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カルテットナイトの準備期間

(なずな視点)

「世界を"彩る"?」

「うん。伝わらなかった?

 言ってしまうと、国を元通りにするためにクシムから奪われたものを取り返してほしいんだ」

こんのロマンチスト王め…

何が「伝わらなかった?」なの?

初見で伝わるかぁ!

「正直全然伝わらなかったわ」

「うぅ…」

わけの情けない声が聞こえた。

こういう時は風璃の直球が一番効く。

「大体話は分かったわ。

 けど、クシムから奪い返すって、相当の技術力がないと難しいわよね……

 どうすればいいの?」

風璃が右手の人差し指を頭につけて左にコテンと倒した。

これは風璃が考える時の癖だ。

「簡単だよ。

 クシムを倒せばいいだけさ」

「それができなくて数々の英雄が死んだったんだろうがよ」

わけの顔が少し苦痛に歪んだ気がした。

「うん、そうだね。

 みつるの言う通りさ。

 けど、君たちならできる」

「そんな確証、どこにあるん?」

「僕の直感だ」

……さっきのは見間違い?

一瞬で元通りの笑顔になったから。

「お前の直感は当てになんねぇよ」

「そうかい?

 これでも結構当たるんだけどなぁ」

おちゃらけているけど、そんな雰囲気で話すことじゃないのはわけが一番分かってる。

わざとだ。

「………それで?

 どうする?受け入れてくれるかな?」

どうって言われましても…

「分かった。

 俺は引き受ける」

「そうね、この生活は苦しいし、アイツにはそれなりに恨みもあるしね」

「せやな。正直僕が役に立てることあるか分からんけど、やってみる価値はあるな」

みんな賛成だ。

それなら。

「うん、風璃の意見に賛成。私もやる」

「みんな同じ意見で嬉しいよ。

 でも、みんなが心配してるように、相手は強い。

 くれぐれも油断するな。そして、チルテ王国は目をつけられているから留まるなら別の国にした方がいいだろう。

 せっかく強い技を見つけてそれを奥の手として決めても、あっさり受け流されることだってありえるからね」

確かに。

「えぇ、分かったわ。でも、わけはどうするの?

 目をつけられているのなら、わけが一番危ないじゃない。

 あなたは逃げないの?」

風璃がわけにそう聞く。これでもわけは王だもん、狙われることもあるはずなのに。

「うん、僕は逃げないよ。ただでさえ今の国民は他の国と比べて、活気がなくて歩くだけでも一苦労なのに、僕が逃げたらみんながどうなるか分からないだろう?

 今、僕がここにいることによって、逆にクシムはこの国に手を出せないのかもしれないしね」

ふっ、と一つ息を吐く。

「分かった。でも、何かあったらすぐに手紙を出してね。

 遠慮とかいらない。

 この国も大事だけど、わけも同じくらい大事だし必要なんだから」

「うん。そうするよ」

わけはそう答えた。

「じゃあ早速行こっか。

 旅立つ準備とかあるでしょ?」

「そうね、油断して武器置いてきちゃった」

「何してんだよ風璃」

「言うて僕コレパジャマやで?」

「涼空はなんでパジャマでここに来てるの」

私たちのやりとりを聞いていたわけは笑い始めた。

「あっはは、やっぱり君たちといると退屈しないよ」

わけは前のくしゃっとした笑い方に戻った。

あとは私たち4人の問題だ。

「よし、とりあえず各自家に戻りましょ、準備しなきゃ!」

そう言って風璃は走っていく。

「あー、ちょ、待たんかい!一人やと危ないやろー!?」

棒読みで涼空は風璃の後を追っていく。

どんだけ早く家帰りたかったの。

「俺たちも行くか」

「うん、そうだね」

私たちも宮殿の外に踏み出す。

2人の背中はもうすでに遠くなっていた。

「なずな、みつる!」

わけに呼び止められる。

「どうした?わけ」

「なあに?」

わけはしばらく口をつぐんだ後、こう言った。

「絶対、生きて帰ってこいよ。みんな、お前たちの帰りを待ってるから」

……やっぱりわけは、どこまでも優しい。

私たちはわけの思いに応えなきゃ。

「うん、分かってるよ。死ぬ気なんて元からないから」

「わけ、俺たちを舐めるなよー?簡単に死ぬ連中ではないってことぐらい、お前なら知ってるだろ?」

そう言って私たちは後ろを振り返らずに走り出した。




「フフッ、気づいてないんだぁ……なずな、これからパレードがはっじま〜るよ〜?」

走っていく二人を見ている怪しい人物は自慢の脚力を活かし、二人とは逆方向のはるか遠くの建物に走って行った。

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