カルテットナイトへの通達〜清風少女宛〜
清風は爽やかな風という意味です
(風璃視点)
「風璃様、紅茶が入りました」
「ん、ありがと、琳火」
あたしの契約魔者である炎熊の琳火が、紅茶をコトッと置いてくれる。この子色んな方面で気が利くから頼りにしてるのよね。
「そういえば、王宮の方からお手紙が届いております。いかがいたしましょうか?」
「貸してちょうだい」
「かしこまりました」
そう言って琳火は持っていたポットを机に置き、手紙を取りに行った。
琳火が持ってきてくれた手紙からは焦げ臭い香りがした。
「"カルテットナイト全員集合、契約魔者といらっしゃい"……だそうです。わけ様からの直筆ですね、よくよく見ると字が震えていますし、相当な問題なのだろうと推察できます」
「なるほどね、わけが……」
わけはいつも焼き手紙で思わせぶりをして、あたしたちをくだらない事に誘う。
でも、そのタイミングは最近、パターン化してきている。
あたしたちの誰かが何かに行き詰まった時に呼んでくれて、お城で鬼ごっこしたり。
カルテットナイトの重要任務が終わった時なんかは打ち上げもやってくれた。
そうやって優しくしてくれるから、わけはあたしたちのお兄さんみたいな感じ。
「ねえ、琳火。
わけはあたしたちを呼んで何をさせる気だと思う?」
「そうですね…
字が震えていることから、恐ろしいことなのかもしれません。
もしくはわけ様のことです、楽しいことを思いつき、笑いながら手紙を書いたとか」
手を顎に当てながら、そう考察する琳火。
「後者の考えはなかったわ…
でも楽しいことだった場合、わけ直々に手紙を書くかしら。それに焼き手紙よ、いくらなんでも思わせぶりがすぎるわ」
「確かにそうですね。
初めからそのようなおつもりならば、側近の方などに代筆を願うはず…
…さて、風璃様。
こうして呼ばれていますが、いかがなさいますか?」
目を細めて問うてくる。
「琳火、分かって言ってる?………ふふっ、行くに決まってるじゃない。
久々にみんなにも会いたいから。
準備ができ次第行くわよ。
それでいいかしら?」
「もちろんでございます。
準備、してきますね」
そう微笑んで琳火は自分の部屋に戻って行った。
「ひゃぁ!」
その後にガシャンと音がした。
あの子、花瓶また割ったわね…………
「琳火、大丈夫?怪我はない?」
「怪我は、ありません…
も、申し訳ありません風璃様!!」
ペコペコと効果音が聞こえてくるほど、必死に頭を下げる琳火。
「あなたに怪我がないのならいいのよ、それで」
花瓶はすぐ直せるし。
あたしは苦笑しながら自分の準備に取り掛かった。
……あ。
「琳火〜、そういえば、あのブレスレットどこに置いたっけ?」
もう一度琳火に声をかける。
「たしか、風璃様が風璃様の机の上に置いてらっしゃった気がしますが…ありませんか?」
「もう一回探してみるけれど、今のところないのよね……」
「……かなり危ういのでは?」
「あたしもそう思う」
……実はこの時、服の袖に隠れていただけですでにつけていたことは琳火には秘密。
もう二度と、悲しいことが起こりませんように_