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ってか、

「あれだろ、さっき魔物に食われてた女だな。」


ま、眩しい!

めっちゃ黄色じゃん。絶対に虫寄って来るでしょ!近くで見るとちょっとテカテカしている素材のコートだ。ムード歌謡か!でも金運良くなりそう。

ってか、この人、誰?


「わざわざこんなところに出向くなんて、心を入れ替えたんですか?マセラティ兄様。」


うおーーーーー!!

クラウンが敬語使って、お辞儀してるぅ!しかもお兄さんて!お兄ちゃん好きなのか?このゲームの制作者は。


「第一声がこれとは、、、相変わらず口のきき方を知らないようだな、クラウン。まあ仕方ないよな、教養も何もかも最低限にしか教えてもらってないんだから。今回は大目に見てやろうじゃないか。」


めちゃくちゃ仲が悪いじゃない。

もう視線と視線の中間で火花がバチバチ音を立てている様子が目に見えるようだわ。男兄弟ってこんな感じなの?もうちょっと、こう、“久しぶり!”みたいに爽やかなもんじゃないの?


マセラティ兄さんはあからさまに見下した態度を取っている。

腕を組んで、ちょっと顎を上げて、目がミカンの房みたいな形になってて、ニヤアって口の端を吊り上げてるってやつ。絵に描いたようだわ~、3DCGだけどね。

ってか、名前がマセラティってやっぱり高級外車じゃん。国産車じゃ勝てないでしょ。業績では勝ってると思うけれども!


でもサリアがあの魔物に食べられたって本当かしら。

逃がしたり匿ってたりしてない?ちなみにこの広間を【探索(サーチ)】してみたけど、ここにいる人数分しかキャッチできなかった。なんだか天井の方にちらちらと居たり居なかったりみたいな反応はあるんだけど、まさかサリアではないだろうし、襲ってくる様子も無かったので無視しておくことにした。クラウンと一緒の時はいつもこんな感じで何かの存在を感じるんだけど、クラウンが気にしてないんだから無視でいいと思う。

それよりその先にいるんじゃないの?クラウンならこの坑道内に隠れていてもわかるわよね?


「巫女が食べられたと聞こえたのですが、魔物の腹を確かめても?」


クラウンは少し首を傾げ、魔物を掌で指し示した。

ちょっとちょっと!いい男過ぎるでしょ。やればできるじゃない、紳士的な態度。その方がずっと魅力的よ。なんか効果音が鳴ってもいいくらいに好き度が上がったわ。

ちょうど魔物も解体しているところだし、覗きに行ってもいいかもね。

するとマセラティ兄さんが魔物の死体に向かって叫んだ。


「おい!アビト!」

「なんっすかー?」


魔物の死体の向こう側から突然男性が立ち上がった。

ひょっこりはんか!手前の顔辺りで解体している人にしか目が行かなかったから驚いたわよ。


「さっきの女の原型はあるか?」


マセラティ兄さんの質問を受け、アビトという人が再びしゃがみ込む。

ちょうどこちら側に魔物の背が向いているので全く見えない。これはプレイヤーに対する配慮か?そんなわけないわよね、今までさんざんグロかったもの。

少ししてアビトが姿を現わすと、顔の前でバツの印を作っている。


「ミンチっす!服もぐちゃぐちゃで!」


うわぁ、想像しちゃったわ。


「と言う事だ。見るまでもないな、クラウンよ。」


マセラティ兄さんはドヤ顔で決めポーズを取った。

そんなの本当がどうかわかんないじゃない。クラウンもなんか言ってやりなさいよ。


「一応自分の目で確かめておき――」

「あ!なんか首飾りが出てきましたよー!」


クラウンの言葉を遮るようにしてアビトが叫んできた。

ネックレスを人差し指に引っ掛けてぶんぶん振り回している。みんなの視線が一斉にネックレスに集まった。クラウン、小柄眼鏡、マセラティ兄さん三名がハッとしている。

何だか微妙な空気の中、小柄眼鏡がマセラティ兄さんを肘でつんつんしだした。


「おやおや!あれは巫女頭だけが持つことを許されている炎の印ではありませんか!もしかしてあの巫女は巫女頭だったんですか~?それをお探しだったんですかぁ?」


小柄眼鏡はクラウンに話し掛けながらもまだつんつんしている。

いちいち言い方が芝居がかっていて鼻につくんだけど。あんな憎たらしい態度をされて、よくクラウンも耐えていられるわね。憎たらしいって言うかムカつくから殴りたくなっちゃう。そんな思いが通じたのか、マセラティ兄さんが小柄眼鏡を激しく殴打した。

よし!いいぞ!


ひいひい言って頭を抱えている小柄眼鏡を無視してマセラティ兄さんが一歩前に出た。


「そうか、そういう事だったのか、ハハハハ!だからお前は必死になってたんだな。だがな、あの魔物を倒したのは私たちだ。無論魔物の亡骸の所有権は私たちにある。牙や目ん玉、臓物の中身までな!」


高らかな笑い声が響き渡る。

ああ、これって絶対に素直に返してくれないパターンのやつでしょ。


「でもまあご聖品が出てきたとなれば、はいどうぞと返してやらんこともない。そうすれば城には私がお前を無償で助けてやったと報告が上がる。私の査定も上がるだろう。」


あれっ?返すんかい!

えらくあっさりしてるわね。何かあるんじゃないの?


「ただ、、、、まさか私がそんな功績ごときで気分を良くするとでも思ったか?チマチマした討伐依頼を受けにこんな辺鄙な場所に来たとは思っていないよな?」


魔物退治のためにこの場所に来たわけじゃないの?

クラウンは黙ったままだけどマセラティ兄さんの言わんとしていることがわかってるのかな。


「正直、お前が受ける可能性は低いと思って乗り気じゃなかったんだ。でも炎の印を手にしたことで状況が変わったよ。運も私に味方してくれているみたいだから改めて申し込む。炎の印を返す代わりにトレードを賭けた勝負を受けてくれないか、クラウン。」


マセラティ兄さん、小柄眼鏡とは違う意味で憎たらしい顔つきになってるんですけど。

ってか、トレードって何?

ここにきて初めてクラウンの苦い顔を見た気がする。大丈夫なのかしら。



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