カルテットナイトへの通達〜幸運青年宛〜
(アザゼル視点)
「おい涼空、起きろよ」
「くかー………すぴー……」
「…こりゃ起きねえわ」
オレはアザゼル。カルテットナイトの一人、ラックナイト幸神涼空の契約魔者だ。見ての通りの寝坊助。
コイツいつもこんな感じなんだが、家族で暮らしてた時はどうしてたんだ?
「いい加減にしろ……」
「いい加減にするのはどっちだよバカ」
寝言でそんなことを言う。人の寝言に答えたらよくないとか悪いとかあるが、そんなのこいつにゃ関係ねぇ。
「はぁ…」
何度目かわからないため息をつく。
毎回毎回めんどくせぇんだよ。
コイツは生まれながら幸運で、それをいつも味方に入れてるやつだ。この先が心配になってくる。
コイツのことは諦め、先にリビングに降りることにした。
「…おはよう」
「うっわビビった。
はよ」
ふぁあ……とデカいあくびをしながら涼空はキッチンに向かう。そういえばさっきポストに何か入れてたな、配達員。
オレが取りに行って帰ってくると、涼空は朝メシを用意していた。こいつ昔妹がいたらしく、メシは下手したら店よりウマい。褒めるのは嫌だがな、断じて。
「あれ、手紙来てるやん。しかもこれわけからやし」
皿を机に並べながら、手紙を見る。
「それがどうした。
オレは持ってきただけだぞ、読むなら自分で読みやがれ」
「主人にそんなこと言っていいんすか〜?」
「ッチ」
俺は手紙を手に取った。途端に鼻をつんざくような臭い。一瞬めまいがする。
オレみたいな堕天使は鼻が敏感で、臭いがきついと最悪の場合死に至る。何回か説明したはずなんだがな。こいつ正真正銘のバカなんじゃねえの……
「"カルテットナイト全員集合、契約魔者といらっしゃい"……だとよ。まあ、全員つってるしあの単細胞3人は絶対来るだろうな」
「おい。
なずちゃんたちは多細胞生物やぞ!」
「人をそんな呼び方で呼ぶな気持ち悪りぃ!!」
単細胞つったのはオレだがそこに反応すんな!!
「しゃーない、行くかぁ」
「なんでそんなめんどくさそうなんだよ」
「いやそんなことないで〜?」
そうやってヘラヘラ笑う。
…作り笑い下手か。
偽るならもっと大胆にいけよ、クソ野郎。
「でも一回朝ご飯食べさせてくれ…
腹減った」
「あのな?
言っとくが今昼だぞ。
今からオマエが食うのは朝メシじゃなくて昼メシ」
「いやいや、気のせいや」
「…もういいからさっさと食え。
食ったらすぐ準備しろよ」
手紙を机に置き、部屋に戻るため足を踏み出す。
「あ、アザゼル」
「なんだ」
「さっき諦めて帰ったんやろうけど、起こしに来てくれたんやろ?
ありがと」
もっちゃもっちゃとメシを咀嚼している。
「結局起きなかったから無駄足だったがな」
笑みを隠すのは間に合わなかったみたいだ。
「アザゼルが朝から笑っとる!」
「メシ没収するぞ」
「嫌やなぁ、そんなことせーへんくせに」
「ほう?
ナメられたものだな」
「ちょ、ごめんて!!嘘やって!!」
騒がしい昼。
この時のオレらは、焼き手紙をあまり重要視していなかった。
大切な人がいつまでもそばにいることを願って_