第2話「侵入者、BEASTの咆哮」
バリィィィン!!
玄関のドアが吹き飛ぶようにして破壊された。
続いて現れたのは、巨大な獣のような影。
異常に肥大化した前脚、土色の皮膚、背に鋭く突き出した骨のような“棘”。
人間のようで、人間ではない。
それは――
《WISH獣化体・タイプB:マングース》
「侵入者を確認……《蟻の継承者》、排除対象に登録」
機械のような声と共に、獣がうなり声を上げる。
良はその姿に一歩も動けなかった。
「な、なにこれ……怪人!? ヒーローショーじゃ、ないよな……」
そのとき、兄・悠人のスーツが起動する。
全身を覆う鋼の鎧。鋭い爪。狼を模したような姿――
《WISHアーマー:BEAST-04「狼」発動》
「良、後ろに下がれ。これはお前じゃ無理だ」
悠人は身を低くすると、床を蹴って一気に間合いを詰める。
「ガァァアアッ!!」
マングースが咆哮し、前脚を叩きつける。
悠人の爪が交差し、火花を散らす。
「くっ……さすが“願いの暴走体”。ただの願望とは格が違うな……!」
良は、ただ立ち尽くしていた。
が、胸のホルダーが再び光る。
《WISH:蟻のカード、再起動》
《戦闘補助起動可能》
良の目に、スーツのHUDが映る。
『抗うか? 逃げるか?』
その問いに――良は、息を飲みつつ答えた。
「……抗う。兄貴を……ひとりにしない!」
バシュッ!!
スーツの背中から展開された羽が小さく震え、良は身を投げた。
「いけるか……!?“良”!」
兄の呼びかけに、良は応える。
「わかんないけど……でも俺の“願い”は――誰かを助けられる自分になりたい!」
拳を振り上げる。
蟻のスーツが黒光りし、小さな一撃を放つ。
だが、その一撃は――獣化した敵の頬をわずかに裂いた。
「……効いてる!?」
「蟻の力は“連携”と“蓄積”だ、良! 勝てるぞ――俺たちで!」
兄弟が並び立ち、WISHスーツが交差する。
「いくぞ、連撃ッ!!」
甲殻の拳と、獣の爪が同時にマングースに突き刺さる。
爆ぜるような衝撃の中、敵のWISHアーマーが砕け、動きを止めた。
だがその直後――
《ERROR:排除対象の再構築開始》
敵の身体が泡のように再構築を始める。
「再生型!? ……良、ここは撤退だ!」
良は驚きながらも、兄の言葉にうなずいた。
逃げる2人。その背後で、獣は再び立ち上がろうとしていた――
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次回予告:第3話「カードの秘密、そして“願い”の正体」
命からがら逃げ延びた良と悠人。
だが、WISHカードの真実が徐々に明らかになる。
そして現れる、カードに“獣”を宿した謎の少女――
「このカードは、希望なんかじゃないわよ。呪いよ、これは」