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第二十一話 平和と焼き鳥

  一

 今日は久しぶりのデートだ。

 ボクはお気に入りのパーカーを着て亭羅野さんと並んで歩く。

 最近、街で焼き鳥屋を見ることが少なくなった。

 ペットショップからもインコや文鳥などが消えている。

『鳥権保護団体からのクレームがあり鳥類の取り扱いを一時自粛しております』

 張り紙にはそんなことが書いてあった。

 突然、ガラスが割れる音がする。寝具店を襲っているのは鳥のマスクをかぶった人間だった。

「羽毛をやめろ!」

「羽毛寝具店に裁きを!」

 口々に言いながらバットや金属パイプを振り回して寝具店を破壊している。

「やめなさい!」

 亭羅野さんが突っ込んでいった。鳥マスクの暴徒が逃げていく。

「ありがとうございます、おかげで助かりました」

 布団をかぶって隠れていた店主が出て来た。

「なぜこんなことに?」

「私たちもさっぱりです。突然あのような者たちが襲ってきまして」

 店主は布団にくるまったまま言った。

 暴徒を追いかけていた亭羅野さんが戻ってくる。

「恐竜権の時もこうした嫌がらせがあったと聴いています。反恐竜権団体によるネガティブキャンペーンだったと今では判明していますが……」

「今回のことも鳥たちの仕業ではないことはわかっています。彼らは優しい方たちですから」

 店主は言った。ボクは頷く。

「鳥たちを守ろう」

 警察に通報した後、ボクたちは寝具店をあとにした。


 違法に放鳥されたインコが公園の木に鈴なりにとまっている。

 街頭テレビでは鳥権団体の声明が放送されている。

『違法な放鳥は鳥を不幸にする。我々ワレはこのような自由を求めてない、ない』

 レックスがマイクに噛みつきながら話していた。

 ボクの前によろよろとオウムが降りてくる。

「ピイ、ごはんください……」

 そう言って倒れた。

 ボクは手を握りしめる。

「許せない……!」

「鳥マスクの集団を探しましょう」

 ボクは亭羅野さんと共に街を歩き回った。

「鳥を焼く者に粛清を!」

「いた!」

 鳥マスクをかぶった人間たちが居酒屋を襲っていた。

「捕まえましょう!」

「うん!」

 ボクは一人に狙いを定めてタックルし、残りの鳥マスクは亭羅野さんが散らした。

 マスクをはぎ取ると出て来たのは気弱そうな青年の顔だった。

「きみたちの本拠地に案内しろ」


 ボクたちは『鳥権保護団体ピースフル』と看板に書かれたテナントビルに入った。

 鳥マスクをかぶった集団が襲ってきた。

「亭羅野さん!」

「はい!」

 亭羅野さんが咆哮する。しかし鳥マスクの向こうにケージが見えた。

 ペットショップから略取された鳥たちが捕まっている。

「だめです、ここで暴れたら彼らを巻き込みます!」

「くっ……!」

 じりじりと包囲網が狭まってくる。

 その時、窓ガラスが割れる音がした。

「ピィイイイイイ!」

「ジュチジュチジュチ!」

 インコが、文鳥が、オウムが、カラスがハトがアカゲラがカモがモズがツグミがバンがタカが大量の鳥たちが室内へ雪崩込んできた。鳥マスクの者たちはついばまれひっかかれ倒れていく。

「鳥たちの逆襲だ」

 飛び散る羽毛に埋もれながら、ボクは呟いた。


  二

 ピースフルの構成員たちは器物損壊で逮捕された。

 彼らはなおも警察による鳥権侵害を訴えていたがテロリストの言葉は人々には響かない。

 レックスがボクたちを表彰したいと言った。何もしてはいないのだが、名もない野鳥たちのために受け取りにいった。

「鳥たちを守ってくれたあなたに感謝を表明します。ありがとう、ありがとう」

 ヨウムを象った金のバッヂを貰った。


  三

 今日はデートのやり直しだ。

 ボクはお気に入りのパーカーを着て亭羅野さんと並んで歩く。

 焼き鳥屋で頼んだねぎまを分け合って、ペットショップで鳥たちの歌声を聴いた。


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