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バトラーZERO『選ばれし者』  作者: 赤虎鉄馬
3/8

第3話「カードの秘密、そして“願い”の正体」



 


「……ここまでくれば、大丈夫だ」


兄・悠人が息を整えながら、小さな廃ビルの一室に腰を下ろした。


床には塵と瓦礫。だが、今の2人に選択肢はなかった。


 


良もまた、スーツを解除しながら壁にもたれる。


「はぁ……まだ、手が震えてる……」


「当たり前だろ。初陣であれは上出来だよ」


 


だが、そのとき――


 


「“蟻”のカード、使ったのね」


静かな声が聞こえた。


2人が振り返ると、そこに――ひとりの少女が立っていた。


白いフード、鋭い視線。右手には、“鳥”の絵柄のカード。


 


「君は……誰?」


 


少女は名乗った。


「私はスズハ。“鳥”のWISHを継ぐ者」


 


そして、静かに言葉を続ける。


「ねえ……そのカード、どこで手に入れたの?」


 


良は、枕元にあったことを話す。


スズハは目を伏せ、小さくため息をついた。


「……やっぱり。『自発覚醒』だわ。あなたは、望んでいなくてもカードに選ばれた」


 


「それって……どういう意味?」


 


スズハは、カードケースから数枚のWISHカードを取り出した。


「これらは、単なる道具じゃない。“願い”を記録し、形に変える思念結晶なの」


「それぞれに、かつて“強く願った誰か”の魂が刻まれてる。だからこそ力になる――けど、同時に」


 


彼女はカードを光に透かす。


「持ち主の精神を蝕む。たとえば“戦いたくない”と思ってても、敵を前にすれば“殺意”が湧くようになる。…そのカードに染まるってこと」


 


良は顔を強ばらせた。


「それじゃ……俺も、いつか……」


「そう。気づかないうちに、“自分”じゃなくなるかも」


 


悠人が口を開く。


「でも、それでもやる価値はあるんだろ? 世界はもう……願いが暴走した“敵”で溢れてる」


 


スズハは、かすかに頷いた。


「願いが強すぎる人間は、カードがなくても暴走する」


「たとえば――“この世界を全部消してしまいたい”と、願った少年がいたわ」


 


良はドキリとする。


「それって……カイのこと?」


 


「知ってるのね。彼は、私の“かつての仲間”だった」


「でももう、私たちの声は届かない。彼の願いは、もう“呪い”になってるから」


 


その時、通信端末が鳴る。


《敵性WISH反応、南区エリアに出現。種別:BIRD/獣型融合体》


 


スズハが表情を引き締めた。


「来るわ。今度は“空”から」


 


良も立ち上がる。


「……行こう。怖いけど、でも俺――戦いたい」


「“願い”が呪いになる前に、誰かを救えるなら……!」


 


スズハは目を細め、微笑んだ。


「じゃあ……“連携”する? 私の“鳥”と、あなたの“蟻”。相性、悪くないわよ?」


 


良は大きく頷いた。


「よろしくな、スズハ!」


 


そして――


新たな戦いが、空から始まる。


 


 



---


次回予告:第4話「羽撃く願い、空より来たる者」


空を裂き舞い降りる、巨大な鳥型融合体。


スズハと良の連携は果たして通じるのか?


そして、カードに潜む“声”が、良の耳に届き始める――。


 





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