幸運青年の決断と戦いの予感
(なずな視点)
「あのな。僕、みんなに言わなアカンことあんねん」
涼空の様子がおかしいと感じたあの日から、約2週間ほど経ったある日。
相変わらずライたちは外に出ているけど。
いつもみたいにおばさんの劇に付き合ってから宿でまったりしていると、そんなことを言い始めた。
「言わなきゃダメなこと…?
もしかして、この前の?」
「うん。
この国に来てから、なずちゃんは自分の事を教えてくれたやろ?
だったら僕も話さな。
ずっと言ってなかったことで、みんなに嫌われるかもしれんって思ったら怖いけど、決心がついたんや」
涼空は神妙な面持ちで、私を見た。
少し離れたところで聞いていたみつると風璃も、こっちに来て私の隣に座った。
「とりあえず聞く」
みつるは受け入れの態度を示す。
「ありがとな、みつる。
………じゃあまず。見てほしいんやけど。
口で説明するより先にこっちの方が話入りやすいはずや」
そう言うや否や、涼空は私たちから見て右側の前髪をかきあげた。
そこには、普段の吸い込まれるような紫色の反対色、獣のような黄色があった。
「僕な、"黄金月"なんよ」
黄金月って…………
「暗殺一家の象徴………?
涼空が……?」
黄金月はスパイなどの隠密系を家業としている。
幼い頃から拷問や悪口にも勝てるように、英才教育を叩き込まれているスパルタな一家としても知られているのだ。
この世界の人たちは黄金月以外に、いわゆるオッドアイの人が少ないから、やっぱり珍しく見える。
だから狙われることも多い。実際、それで命を落とした黄金月だっている。
残虐な事件だって…
「だから僕はみんなと違う。
君らを傷付けることだってある」
初めて出会った時から、ずっと知らなかった片方の眼。
それは今、悲しそうにゆらゆらと私たちを見つめていた。
ただ、率直な感想を言うならば。
「……びっくりしたけど、それが私たちの仲に何か関係ある?」
「は…?」
私の言葉は、涼空にとっては思ってもみないような発言だったんだろう。
大きく見開かれていた。
「涼空は、私たちがどんな反応すると思ってたの?」
「距離置かれるかと思っとった…
……だって、なずちゃんたちはあんまり知らんのやろ?
この眼は…!
これを見せながら念じたら、人を自由に操ることができんねんで!?
今まで仲良くなった人らも、僕が黄金月って知った瞬間、びくびくしながら僕を見た!
なずちゃんたちはそんなことせーへんって分かってる…
でも、それでも…!」
「なんで黄金月だからって、涼空にそんな態度取らなきゃいけないの?
関係ないし嫌だよ、そんなこと」
「けど、なずちゃんたちは怖くないん…!?
僕がその気になれば、なずちゃんたちを…」
苦しそうにそう叫ぶ涼空。
「涼空はそんなこと、しないでしょう?」
「え…」
「だな。
お前がそんなことをするほど、冷たい人間じゃねぇってことは嫌というほど分かってる」
今まで黙っていた風璃とみつるが口を開く。
「ほら、ね?
私たちは離れていかないから」
そんなことで見捨てるほど私たちの仲は浅くないし、そんなつもり、微塵もない。
「僕、まだここにおっていいん…?」
「逆に、嫌って言われても離してやんないわ!
あなたはあたしたちにとって大切な仲間なんだから」
風璃が手を腰に当てて、下から睨むように涼空を見る。
「……ふはっ、相変わらずみんなはお人好しやなぁ」
涼空の眼が少し輝いたような気がした。
「ねぇ涼空、厨二病って言われたことない?」
「………ノーコメント」
「察した」
「あらら…」
(ペティー視点)
「……以上で報告を終わります、クシム様」
ペティーたちはお宿を抜けて、こっそりクシム様に報告をしにきていた。
「ああ、ありがとう。どうだい、作戦は順調か?」
「うん!
ペティーたちの正体は見抜かれていないようです!」
ピシッと敬礼をする。
「そろそろ、あいつらに攻撃を仕掛けてもいいかと」
「そうだな。
さて、何か案はあるかい?」
……ペティーたちが考えるの!?
帆影も少し面食らっていた。
「そうですね……
ここはアズライトを吹き飛ばす勢いがいいかもな」
「吹き飛ばす!?
ペティーたちのりきりょーで、そんなことできたっけ〜…」
ん〜………
「…スマン、無理だ」
「ですよね〜」
帆影…
そこでペティーはあることを思いつく。
「……あ!ねぇねぇ、クシム様!
アズライトの近くに魔物の巣窟、作ってませんでしたっけ!」
「作ったが、それがどうした?」
……あれ?
伝わると思ってたんだけど…
「つまり、ペティーが言いたいのは、そこにいる魔物を一斉放射するってことでは?」
「そうそう!
結構な量いた気がするし、いくらなんでも捌きにくいんじゃないかなぁ!
ペティーたちは戻って、戦ってるフリをしながら治療していけばいいし!」
我ながら名案…ふっふー。
「………君は無理なんじゃねーの?
自分より魔力量は少ないし」
「帆影ヒドイ!
ペティーのことなんだと思ってんのさぁ!!」
帆影、ペティーに対して容赦ない!
「……そこは任せる。
そろそろ戻らなくては」
「承知しました」
「では、あとは頼んだ」
そう言って、クシム様は眠りについた。
「…んじゃ、報告も終わったことだし。
さっさと行くぞ」
「ま、待って帆影……
……ペティーの足がね、雷くらった…」
「はあ?」
心底呆れたような顔を見せる。
「……早く治せ馬鹿」
「馬鹿は言い過ぎじゃない!?」
ペティーに対して当たり強いよお…
とりあえず足をさすっていると、帆影からの視線に気づいた。
「?
帆影、どうかしたの?」
「……あ、いや…
…………なんでもねぇよ」
「?そーお?」
今の帆影の間が気になりながらも、ペティーたちは着々と準備を進めた。




