独りにさせたくなくて、壊れた心の破片を全部拾い集めたくて、私は泣き止むまで、ずっと彼を抱きしめ続けていた。
「……あ」
ようやく涙が引いて、冷静さが頭の隅っこに戻ってきた瞬間。
私は、今の自分たちの状況を再認識して、心臓が跳ね上がった。
ここは朝陽くんの部屋。私は強引に上がり込んだ挙げ句、自分から彼に抱きついている。
「…………っ、あ、あわわっ! ご、ごめんっ、私っ!」
慌てて彼から離れる。
顔が、火を噴くくらい熱い。瀬戸くんも、耳の先まで真っ赤にして視線を泳がせている。
「……う、ううん。……ありがとう、冬月さん」
「……その、呼び方。……やめよう?」
私は俯いたまま、絞り出すように言った。
今まで「サポーター」だとか「お隣さん」だとか、そんな言葉で距離を測ってきた。でも、彼の過去を知って、痛みを分けてもらった今の私は、もうそんな冷たい関係には戻りたくない。
「ねぇ、朝陽くん。私たち、もう『友達』にならない? お互いのことをもっと知りながら、支え合えたら……その方が、絶対にいいと思うんだ」
「……友達、か。……僕なんかで、いいのか?」
「『なんか』じゃないよ! 私が、朝陽くんと友達になりたいの!」
私は顔を上げて、彼の瞳をまっすぐに見つめた。
朝陽くんは少しだけ驚いたような顔をしたあと、困ったように、でも嬉しそうに、ふにゃりと口角を上げた。あ、今の笑顔、すごく可愛い。
「……わかった。よろしくな、凛」
「――っ! うん! ……あ、あとね、ルール追加! ルール④、お互いに怖い夢を見たら、時間に関係なくすぐに連絡すること! 通話もアリだよ。絶対、一人で抱え込まないで」
「……厳しいな。でも、わかった。約束するよ」
新しく結ばれた、本当の『約束』。
朝陽くんの顔に、いつもの無理した笑顔じゃない、穏やかな色が灯ったのを見て、私の胸は昨日よりもずっと熱くなった。
【朝陽視点】
月曜日昼休み。
1組の教室で大輝たちと弁当を食べていると、不意に教室の入り口から声がした。
「瀬戸、ちょっといい? お話があるんだけど」
そこに立っていたのは、2組の佐藤陽菜さんだった。
実は彼女とは、昨年同じクラスだった。多少の面識はあったし、サバサバしていて話しやすい人だという印象はある。
「……佐藤さん。どうしたんだ?」
僕は箸を置き、彼女に促されるまま渡り廊下の隅へと向かった。
佐藤さんは周囲に誰もいないことを確認すると、腕を組んで、ニヤリと挑戦的な笑みを浮かべた。
「単刀直入に聞くけどさ。凛のお弁当を作ってるの、瀬戸でしょ?」
「…………は?」
心臓がどくん、と嫌な跳ね方をした。
動揺を隠そうとしたが、彼女の瞳は僕の反応を逃さなかった。
「なんで……そう思うんだ?」
「昨日、凛を助けてくれた時さ。あんた、スーパーの買い物袋を持ってたでしょ。……その中の食材がいくつか見えたのよ」
佐藤さんは指を一本立てて、淡々と「証拠」を述べる。
「で。今日の昼休み、凛のお弁当にその食材が使われたであろう料理が入ってた。……ビンゴでしょ?」
「………………」
恐ろしい観察眼だ。昨日、あんな緊迫した状況で、袋の中身までチェックしていたなんて。
僕は観念して、小さくため息をついた。
「……凛には言わないでくれ。あの子は『他人のフリ』を徹底したがってるから」
「安心しなよ。秘密ならこれ以上は聞かない。……たださ、何かあったら私に相談しなよ? 凛はああ見えて頑固だし、一人で抱え込みがちだから。……昨日の借り(救出劇)もあるし、私は二人の味方だよ」
佐藤さんは僕の肩を軽く叩くと、「じゃ、仲良くやりなよ!」と言って、ひらひらと手を振りながら去っていった。
面倒見が良く、凛が最も信頼している彼女なら、信じても大丈夫だろう。
秘密を共有する相手が一人増えたことに、僕は不思議と嫌な気はしなかった。
「……頼りにしてるよ、佐藤さん」
教室に戻る足取りは、昨日までよりもずっと軽かった。
孤独だった僕の世界に、新しい「友達」と「協力者」が増えていく。
止まっていた僕の時計は、今、確実に動き出していた。
お読みいただきありがとうございました!
「ビジネス?」から「友達」へ。
凛ちゃんからの新ルール『深夜の通話OK』は、いつどちらから使われるのか(笑)
そして、ついにバレてしまったお弁当の秘密!
けれど、佐藤陽菜という「味方」を得たことで、二人の関係はより強固なものになるはずです。
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