男の事情
今回は王都方面へ向かう門から出て、ちょうど盗賊のアジトとは反対方向のフィアルカ子爵領に近いヒューミッド洞窟へ向かうらしい。
領地とか洞窟の名前を言われても全くピンとこない。近くのバーという名の小さな街まで商人の荷車に乗せてもらい、そこからは徒歩で一時間ほどの所にあるようだ。
箱馬車を待っていると時間がかかりすぎるので直ぐにローブッシュを出る荷馬車と交渉した結果、割と早めにバーの街に着き目的地へと向かうことができた。
洞窟の詳細はモーガンから聞いている。未探索の洞窟ではないので地図があり、壁には魔鉱石がついているらしく明かりの心配がないこと。まあ暗くても私には見えるから大丈夫かな。そしていくつか広間があるが他の冒険者がいないことは滅多になく、植物だけでなく鉱石や洞窟に生息する魔物の素材なんかも依頼に出されているので簡単な採取系のクエストで重宝されている洞窟の一つであること。
そしてその中に生えているヒカリゴケの一種が最後の依頼品だ。名前をファリモというらしい。ファリモ?藻か?藻とコケは違うぞ。
「で、あんたのギルドカードだがな、一か所だけ角が折られてるだろ?それがデリヘルや性大使の証明になるんだ。」
取り出して見ると確かにドッグイヤーのように折り込まれている。
これはこういうデザインだと思っていた。そしてFランクには無いがEランクからはプレートにラインが入るらしい。初級・中級・上級みたいなもので、モーガンは銅の三本線のギルドカードが銀の一本線のギルドカードになったそうだ。実際に見せてもらったが軍隊のドッグタグのようでなかなかにカッコいい。そりゃ鉛とは見た目が違うわな。これ見よがしに見せつけるものだから羨ましくなってしまった。
「そう言やあ、昨日ロビーで話してたのはあんたのパーティーの一人か?ほら、初日に宿屋で仲裁に入ったやつだよ。」
「スバルさんの事?ええ、そうよ。パーティーで唯一まともな人ね。」
「え?もしかして王子もひどいやつなのか?」
「クラウンはね、口は悪いけどいい子だとは思うわよ。ちょっと意地悪だけど。」
昨日はスバルさんに私がいない間、みんなが何をしていたのかを聞いていたのだ。
どうやらローブッシュに着いてから数日で盗賊事件が発生し、領地視察組と盗賊捜査組に分かれたという。視察はクラウンとマーキュリー、捜査はボルボとスバルさん。視察組は近隣の村や小さな街を回り、捜査組は聞き込みや怪しげな周辺の調査を兼ねて魔物を狩っていたそうだ。もちろんギルドの盗賊討伐依頼は受けていない。表立って行動することを避けたようだった。そして私たちが盗賊退治をした翌日に盗賊が捕縛されたという噂を耳にして宿屋で出くわしたという流れである。
「それはそうとさ、初日は一緒に夕食を食べた後どこに行ってたのよ。もうちょっと街を探索したかったのに。」
「俺もローブッシュには王都に向かう途中で寄ったのが初めてなんだ。ホームがクラン地区だからわかんねーよ。」
「だったら一緒に色々見て回ったらよかったじゃん。」
「男には男の事情があるんだよ!言わせるなよ!」
プイとそっぽを向いたモーガンの耳が赤い。
ああ、そういうことか。街に詳しくなくてもいかがわしい店は探すんだ、ふ~ん。まあ三十前後ならあっちもまだまだ元気だわな。恥ずかしくて困っているモーガンがかわいく見えた。堂々と売春宿に行っていたと言われても反応に困るしね。モーガンの肩をまあまあまあと叩いて寄りかかり、ニヤリと笑ってサムズアップしておいた。




