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交渉成立

猫の爪のような細い月が低い位置に見えている。

魔鉱石も仄暗い光に変わり施設内は静寂に包まれていた。要所要所に警備の近衛が立っているものの、それ以外には全く人影がない。風も吹いていないので草木の騒めきも感じられない夜だ。


炎の大聖霊の祭られてある聖堂の前にも警護の近衛が立っていた。

聖堂は巫女頭が月籠りをしているため中から鍵が掛けられている。月籠りとは巫女頭が月に三日間、聖堂で聖霊に祈りを捧げる儀式である。その間、巫女頭は外部との接触を禁じられている。もちろん普段は聖堂は一般祈祷者の出入りは自由なのだが月籠り中は閉鎖される。とは言え、聖堂内には月籠りのための小さな私室が設けられており、巫女頭はそこで寝食をとっていた。


大聖霊を祭っているだけあって聖堂はかなり広い。

真ん中の通路を隔てて左右に一般祈祷者向けに引き出すタイプの跪き台の付いた細長い机がいくつも並べられており、その通路正面壇上には黒檀で作られた巫女台が置かれてある。巫女台の後ろには巫女頭専用の跪き台付きの祈祷机とその先には祭壇が設けられていた。

天井も高く、その祭壇前の窓は炎をモチーフにした大きなステンドグラスで造られていた。日中や満月の夜などはそこから明かりが入り何とも幻想的な空間になるのだが、今は新月明けなのでほとんど光は差し込まない。祭壇横の魔鉱石だけが蝋燭の火の明るさくらいにしか灯っていなかった。


今、祭壇前の祈祷机で祈りを捧げているのが現巫女頭イザベラである。

巫女には誰でも就くことができるのだが巫女頭は別だ。巫女頭になれるのは幼いころに聖霊を見たとされる女児で、中でも何かしらの属性魔法に長けている者が抜擢される。一応身分は関係ないらしい。イザベラは下級貴族の出身だが、もちろん前者はクリアしており、加えて炎属性魔法を得意としている。更にその魔法から派生した“ウォーム”という少しだけ治癒が出来るという魔法を持っていた。光魔法系には遠く及ばないものの、擦り傷程度なら薬を塗るよりも早く治すことができる。ただそれだけの力なのだが珍しい魔法であることと、彼女の髪が燃えるような赤色であることが先代の巫女頭の目に留まり、十四歳の時に巫女頭候補の一人となった。正式に巫女頭になったのが十八の時である。


「こんな祈り、何の意味があるのかしらね、、、。」


ため息とともに本音が漏れる。

腰を上げようとした時、何者かに後ろから口と腹部を押さえられた。


「!!」


イザベラは声を出すことはおろか、身動きもできない。

内側から鍵を掛けているこの聖堂には近衛すら入れないはずだ。恐怖がイザベラを襲う。


「よぉ、イザベラ。相変わらずいい身体してるじゃねぇか。」


顔の見えない男に耳元に息を吹きかけられ舐め回されているにもかかわらず、イザベラは目を見開いたまま何かに気付いたような表情をしていた。

拘束を解こうと抵抗するのも止め、声を殺し、耳や首筋をむさぼる男の方へ瞳だけをゆっくりと動かし様子を窺っている。

無反応なイザベラに飽きたのか、男は床に投げつけるように解放した。イザベラは膝をつき声の主を見上げる。


「ボルボ!何故あなたが、、、。どうしてここに?」

「久しぶりだな、実に二年ぶりってとこか?」

「今更どういうつもりなの!私、あなたと結婚するつもりだったのよ!」

「しー。声がデカいぞ。外の見張りに気付かれちまうだろ?小声で話せ。」


ボルボはイザベラの直ぐ傍にしゃがみ込んで人差し指を己の唇に当てている。

イザベラの瞳からは恐怖が消えていた。それどころか憎しみを帯びているように見える。固く握りしめている拳は怒りを抑えているかのように震えていた。


「でもまさかまだ隠し通路が生きているとは思わなかったぜ。ってことはお前、未だに男と盛ってるのか?俺の次は誰だ?あ?新しい警護団長さんか?」


ボルボはいやらしい顔つきでイザベラを見る。

彼女が怒っているのが分かっているのか、わざと軽口を叩いているようだ。


「あんな気持ち悪い奴と誰が!」

「は~ん、バルカンだけ否定か。他は?何人とヤッたんだ?もしかして本当に俺だけなのか?」


ボルボはニヤつきながらイザベラの顎を掴み、顔を覗き込む。

その手をイザベラは勢いよく払いのけた。


「調子に乗らないで。ようやくいい条件の婚約者が出来たのよ!」

「それにしちゃ、なかなか巫女頭の座を明け渡さないんだな。巫女頭候補に問題でもあるのか?例えば、、、そうだな、お前の婚約者が手ぇ出してるとかな。」


ボルボの問いかけにイザベラはギリギリと歯を食いしばっている。


「確か巫女頭候補にサリアって子がいたよな、昼間に見たぜ。まあ俺にとっちゃ魅力のみの字もねぇけどよ、ああいう地味~な幼児体型が好みのやつもいるわなぁ。」

「なにも候補はサリア一人じゃないわ!」

「そうか?今んとこ、その子が有力なんだろ?巫女頭としても、浮気相手としても。」


イザベラは顔を歪ませ、視線を外した。

それを見たボルボは更に言葉を重ねていく。


「お前は巫女頭だから婚約者に選ばれたんじゃないのか?だから次の巫女頭を決めかねているんだろ?サリアを巫女頭に選べばお前は即離婚かもしれねぇし、巫女頭に選ばなきゃ選ばないで今まで通りヤリたい放題じゃねぇか。まあ相手の男にとっちゃ、ぶっちゃけどっちでもいいんだろうな。」

「知った風な口をきかないで!」


激高したイザベラはボルボを平手打ちした。

パーンという乾いた音が聖堂に響き渡る。二人は時が止まったかのように動かない。イザベラは静かに涙を流していた。


「おいおい、小声で話せって。デカい声はアノ時の声だけでいいんだよ、ったく。」


ボルボは叩かれた頬を擦りながらもデリカシーのない言葉をこぼす。

そして態勢を整えてその場で胡坐をかいた。もう一度イザベラの顔を覗き込むが、イザベラは目を合わそうとしない。


「要はサリアが居なくなればいいんだろ?ん?」


居なくなるという言葉にイザベラがびくりと反応した。

そのまま真っ直ぐにボルボの瞳を見つめる。


「ならよ、こうしちゃあどうだ?サリアに炎の印を持たせてベア観光坑道を清めに行かせるんだ。」

「そんな、聖品を持ち出すなんて無理よ。それに今あそこは――」


ボルボの言いたいことに気が付いたのか、イザベラは大きく目を見開いた。


「そう、小娘なんかが出くわしたら確実に死んじまうくらいの魔物が出てるよな。ひょっとして坑道の篝火が消えてるんじゃねぇか?それを確認しに行かせればいい。巫女頭になる試練とか何とか言えば聖品だって持ち出せるだろ?どうだ?」


ニンマリと笑うボルボに押し黙るイザベラ。

重たい静けさが辺りを包む。やがてイザベラが小さく頷いた。


「よし、決まりだ。ああ、聖品の事は俺に任せろ。責任を持って回収してお前に届けるからよ。」


ボルボは両手でイザベラの肩を掴み、満面の笑みを見せた。

イザベラも無言でボルボの胸に顔を埋める。


「交渉成立だな。なら、早くそこに膝付いてケツ出せよ。」

「え?」


ボルボは掴んでいたイザベラを祈祷机の方へ押し倒した。


「早いとこおっぱじめようぜ。お前とは久々だから楽しみにしてたんだよ。巫女服はいつ見てもエロいからなぁ。」

「ま、待って!どういう事?や、やめて、、、。」


イザベラに組み伏したボルボは強引に唇にむしゃぶりついた。

片手でイザベラの両手首を押さえ込み、もう片方の手で慣れた手つきで器用に巫女服を脱がしていく。獰猛な獣のような息遣いで唇から首筋、鎖骨から胸の頂まで執拗に舐め回している。


「あっ、ダメ、お願い。ここは、、、、祭壇前よ、んっ。」

「そういや、ここの私室でしかやったことなかったよな。いいじゃねぇか、お前の熱の籠った喘ぎ声を大聖霊様にも聞かせてやろうぜ。炎よりも熱いヤツをブチ込んでやるからよ。」


ボルボはそう言って、すっかり丸裸になったイザベラを抱き上げ祈祷机に乱暴に跪かせた。

ガチャガチャとベルトを外す音が響く。


「おっと、今日だけはデカい声は御免だぜ。頑張って声を抑えてくれよな。」



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