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バトラーZERO『選ばれし者』  作者: 赤虎鉄馬
1/8

第1話「蟻のカードと、目覚めた朝」



 


――朝、6時13分。


いつもより少し早く、目が覚めた。


 


「……ん、なんだこれ」


 


中学生の少年・**りょう**は、枕元に置かれていた黒いカードケースを見つけて眉をひそめた。見覚えはない。けれど、どこか懐かしいような気もした。


ケースを開けると、厚みのある数枚のカードが並んでいた。


そのうちの一枚を、つい手に取ってしまう。


 


そこには――蟻のような生き物と、五芒星(星印)の刻印が描かれていた。


 


「……兄貴の、か?」


 


そう呟いた瞬間。


カードの表面が淡く光を放ち、良の身体から力が抜けるような感覚に襲われた。


 


「え、なに、これ……?」


 


視界が滲む。


時が、止まった。


 


テレビの音。鳥の声。風の音――すべてが止まり、音が消えた。


 


そして次の瞬間。


 


《SYSTEM起動:ANT-ZERO》


 


冷たい無機質な声と共に、良の身体に“何か”が覆いかぶさるように形成されていく。


黒いスーツ。甲殻のような装甲。伸びる手足には蟻を思わせる鋭い爪。


背には小さく折りたたまれた透明な羽。

ヘルメットには、赤い複眼と突き出たきばの意匠――


 


「な、なにこれ……!」


 


鏡に映った自分の姿に、良は絶句した。


まるで仮面ライダーやヒーローアニメに出てくるような、バトルスーツ姿の自分。


だが、それは完全に現実だった。


 


《融合率:安定》


《使用者の願いを感知中――》


 


「……願い?」


 


その言葉に、良の中に小さな記憶が甦る。


昔、兄に言ったことがあった。


「強くなりたい。みんなを守れるくらい、強く」


 


その願いが、蟻のカードと共鳴したのか。


気づけば、自分の左腕にはカードホルダーが装着されていた。5枚分のスロット。今は1枚――“蟻”のカードだけが差し込まれている。


 


戸惑いの中で、部屋のドアがバン!と開かれた。


「……おい、良! 起きて――っ、なにその格好!?」


立ち尽くすのは、兄――**悠人ゆうと**だった。


だがその目は、驚きではなく……なぜか、恐怖を宿していた。


 


「お前……“選ばれた”のか……!? あのカード……処分したはずなのに……!」


 


「兄貴……知ってたの? このスーツ、カードのこと……!」


 


「……時間がない。着替えてここを出ろ。すぐに、“やつら”が来る」


 


「やつら……って、何が……」


 


その瞬間、家の外に重い着地音が響いた。


地響きのようなそれは、確実に“何か”が現れた音。


兄・悠人は、背負っていたバッグから1枚のカードを抜き取った。


 


《WISHアーマー:BEAST-04 発動》


 


彼の身体もまた、獣を模した鋼の鎧に包まれていく。


 


「……話は後だ、良。ここからは、生き残る覚悟を持て」


 


良の胸に、再びあの機械音声が響く。


《戦闘モード、解放。WISH《蟻》、起動確認》


 


こうして、少年・良の戦いが始まった。


“願い”を宿すバトラーたちの世界へ――


 



---


次回予告:第2話「侵入者、BEASTの咆哮」


兄・悠人の正体、そして外から迫る獣のバトラー。

良は初めての戦いに挑む。

だがその背中に、確かに芽生えていた。


「僕は、僕の願いで、戦うんだ――!」





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