表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
216/258

良からぬこと

思ったよりも早く目が覚めたのでバルコニーでタバコを吸っている。

だって何だか支配人が気持ち悪くてまともに寝られなかったんだもん。寝る直前までスバルさんの部屋で雑談していたんだけど、さすがに夜通し付き合わせる訳にもいかないしね。あ、夕食は美味しくいただきましたよ。毒は入ってませんでした。多分。


まだ辺りは薄暗く街が活動し始める前のひんやりと澄み渡った空気にそっと煙を吐き出す。

ああ、外の空気を吸うよりも目覚めの一服が心地よい。感覚がオッサンだな、私。いや、オバハンだけれども!

もちろん劇画タッチの敏腕スナイパーばりに周囲を警戒してますよ!腹黒モドキに寝首はかかれたくないもので。“私の背後に立つな!”っていつでも言えますから!


バルコニーの壁にもたれて何気なく教会のある方を見た。

噴水広場辺りには人影はない。全体的に靄がかかっていて魔鉱石の街灯がぼんやりと笠をかぶったように見える。手前の建物のせいでギリギリ教会の端が見えるかどうかなのだが、どうもその教会の角の所で誰かが近衛と話しているように見える。こんな時間に?

目を凝らしてよく見るとボルボだった。

思わずその場にしゃがみ込む。普通の人には豆粒くらいにしか見えないだろうけど、私にはくっきりハッキリ見えますから。向こうからは見えるはずはないと思うけれども、何となくそうせずにはいられなかった。恐るべし、ボルボ。

でも何してたんだろう。





少し早いが私はスバルさんを誘ってお食事処に来ていた。

今日明日は自由にしていいとクラウンから言われている。だから奴等とも一緒にご飯を食べなくてもいいのだ。食べ終わったらその分ゆっくりこの街を見物したいと思う。

ちょうど窓際の席が空いていたので早速スバルさんと陣取ってウエイトレスさんに注文をした。プレーンオムレツとお粥の二択のようだ。ちゃんとメニュー表に絵が載ってるから私にでもわかりますよ。ここは店の雰囲気的にもお粥にしようかな。


ほどなくしてお膳が運ばれてきた。

なんと揚げパン付きだ!スティック状の揚げパン!揚げパン大好きなんだよね。お粥の真ん中にはクコの実がちょこんと乗っている。湯気が立ち上っていてアツアツだ!副菜はブロッコリーと鶏のささみの和え物でごま油の香りがしている。これ絶対うまいやつ!

ああ、味覚がもっとしっかりしていれば、、、、残念。


教会以外の場所を見に行きたいねなんて話しているとクラウンとボルボが食事処に現れた。

離れた場所に座ったので軽く頭だけ下げてスバルさんとの会話に戻る。ボルボはあの後部屋に戻ったのか?散歩だったのかしら。

少しして食事も終わったことだし出掛けようかと席を立とうとしたら、宿の入口から近衛が勢いよく走り込んできた。

一直線にクラウンたちの席に向かって早歩きしている。そしてクラウンの前で跪いた。


あれ?あの近衛、今朝ボルボと話してた人よね。

クラウンの顔色が変わった。何事かと思い、聞き耳を立てようとしたが、そうする前にクラウンから招集がかかってしまった。せっかくスバルさんとお出掛けする予定だったのに。

クラウンたちの席の傍までやってくるとボルボがゆっくりと席を立った。


「先に行っててくれ。俺はマーキュリーを呼んでから合流するわ。」


のしのしと階段を上がっていく。

何よ、妙に落ち着いてるわね。クラウンはめっちゃ慌ててるっていうのに。普通なら駆け足で呼びに行ってもいいくらいじゃない?


「クラウン、何があったの?」

「教会に着いてからだ。急ぐぞ!」


まあ、ここで話したがらないのは普通の宿泊客もいるからなんだろうけど。

何か良からぬことが起こったのは間違いないわね。スバルさんと顔を見合わせて頷き合った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ