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残念な人

ローブッシュのメインストリートは王都とはまた違った賑わいがある。

主に生活するために必要なものを売る店が立ち並んでいた。鍛冶屋や武器屋などは見当たらない。特に揚げ物屋の店先からは唐揚げのいい匂いがしている。花売りの子供や籠にお菓子を入れて売っている女性のように店を持たずに売り歩く者も多くいた。午前中の買い物時間なのか人通りも相当なものだ。威勢のいい呼び込みの声があちらこちらで聞こえてくる。


「旦那!別嬪な奥さんと買い物かい?うちはいい酒取り扱ってるぜ!今夜しっとり二人でどうだい?安くしとくよ!」

「あ、いや、そんなんじゃないんだ。今は、いい、よ。」


照れながらごにょごにょと尻すぼみな感じで受け答えをするモーガン。

それを退屈そうに眺めるありす。もう何度目になるだろうか、店の前を通る度にモーガンは受け答えをしている。結構ですという仕草だけで通り過ぎることができないようだ。

二人は店が途切れた四つ角を左に曲がり路地に入った。

休憩スポットなのか壁沿いにたくさんのベンチがあり、何人かが腰掛けている。モーガンとありすも手前のベンチに座った。


「ったく、何なんだよ。前来た時はこんなに絡まれなかったのに。」


モーガンはしきりに額を擦っている。

本人は汗を拭いているつもりなのだろうが実際は出ていない。おそらく冷や汗だろう。


「女連れだからでしょ。奥さん褒めとけば財布の紐が緩むとでも思ってんじゃないの。だいたいこの格好で夫婦とかないわ。」


ありすは指で毛先をくるくるしながら適当に答えている。

シニヨンカバーを着けているからかフードを被らず歩いていたようだ。


「店だけじゃねーだろ。みんなあんたを見てから俺を見て舌打ちしたり睨んできたりするんだぜ。」

「ああ、私、美人だからね。やっかんでんでしょ。」

「おい、それ自分で言うか?まあ事実だけど。」

「だって、“何ででしょうね?わからないですぅ”って返されてもウザいだけでしょ?美人だからだよって言ってもらいたいみたいじゃん。それに愛想振り撒いて気を持たせても悪いじゃない?って言うか私がしんどいわ。」


そう言ってありすは手前の吸い殻入れを引き寄せ、ポーチからタバコとマッチを取り出した。

モーガンに吸っていいかを確認して火を点ける。冒険者でタバコを吸うものは少ないのでモーガンは驚いているようだ。


「はー、なんつーの?もっと奥ゆかしさというか、謙遜というか、、、、。雰囲気ってあるだろ?。」


残念な人を見るような眼つきのモーガンにありすは肩をすくめてため息をついた。

吸い殻入れに灰を落としてもう一度大きく吸い込みゆっくりと吐き出す。


「TPOでちゃんと使い分けてますからご心配なく。だいたいねぇ、現代社会を女性一人で生き抜くには何事もハッキリ言わないとダメなのよ。うちの会社じゃ結婚してさっさと辞めちゃう子や最小限の仕事しか振られてないのにやってる感出すワーママがいる分、独身女性に仕事振られがちなのよ。何でもニコニコして引き受けてたら仕事に殺されるわ。」


何を思い出したのかありすは眉間に皺を作り一点を見つめている。

タバコの煙が目にしみたのか少し涙目になっていた。


「ちょっと、、、言ってる事がわかんないんだが、、、。まあ媚びられたり変にお高くとまられるよりはサバサバしてていいんじゃないか?うん。」


モーガンが最後は自分を納得させるかのような感じで締めくくってポケットから懐中時計を出し時間を確認している。

今から自警団本部に戻るとちょうど一時間が過ぎるくらいになるだろう。

自警団本部から一番近い宿屋にはクラウンは滞在しておらず、そのまま二人で道具屋でも探そうかという事で現在に至る。結局のところ道具屋や武器屋が見当たらず商店街のような生活感にじみ出るメインストリートを歩く破目になっていた。



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