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一気に疲れが

翌日、喫茶予定地の改装工事が終わり家具などを搬入している。

なんとか明日オープンには間に合いそうだ。元奴隷の中に力自慢がいるので机や調理器具などスイスイと運んでくれていた。

ギルド側の一部は食材倉庫になっている。これはロミルダさんの注文である。保管棚も搬入されていて狭くもなく一目でどこに何があるかが分かるようになっていた。さすがに冷凍は出来ないが業務用の冷蔵庫のようなものは存在した。実際にこういうものが欲しいとか便利だというのは主になる人たちの意見が一番である。凄いなと感心しながら眺めているとロミルダさんから買い付けに行こうと誘われた。


「アリスさんはお料理するのは好きな方かしら?」

「あー、いや可もなく不可もなくと言ったところでしょうか。必要に迫られて作ってましたから。」


事実だ。

たまに実家から日用品が送られてくる。その中に米や野菜も入っているのだ。明らかにすぐに消費しないと腐ってしまう食材なんかはあれこれ工夫して何日もかけて調理する。それが無ければコンビニやレンチンでだいたいを済ませていた。面倒なら食べない時もあった。それくらい食に欲がない。どこそこの何々が美味しいから行きたいだとか、テレビで放送されたスイーツを買いに行きたいだとか一度も思った事が無い。口に出来れば何でも美味しいと思う方なので食に執着はしたことが無い。不味いものは口に出来ないものだ。幸せなことに私には好き嫌いが無い。だから不味いものはないのだ。


「どんなお料理を作るの?」

「そうですね、手の込んだものは面倒なんで手軽にパパっと出来るものですかね。」


他愛ない会話をしていると大きな市場に着いた。

個人が道沿いに出しているようなものではなくおそらく卸売市場のようなものだろう。威勢のいい掛け声があちらこちらから聞こえる。台車に乗せられた大量の果物や野菜が購入者の馬車に積み替えられていた。

ロミルダさんの姿を見失わないように慎重について行く。

こういう所は見ているだけで楽しくなるものだ。名前は違うかもしれないが現実世界で知っている食材が多い。店で出すメニューは予め考えてあるので米やパスタなどが置いてある区画へ向かった。


「あら!ロミルダじゃない。こんな所で会うなんて!」


こちらに向かって小綺麗なご婦人が手を振っている。

よくよく見るとあのビラ配り要員のうちの一人、口コミオバサンだ。ロミルダさんと交流があるのだろうか。


「ミネアさん、お久しぶりね。ちょうど買い出しに来たのよ。」


お名前はミネアさんか。

確かビラ配りは三日間のはずだ。こんな所にまで来ているのか、流石は主婦。人の集まるところには敏感なようだ。


「買い出し?ここに?旦那と二人だけでしょ?あら?そちらのお嬢さん、職安ギルドに居た子よね?美人さんだから覚えてるわ。区長といい仲なんでしょ、うふふ。」


こちらに話す隙を与えないトーク、流石はおばさま。

でも事実無根なことがある!カミルとは何でもない。何故そんなことになっているのかわからないがここはきちんと訂正しておかなければならない。


「あ、あのアリスと申します。カミル区長とは単にビジネスパートナーなだけですから。」

「あらいやだ、そんな隠さなくてもいいのよ~。区役所にも押し掛けたんですって?仲良く歩く姿も目撃されているのよ、うふふ。」


ニヤニヤしながら口に手を当てていやらしい目つきで見つめられた。

何処からそんな情報が漏れているのだろう。人々の目は全てこのミネアさんに繋がっているのか?何か情報に飢えているような目をしている。こ、怖い。ちょっとロミルダさんに隠れてしまった。


「ちょうどよかったわ、ミネアさん。お知り合いに小麦系を安く取り扱ってらっしゃる方いないかしら?」

「ん?そうね、トパーズ商会なんかいいんじゃない?でも大口しか取り扱わないわよ。」

「いいのよ。うちね、区長に頼まれて食べ物屋をやるの。喫茶店なのよ。」

「え?ホント?改装してるだけかと思ったわ。」

「アリスさんはアドバイザー的な存在ね。素敵な店にしたいと思ってるのよ。」


おお、ロミルダさんがいい感じに話を煙に巻いてくれたようだ。

ミネアさんはふむふむと何かを考えているような表情で腕を組んでいる。


「じゃあギルドの紹介のついでにロミルダの店もお勧めしておくわ!」


アハハと笑ってカバンから取り出したギルドのビラをロミルダさんに渡し、人混みへと消えていった。

何だか台風のような人だった。一気に疲れが襲ってくる。ミネアさんに任せておけば結構な集客が見込めそうだとロミルダさんが言うので少し多めに食材を買うことにした。



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