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第二次二次元マイブーム

中一のころに漫画に目覚めた。

それまでは一切読ませてもらえなかった。母親が教育ママだったから。両親たちはバカなくせに子供に背負わせるんじゃないわよ。これが本音。


「漫画なんか読んだらバカになるよ!」


そう母親に言われ、小学生のころはひたすら勉強をした。

テレビアニメは何故か見てもよかった。名作の劇場やネコロボット、昔話や特撮もの。でも漫画はダメだった。今でも理由がわからない。そのお蔭か、私は某有名私立女子中にほぼトップの成績で入学できた。


小学校のころはそれほど親しい友人はいなかった。

中学で友達になったのが今でいう漫画オタクな少女たち。しかも少年誌。もちろん映画館にまんがの祭りも見に行かされた。その漫画、最初は登場人物が全部似ているから誰が誰か全く分からなかった。でも読んでいるうちに区別がつき、なかなかに面白いことがわかってきた。

他の漫画も読む、週刊誌も買う、そういうグッズの販売店にも行く――そして私の成績は見る見る落ちていった。ま、そんなのどうでもいいよね~。


要は中一で少年漫画に目覚め、その頃からアニメ化される少年漫画をリアルタイムで読んで、ついには“この人かっこいい”と思うようになり、やがては結婚したいと思うようになったわけ。夢女子爆誕!

みんながイケメン男子芸能集団にキャーキャー言っていた頃、私はアニメキャラにキャーキャー言っていたのだ。これが第一次二次元マイブーム!

よくイケメン男子芸能集団好きの女子がオタク少女をバカにするけど、当時オタク少女も君たちをバカにしていたんだよ。知らないでしょ?


そういった環境からか、その頃は自分の外見には無頓着。

出歩くこともせず、漫画を読んだりアニメを見たり、漫画を自分で書いたりして休みは過ぎて行った。


今思えば、ドラム缶のような体形だったわ。

考えを変えようと思ったのが大学一年の春。このままではお前は痛い子になってしまうと兄が嘆いた。(もう痛い子だったかもしれない。)素質があるんだから自分を磨けと。

信頼している異性にそこまで言われたらかなりショックだった。女子校だったから異性は兄しかいなかったんだけどね。

それからはスポ根アニメのように筋トレした。オシャレにも気を使った。


わずか三ヶ月でビフォー → アフターになった。

兄もビックリな“ありす”の出来上がり。モテ期到来!どんなイケメン(世間一般のね)も私に寄ってくる!名前負けしない美貌。ちやほやしてくれて、アッシー、メッシー、ミツグくんを途切れさせたことの無いほどに。(ほぼ死語)


アニメやゲームはそっちのけで、毎日のコンパが楽しかった。

いろんな男子が私に傅いてくれる。気分サイコー!あ、でも身体は許してない。ギリギリのところでうまくかわす。男子からしたらムカつく行為だと思う。でも私みたいに超絶かわいいと許されるのだと思っていた。そんな恋愛ゲームが楽しくて仕方なかった。


やがて就職し、この人と結婚するのかな~とか淡い期待を抱きつつ恋愛ゲーム進行形。

本格的に付き合ってみると何かが違う。私の中での彼氏はこんなこと言わないとか、色々我慢してる私にどうして気づいてくれないのとか、放置してほしいときは構わないでよ!わからないのとか。

そんな恋愛ごっこを両手の指で数えられる以上の人数と重ねてきた。

そしてある結論に至る。


私の中の理想の男子の根底は“アニメ”“漫画”のイケメンなのだと。

ツンデレで、危険な時には助けに来てくれて、きゅんきゅんする行動を取ってくれる――結局王子様妄想だけが私の中で“彼氏”を育て現実の数々の“彼氏”とのギャップがハンパなくなったとき――

第二次二次元マイブームが到来したのである!

到来してから数年たってるけど(笑)





ブームは繰り返される。

ホントだなって。歴史で数多くの流行が再度ブレイクしている。私という短い歴史の中ですらそうなのだから。


という訳で、私、今、恋してます!

土曜深夜にやっている胸キュンアドベンチャー。王子とその一行が叔父の悪政を正していき、囚われている妖精の国の女の子たちを助けるという内容。今ちょうど七話目までが放映されたところだ。

OVAで原作本とかないから絶対に見逃せない。録画予約を何回もチェック。間違えていたら死ぬ。連ドラ予約していても心配だから録画予約画面で確認する。土曜の深夜2時は聖なる時間なのよ!じゃぁ、起きて生で見ろって?それは、、、歳だから寝たいのよ、夜更かしは美容に悪いでしょ。細かいことは突っ込まない!


それにスマホとかの見逃しアプリとか見られるんだろうけど、家のテレビ画面で見たいの!

ゆっくりと過ぎる日曜の午後に布団の中で微睡みながらあなたに会える幸せ。そう、『ストロベリーガーデン』の主人公の王子ルイ=セドリック=ストロベリー――ではなく、そのお付きで陰ながら王子を支え見事な知恵と武術とそのルックスと声で私を虜にしたナッシュ=バースランド。ま、セドはセドでカッコいいんだけどね。


キャラクターデザインが昔から私の大好きな先生、そしてその声はイケメンキャラを総なめにしているらしい声優さん。

ここで“らしい”と付けたのは、はっきり言って聞き分けられる自信がないからだ。一応その声優さんが当てているキャラを全て見たのだが何となく他の声優さんと声が似てる感じがしてよく判別できない。

つまり、その声優さんだと思ってエンドロールを見たら違う人物だったってことがよくあるのだ。だけど、ナッシュの時の声はわかる。逆に言うとナッシュの声として出している声と他のキャラとして出してる声との微妙な違いを聞き取れるのだ!すごいでしょ。

ナッシュへの愛よ、愛。





さて、のろけはこのくらいにして、、、、金曜のこの時間はいくら始発駅でもうまく座れない。

一本送らせて座って帰るか考えていた時に変な視線に気づく。いつもの事です。私をじろじろ舐めるように見てやがる酔っ払い社会人集団。どうせ酒をしこたま飲んでヤる事しか考えられないんでしょ。単一思考回路め。

そんないやらしい目で見られるのが嫌で、足首から首元まできっちり隠すパンツスーツで通勤している。逆にこれがそそるのか?まぁスカートなんて何年も履いたことが無いけど。

明日は休みなのに会社の受講型研修で朝からセミナーを受けに行かないといけないから、取り敢えず来ている電車に乗り込んだ。


休日に研修なんてダルい以外の何物でもない。

とにかく休みはゴロゴロしたい。元祖引きこもり女子。来るべき日曜のために、土曜は『ストガー』の前回分をおさらいしないと!なのに丸一日が研修でつぶれる。なんてこった!!


で、どんな研修なんだろ?

電車に揺られながら明日の研修について考える。


配布されたチラシには『管理職セミナー ~VR体験を通して判断力・思考力を培う~』と書かれてある。

あ、私、一応管理職ね。

いくつかあるセミナーの中からこれを選んだ一番の理由は、ゲーム好きなら飛びつくであろう『VRMMO体験』である!ゲームが大好きな私にとって、VRMMO体験できるなんて願ってもないチャンス!まだまだ庶民には高嶺の花のVRMMO。


実際はまだ家庭には普及しておらず、きちんと免許のある法人が個室に機械を用意して、専任の担当者とドクターを付けてのプレイが一般的。

時間貸しのホテルのような感じ。使用制限もあって、一回のプレイ時間は八時間以内、次回プレイまで最低一週間は空けないといけない、十八歳未満は使用禁止などなど。

そりゃ、子供だったら現実と混同しそうだし、面白いからって毎日毎日ゲーム漬けも廃人まっしぐらっぽいし。

でもそこまでリアルなのかな?アニメっぽかったら現実と混同してしまうことなんてないと思うんだけど。私みたいな人じゃなければ。


ま、私はアニメが好きだからリアルよりはそっちの方がいいかな。

そんなことより、かっこいいキャラとか出てくるかな?もちろんリーマンだろうけど。リアルおじさんだったらキモいよな。こっちの言動に対してスムーズに返事とかするのかな?


どこまでVRMMO業界が発達しているのかイマイチわからないからちょっと興味ある。

でもなんで休日なのよ~!

平日に組み込んでくれたら仕事しなくていいのにと思いながら案内の用紙を覗き込む。


ご来場の際の注意事項、えーっとなになに、


★服装は自由です。(体験希望者には着替えを用意しております)


え?体験しない人居るわけ?体験が目玉でしょ?


★セミナー開始2時間前には食事を摂り終えてください。


なんだこりゃ?

健康診断かっつーの。お昼は自腹か?こういう時に支給されるお弁当が楽しみなのに。


そう言えばアジェンダがついてない。

怪しいな。だいたい一日前にこのチラシだけ渡されるってどうよ。普通なら小洒落た冊子とかあるじゃん。

VR体験に惹かれた私が悪いのか、、、。でも取り敢えずは貴重な体験できるんだし文句言わずに終了後のレポートも適当に書いて済ませればいいか。会社のお金だしね、痛くもかゆくもない。


★心臓の弱い方は事前に申し出をお願いいたします。


なに?ドッキリとかあるの?

腐った死体が襲ってくるとか?それはないか。やっぱり上司に叱られたりするのかな?悪質なクレーマーとか?VRだったら迫力半端なさそう、ちょっと嫌だな、、、。トラウマにならないかな。


★体験後には簡単な身体チェックをいたしますので、そのままお待ちいただきます。


やっぱ、調子悪くなる人いるんだ。

乗り物酔い的な?ネットでもその辺の体験談が「吐き気がしてトイレ直行」とか「バンジーした感じ」とか「普通に面白かった」とか「筋肉痛になった」とか、なんだか両極端でさっぱりわからない。


★最後はお食事をしながらのカウンセリングになります。


終わりにご飯かよ!

何よ、カウンセリングって。ディスカッションじゃないの?誰とカウンセリングするの?そもそも食べてる時に聞かれたら味わえないじゃん!!

ちょっとやっぱり怪しくない?しかも気分悪かったら食べられないし!お持ち帰りできるとかか?

今更ドタキャンも出来ないし、腹を括るか。



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