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救われた気分

帰りに職安ギルドに立ち寄ってみたが初日にしてはまずまずの滑り出しのようだった。

掲示板の依頼もかなり剥がされている。ポールさんによるとスポット的な依頼のほとんどは子供たちが片付けてくれたそうだ。

登録可能なのは八歳からだが依頼は職員が全て目を通して年齢制限もしくは時間帯の制限を設けている。子供を不当に働かせるわけにはいかないからだ。お使い程度に出来るもの、夕方には終えられそうなものしか受けさせていない。もちろん保護者同伴ならある程度は大目に見ているそうだ。


嬉しいことにギルド職員募集にも何人か応募があったらしい。

初期メンバーが試験官であり面接官なのだから変な輩は入ってこないだろう。ちょっと朝八時から夜八時までの就業時間は鬼畜過ぎる。しばらくは残業代を付けてでも彼らに我慢してもらわなくてはならないが最低でも倍の人数は欲しいところだ。またカミルの知り合いの暇人を融通してもらうしかないかな。



帰り道、明日の喫茶の事が気になってお腹が痛くなった。

もう軌道に乗るか乗らないかなんてどうでもよくない?何なん、このゲーム。何を試されてるわけ?

ゲームの中でも仕事させられている気がしてならない。どうせならスカッとした気分になるとか恋愛シミュレーションだとか楽しむためにゲームはあるべきものではないのかと思う。この分だとクラウンが王様になるまでつまらないストーリーが延々と続くのではないだろうか。今までだって全然いい思い出が無い。日常からかけ離れた状態ではあるけれども!


「ハーニィッ♪お疲れ様。どうしたの、浮かない顔して。」


ちょうど区役所の前を通りかかった時にカミルに声を掛けられた。

仕事帰りらしい。役所の営業時間はとうに過ぎているはずなのできっと残業だったのだろう。もちろん後ろにはジュリアスが控えており、軽く頭を下げていた。


「何か悩み事?僕でよかったら聞いてあげるよ。」


何故かドキリとした。

そうだ、現実世界で今までにこんな言葉をかけてもらったことはないからだ。

同僚女子は次々と寿退社をし、同僚男子は年々偉そうになっていく。そんな中、仕事で行き詰った時に誰も親身になって聞いてくれる人はいなかった。このシチュエーションでこの言葉って正に少女漫画あるあるではないか。イケメンなだけあって心に沁みる。

少し顔を覗き込まれた。

カミルは外面がいいので公共の場では適切な距離を保っている。またそれがいい。

何か?このゲームはこういうご褒美を与えればプレイヤーが頑張るとでも思っているのか?――そうだ、その通りだ。テンション上がりまくりだ。


「カミル区長、ありがとう。なんかちょっと救われた気分よ。」

「ハニーは笑顔が一番だからね。その笑顔を僕は絶対に絶やさせやしない。だから結婚しよう!」

「それとこれとは話が別です!もう。」


冗談なのか本気なのか、いや本気だろうな。

妥協するか?いやいや、普通の状況なら考えなくもないが一応私はクラウンに召喚されている。ゲーム自体がそれを許さないだろう。前にも言ったが終始使用人に見張られているような生活はちょっと、、、。

でもカミルん家は使用人も少ないし自由度が半端ないのでは?欲しいものは手に入りそうだし、浮気されなさそうだし。まあ純血以外の女性に興味を持ったとしてもいやらしいことはしなさそうだし。そう考えると旦那の条件としては完璧ではないか!

使命なくこのゲームが遊べるのならカミルと結婚一択なのでは?


あり得ない妄想は置いておいて、とにかく明日を乗り切れば少しは落ち着くかなとは思う。

でも名札の特許登録にアンナの件とまだまだやることはある。本当に数日で次の街に行けるのかしら。道すがらアンナの事とギルド職員増員の件はカミルに軽く話しておいた。



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