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カルテットナイトへの通達〜色彩少女宛〜

(わけ視点)

ここはチルテ王国。この世界にチルテの名前を知っているのはわずか半数であろう弱小国。

地図にすら載せてもらえなくなっちゃったしね。

今、この国で臨時の会議が開かれていた。


「このままだとこの国どころか、世界が滅んでしまいます!」

「早くご決断を!!」

 王宮の者たちは目の前にいる僕を不安そうに見ていた。

 僕は出来る限りみなに聞こえないようにため息をつき、話を切り出した。

「……僕たちの国は…いや、この世界は、あのいやらしい魔王、クシムによって全部と言っていいほど奪われたからね。今の国民達はまるで操り人形だ。この世界を元通りにできる人間?それはあの者たちしかいないだろう。『四重奏騎士カルテットナイト』だ。彼らに依頼しよう」

 僕は声高らかに宣言した。しかし、王宮の者たちはまだ不安そうだった。

 それもそうだろう、なんせその4人の人物たちは伝説と呼ばれるほどの人間なのだから。

「確かにあの者たちならばこの世界を救う事ができるかもしれませんが、それは古くから伝わる言い伝え。カルテットナイトという言葉に酔い、自称しているただの冒険者連中かもしれませんぞ?」

「それに、かなり凶悪な魔物を連れているらしいですぞ、あくまで噂ですが。彼らを信用することは……」

「……気持ちはわかるさ。でも、カルテットナイトに批判的な態度は極力取らないようにしてくれ。彼らは君たちが思っている以上に強いし、信用もできる。

とにかく今は彼らへ焼き手紙を送ることに専念してほしい。4枚、紙を用意して。ペンと、インクも。それから王宮に迎え入れる準備もだ」

「……ははっ、仰せのままに」

 2人はすぐに準備をしていった。しかし、周りの者たちはやはりカルテットナイトに絶対的な信用、信頼を置く事はできないみたいだ。

「堅苦しいのはやめよう。いいか、みんな。

 カルテットナイトのことをどう思っても構わない。けど、周囲の者が不快に感じる発言は慎むように」

「し、しかしわけ様……」

「公言しないこと。

 いいね」

 僕が王宮の者たちにそんな口を聞いたことがなかったから、皆は困惑していた。

 ただ、曖昧に頷いてくれる者が何人かいる。

「……わけ」

「あぁ、ベラか。君にはまた別のことをお願いしたいな」

「……わけと長くいるから、だいぶ思考が分かってきたよ、なんとなく。嫌な予感しかしないけど、どうせやらされるんでしょ?」

「せいか〜い」

「やっぱり?」

 ベラフォーレル、通称ベラ。外国人っぽい名前だが彼女はれっきとした日本人だ。訳あって今はこの名前を名乗っている。

「さぁ、会議は終わりだ。各自持ち場に戻ってくれ。さっき言った事を忘れるな」

「ははっ!」

 みなが一斉に散っていき、僕はまた、一つため息を吐く。いつも僕がため息を吐くと「ため息をするごとに幸せが一つ消えちゃうよ」とベラに怒られるのだが、今回は見逃してくれたみたいだ。

……本当に、昔から好き勝手するのはいい加減にしてほしい。

「…なぁ、けい?」


(なずな視点)

 壁に開けられた穴を塞いでいる最中、契約魔者である悪魔のシュージュがわーわーと騒ぎ始める。

「姉様、なにか通達きたよ!」

「ごめんねシュージュ、今手が離せない!なんて書いてあるか教えて!」

 一人称は『ボク』だけど立派な女の子だ。たまにおっかないけど愛嬌がある可愛い子。そして、壁を開けた張本人。本人は何をしたか分かってないけどね。

「分かった!………分かんない、そういえばボク、文字読めないんだった……」

 分かってるの分かってないのどっち、とツッコみたくなるが、言葉を呑み込み、とりあえずシュージュから手紙を受け取る。

すると、少し焦げ臭い匂いがした。この匂いは……

「…王宮からの手紙だ」

王宮は普通の手紙と区別するために少し焼いて送ってくる。焼いて送ってくる手紙は結構大事な話が書かれてたりする。シュージュに何度ビリビリにされたことか……

私は封を切り、手紙を中から取り出した。そこに書いてあったのは。

「"カルテットナイト全員集合、契約魔者といらっしゃい"………どうしたんだろ、今までこんなにわけの字が震えてた事はなかったのにな」

「えぇ、ボク行きたくない……」

そうやってシュージュは駄々をこねる。

まったく、いつもそうなんだから。

「だめ!逆になんでそんな行きたくないの?」

「だって、わけ君いつもボクのこといじめてくるもん…」

「わけはいじめてるつもりないと思うよ」

「わけ君よりボクの方が強いもん!」

 急にやる気になる。

 シュージュは情緒がおかしかったりする。たまにね。

「はぁ……そう思うんだったら行こう?みんな来るよ?」

「…………みんな?みんな来るの?本当に?」

 シュージュが悲しいような、寂しいような顔をする。

 まるで人が変わったような雰囲気だ。

 …いや、悪魔が変わったような…の方が正しいのかな?

「ごめんね、シュージュ」

 頭を撫でると、嬉しそうに私の手に擦り寄ってくる。

「シュージュ、お願い。

 私行かなきゃいけないから、シュージュにはついてきてほしいの」

「…わかった!お菓子食べたら行く!」

「少なめにしなよ!」

シュージュは一階へお菓子を取りにバタバタと降りていった。

そっかぁ、なんだかんだ言ってみんなと会うの半年ぶりだもんね、ちょっと楽しみかも。

「どんな話しよっかな、どーせわけの事だから焼き手紙で思わせぶりだしといてまたくだらない話するんだろうな」

そう独り言をボソッと言い、私は窓から白化した地面を見た。それからチラッと部屋の隅に置いてある愛用の、筆の形をした武器、ペネロを見た。

胸のペンダント淡くが光っていたことに気づかずに。


着々と準備は進められていく。この世界を一色に塗り替えるために_

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