お兄さん
アードルフさんに芝生にちょいちょいある石碑や灯籠、孤児院に繋がる通路などを説明してもらい教会ツアーが幕を閉じた。
割と時間をくったわね。マーキュリーがいなかったことに感謝。彼女は絶対に聞く気がないからクラウンとイチャコラしていたはずだわ。傍で見る方の気にもなってよ、耐えられないでしょ?
最後にアードルフさんは目の前を通りかかった巫女候補を呼び止めた。
「こちらはジュディーさんです。彼女も巫女頭候補の一人です。」
アードルフさんの紹介で頭を下げたのは暗い赤髪をひっつめた眼鏡ソバカス女子だった。
ジュディーといえばオングでしょ、昭和ならね。アンドマリーなんてのもアリか、ソバカスだけに、なんつって!
ちょっと自分でもうまいこと言うなと思ってニヤケていると、アードルフさんとスバルさんにめっちゃ見られてしまった。別に巫女頭候補を見てニヤケたんじゃないんだからね!
誤解を招いていないかと恐る恐るジュディーに目をやる。大丈夫だ、例の変なポージング挨拶でこちらを見ていない。私がニヤケたことにすら気付いていないはずだ。
見た感じジュディーはさっきのサリアよりも若い気がする。
彼女は炎以外の聖霊の存在も感じ取ることができるそうで全ての属性魔法の適性が高いらしい。だったら巫女以外でも何かの職に就けると思うんだけどな。
今のところサリアと並んでジュディーが巫女頭有力候補のようだ。何基準か知らんけど。
だいたいみんな生活魔法が使えるってズルくない?
私もこんな教会をたくさん巡っていたら使えるようにならないかしら。
他にも巫女頭候補さんを紹介してもらっていたのだが、皆一様に平凡だった。
これは加入キャラではないわね。残念。
「ダーリーーーーーン!!」
教会の門の辺りで超ご機嫌なマーキュリーが両手を振って跳ねている。
鬼っ子か!って毎回突っ込みたくなるわ、全然かわいくないし色気もないけど。今まで一体どこで何をしていたのかしらね。それにしてもクラウンもよく真顔で近づいて行けるわ。呼ばれてないボルボが先に駆けだしてるってどういうこと?変な三角関係に発展しないでほしいんですけど!
それよりも案内してくれたアードルフさんに挨拶は無しか!常識はないのか!
仕方がないので私とスバルさんで対応する。
「アードルフさん、今日はありがとうございました。」
「いえいえ、王子殿下にも満足していただいたようで何よりです。君たちと次に会うのは三日後かな。それまでこの街を楽しんで。」
ニッコリと笑うアードルフさんの歯がきらりと光ったような気がした。
まあそれくらい爽やかってことね、顔は濃いけど。でも嫌味がないのよね~、背は高いし体格いいし、落ち着いた雰囲気で気さくな感じだから近衛の中でも人気が高いのかもしれないわ。
それではとスバルさんとその場を離れようとした時にアードルフさんから声を掛けられた。
「君、もしかしてカミルの知り合いかな?」
まさかの問いかけにギョッとする。
ここでその名前を聞くとは思わなかったわ。私は機械仕掛けのようにゆっくりと振り返りコクコクと頷いた。
「やっぱりそうか!じゃあ、アリスちゃんで合ってるかな?いやぁ、本当に美人だ!」
なになになに?
それは個人情報ですよ。あなたこそカミルの知り合いなんですか?
私の不審な思いが顔に出てしまっていたのかアードルフさんが改めて頭を下げ右手を差し出してきた。
「アードルフ=ラハナストです!私はカミルの一番上の兄なんだ。カミルから聞いてない?」
「え、ええ。長男が近衛にいるとだけ、、、。」
私の答えを聞くとアードルフさんは包み込むようにした握手をそっと離す。
私は無難に笑っては見せたが、心の中では驚きの叫びが大合唱していた。隣に立つスバルさんも言葉が出ないのかあんぐりと口を開けている。
マジか、カミルのお兄さんか。全然似てないな。話し方や物腰が高位の貴族っぽいなとは思ったんだけれど、まさかカミルのお兄さんて。
あ、でもよく見たら髪と瞳の色が同じだわ。でもそういうのって普通じゃないの?日本人は黒目黒髪みたいな感じにざっくり一緒じゃないの?そういうものだと思ってたんですけど!
「そうかそうか!私たち兄弟の事を君に話したんだね。いよいよアイツも本気ってことかぁ。」
アードルフさん!
腕組みしてうんうん頷いていますけど、何が本気なんですか?
「アイツからの手紙に書かれていた女性の特徴が君とそっくりでね。魔族というので確信が持てたんだ。」
って言うか、手紙の内容は何?めっちゃ気になるんですけど!
もしかして嫁にしたいとかプロポーズしたとかじゃないでしょうね。カミルよ、勝手に話を進めるな!まだ自分の中でだけ温めておけ!
「ああ、すまないね、あまり周りがとやかく言う事ではなかったかな。またカミルからの報告を待つとするよ。それじゃあね。」
私の言葉数が少なくなったのを勘違いしたのかアードルフさんは爽やかさ更に倍で笑顔を振りまきながら教会建物へと去っていった。
話を聞かない辺りが兄弟だなと痛感した瞬間だった。
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