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えーーーー!

クラウンはあの眼鏡を掛けて男性を観察している。

男性は出血があるものの、槍が刺さった状態なのでそこまでは酷くはない。微かに胃の辺りが上下しているので息はあるようだ。

手袋は耐火性か耐魔性か知らないがあまり焼けていないのだが、その上から二の腕辺りにかけてがかなり焼け爛れている。これは結構なモザイクもののショッキング映像だ。まあ私としてはゾンビの方がグロいと思うけど。今ではそのゾンビでさえちょっと引き気味になるくらいで済んでいるのは【★順応】スキルのお陰だろう。


「この男は【罠探知】を持ってないようだな。ファイアウォールを避けたが槍の罠を踏んで刺さったというところか。」


なるほど、あの焼死体から真っ直ぐこちらまでは罠が無い。

クラウンが踏む前から罠が無かったことは私も確認済みだ。でも何故?この階に来るまでにも罠はたくさんあったはずだ。どうして地下四階に来て罠を踏んでしまったのだろう。

クラウンは自分のポーチから小瓶を取り出し蓋を開けると、倒れている男性の鼻の辺りに持っていった。すると男性はびくりと痙攣して目を見開いた。


「ハッ!?マガニー!!、、、っぐわぁぁぁぁっ!!」


クラウンが嗅がせたのは気付け薬のようなものだったのだろう。

目を覚ました男性は勢いよく立ち上がろうとしたので槍の突き刺さった部分に負荷がかかり大いに悶絶した。リディアはもうしゃがみ込んで後ろを向いて耳を塞いでいる。


「おい、布か何か持ってないか?」


クラウンがちらりと私を見る。

布?何に使うのかしら?気の利いたものは持ち合わせていないので、例の油紙の包みを開いて先程リディアが身体を拭いたヌメヌメのタオルを渡した。クラウンはものすごく嫌な顔をしたが、それを受け取ると男性の口に押し込んだ。得体の知れないタオルを躊躇なく掴んで躊躇なく相手の口に突っ込むクラウンもどうかしていると思う。

クラウンはそのまま痛みと驚きでハガハガ言っている男性の前髪を掴んだ。


「落ち着け、大声を出すな。何があった?この状況は何だ?」


それはダメでしょ。

変なネバネバが人体に及ぼす危険を考えてないでしょ。その前に、槍が突き刺さって大火傷してる人に対して声を出すななんて言える?めっちゃ痛いのよ?あんた拷問されたことないでしょ!


男性はクラウンに対して鬼気迫るものを感じたのか、かくかくと首を縦に振りおとなしくなった。

クラウンがそっと手を放す。そして男性のポーチからポーションを探し出すと火傷の後や槍の刺さっている傷口に振りかけた。だが軽度の火傷部分に効いただけで他は大して変わっていない。絶対にしみてるんだろうな、声を殺して堅く目を瞑っているもの。


「あそこで黒焦げになっているのはお前の仲間か?」


クラウンが後方を親指で指し示す。

男性は深く頷き、ぽつりぽつりと話し始めた。この男性の名前はトリス。あの焼死体はマガニーという名の相棒だったらしい。二人はこのダンジョンの地下五階に出現する魔物討伐のクエストを受けていたようだ。Cランク冒険者が二人だけでこなせるクエストなのかと疑問に思ったのだが、比較的障害物の多いこのダンジョンだと【罠探知】のスキルと高めの【隠密】スキルとがあれば案外と簡単らしい。


「じゃあその相方が【罠探知】を持ってたんだな?じゃあ何故本人が罠を踏んだんだ?」

「そ、それは、、、、。」


トリスが顔を歪め口籠った。

痛みに耐えているようだが何かを隠しているようにも見える。トリスはしばらく沈黙を続けていたが意を決したように口を開いた。


「マガニーは黒の目薬を使ってたんだ。俺は気持ち悪いからやってない。」


えーーーー!

あれでしょ、トマホークのダニーが使ってたやつ!全然しみないやつ!クラウンが違法薬物とか何とか言って私から取り上げたやつでしょ!私、あれのお陰で罠がくっきりはっきり見えるようになったと思うんだけど。何でマガニーとやらは踏んじゃったわけ?


「あれは劇薬指定された目薬だぞ。失明どころか最悪死に至るんだ!」

「知ってたさ。でも、、くっ、、、、、、長く使ってるけどあいつは平気だって。でも二、三日前から様子がおかしかったんだ。、、、、、、、誰かに、、、監視されてるとか、、、、変な声が、、、、聞こえるとか言い出して、、、、。さっきも急に俺に斬りかかって来たんだ。、、、、それまではちゃんとここに罠があるから気を付けろとか言ってたのに、、、、」


えーーーー!

何それ?失明とか死ぬとか聞いてないんですけど!成分何なんですかぁ!幻覚幻聴とかってヤバい薬ですかぁ?これは何としてでもクラウンに何が入っているのか聞かなければならない。目がマジになって真っ青になっているであろう私の顔を見たクラウンはため息をついている。私の気持ちは伝わっているはずだ。



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