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要らんて!

結局サリアの遺品はブーツの靴底だけだった。

それもひどく焼け焦げていて、言われなければ靴底とはわからない状態の物だ。どうして靴底だけが落ちていたのかはわからないが、アードルフさんは持って来ていた箱に大事そうに入れていた。

サリアには身寄りがなく、残りは私室にある私物を入れておくという。

黒マントとの関係だが、同じ教会内の孤児院出身というだけで詳しいことは分かっていないようだった。名前をエリックというらしい。そのエリックが団長のバルカンを殴ったかどうかも定かではない。そんな事よりもバルカンは王都に帰ることで頭がいっぱいなんだそうだ。いい加減なやつだなぁ。


今は帰りの馬車の中なのだが、セレマにはあの指の形を作らせ狙いを定める練習をしてもらっている。

ゆくゆくはクレー射撃みたいな練習ができればいいのにな。石だと直ぐに壊れそうだから、鉄くずなんかを撃たせるのがいいかもしれない。ちょうどポーチの中にはカレンさんに貰ったネジとかナットみたいなガラクタが入ってるし、これなら壊すように撃ってとか弾くだけとか威力の調節の練習ができそう。


ふと見るといつしかセレマは窓の外の景色を見ながら指を構えていた。

怖いので頭の中でだけやるように念押ししておく。ゼノさんは撃つなよ撃つなよとコントみたいにセレマに声を掛けていた。そんなん言ったら撃っちゃうじゃん、面白いな、ゼノさん。他の近衛の人もこんな気さくな感じなのかな?だとしたら街の人たちもきっと色々相談事を持ち掛けたりしているに違いない。でも確か手が足りないって言ってたよね。


「アードルフさん、この街で自警団は作れそうなんですか?」


反対の窓を眺めていたアードルフさんに声を掛けた。

何か考え事をしていたのか、少し間をおいて返事が返ってきた。タイミング悪かったかな。


「ああ、ちょっと難しいかな。基本自警団はその土地に住む有志が結成するもんなんだ。この街は商業中心だからね、腕っぷしの強い人材が少なそうだし。一応は当たってみるつもりなんだけど、望みは薄いかな。」


アードルフさんは眉を八の字にして情けなさそうに笑っている。

その土地出身者ね。まあその方が土地勘はあるし、ある程度顔も知れてるだろうからやりやすいわな。


「じゃあ、もしそんな人が見付かった場合は教えてくださいよ。私、ローブッシュの自警団団長と知り合いなんで。何かお役に立てるんじゃないかと思います。」


ハイド団長にも協力してもらえば、人材さえ見つかれば話はトントン拍子に進みそうだしね。


「そんな人脈があるのかい?」

「ええ、まあお世話してもらったりお世話したりで。何だったら場所と資金さえあれば職安ギルドも作りますよ。」

「職安ギルド?聞いたことないギルド名だね。」


この街にまでは噂は届いていないらしい。

もしかして近衛だから知らないのかな。結構いい感じに運営できているはずだから街では少し知れ渡っているかも。一応アードルフさんには概要を話しておいた。カミルも関わっているし、興味があるなら弟に聞いてもらうことにしよう。





気付けばもう街の入口を通過していた。

午前中よりは人が多い気がする。アードルフさんが言うに、近隣の街や王都にも明日巫女頭の就任式があることを伝えているので、その影響でこの街に訪れる人も増えたのではないかということだ。馬車の速度も目に見えて遅くなっている。こんな近くを歩かれては轢いてしまうんじゃないかと思うくらい人が増えていた。こうして見るとこの御者の近衛もまあまあのドラテクなんだなと思う。


教会の入口を過ぎた時になにやら男性の喚き散らす声が聞こえてきた。

何かに対して怒っているような感じだ。巫女やその他の人たちの視線が静かな雰囲気の教会に似つかわしい声の主の方に向いている。


「副団長。」

「ああ、急ごう。」


アードルフさんとゼノさんは顔を見合わせている。

馬車が停まると二人は転がるように降りて行った。こんな所にもクレーマーっているんだね。ああいう迷惑な人って一定数いるのかしら。ゲームなんだから不快な人間は最初から取り除いておいて欲しいわ。このグロゲーにそんな配慮はないと思うけど。


私とセレマもゆっくりと馬車を降りる。

このままバックレてもいいんだけど、一応アードルフさんたちには挨拶をしてからにしようかな。件の迷惑客の所へ行くのはイヤだけど、そっと後ろから声掛けだけして出て行くとするか。


「聞いたぞ!サリアが死んだってどういう事だ!」


あら?サリアの知り合い?

早速アードルフさんに掴みかかっている。アードルフさんは両手を後ろにしたままだ。きっと手を出したとか言われないようにしてるんだろうな。でもあの人、なんかチンピラみたいな格好してない?やっぱり人間見た目は大切よ。不細工かどうかなんてどうでもいいの、清潔感のある服装とか知性ある話し方とかって意味ね。まあ身内が亡くなったって知ったらこれくらい取り乱すかな。

さっさとこの場を離れたいので後ろに立っているゼノさんに声を掛けようと近づいた。


「あっ!エリック!お前どこ行ってたんだよ!」


うわっ、何、何?

エリックって誰?黒マント?ちょっとチンピラ男が駆け寄って来るんですけど!

私は本能的に回れ右をしたのだが、後ろに立ってたセレマと盛大にぶつかってしまった。


「街中探したんだぜ。おとなしく待ってろって言っただろ!それともまだ仕置きが足りねぇか?」


よろけてしまった私の直ぐ後ろでチンピラ男の声が聞こえる。

腕を掴まれ、強引にフードを脱がされた。振り返りざまに風に巻き上げられた白い髪が視界を遮る。

ちょっと!こんな演出要らんて!

これを使っていいのは乙女ゲームに出てくるイケメンに対してだけでしょ!



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