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過去の教訓

なんだかんだとリディアが足を引っ張るものだから目的地の地下四階に到達するのにも一苦労だった。

そもそも部屋着で戦闘に参加しようとするなんてどうかしている。

ああ、でも元があんな露出度高めの装備だから仕方がないのか。それに素足では歩きにくいだろうとスリッパを渡してあげた私もバカだった。とっておきのかわいいうさぎスリッパがボロ雑巾のようになっている。雑貨屋で一目惚れしたスリッパだったのに。


「そろそろですかね、アーマディロホーン!見つけにくい魔物ではないと思うんですけど。」


リディアがワクワクした目でクラウンに話し掛けている。

なんだ、リディアは討伐対象の魔物のこと知ってるんだ。そりゃ何度かクエストに出てるんだから当たり前か。そう言えば魔物図鑑なんてのもギルドに置いてあったな。読めないから見てないけど。挿絵があるんだったら見ておいた方がよかったかな。

聞けばアルマジロのような姿をした角がある魔物のようだ。だったら“角アルマジロ”でよくない?それに全然見当たらないじゃない。


だんだん通路幅も狭くなってきた気がする。

道間違えてるんじゃないの?あ、でもクラウンは【マッピング】スキル持ちだから間違えるわけないか。何度聞いても欲しくなるスキルだ。

全く手応えのない魔物ばかりでちょっぴり飽きてきたところで、クラウンが静止の合図を出した。口元に人差し指も立てている。

私は過去の教訓を生かしピタリと静止し口を噤んだ。


「おい、【探索(サーチ)】してるか?さっきからずっと動かないやつがいる。その先の開けた場所だ。」


探索(サーチ)】してるかって、ダンジョンに入った時からやってるわよ。

でもクラウンみたいに全階層が丸わかりな訳がない。せいぜい今いるフロアくらいかな。結構な範囲はカバー出来てると思うんだけど。

なるほど隣の部屋くらいの距離かしら、動かない点がわかる。ここに来て動かない魔物とかがいるのだろうか。また触手とか伸ばしてくるんじゃないでしょうね。

心なしか蒸し暑い気もする。ここは慎重に歩みを進めたい。リディアの手を握りそっと様子を窺う。


「誰か倒れてますよ!」


リディアが小声で囁いた。

リディア、めっちゃ目いいのね。あそこまでは結構な距離あると思うんだけど。それにこの広間を横断するように地面が焦げているのも見える。ちょっと熱気が残っているのはこのせいか。


「ファイアウォールの罠を踏んだな。【罠解除】のスキルも無いのによくこのダンジョンに来たもんだな。」


クラウンは辺りを見回しため息をついている。

あそこに倒れている誰かは人なの?魔物が化けてたりとかしない?首筋がチリチリしないから大丈夫なのかな。

周りに他の魔物の気配もないことから慎重に倒れている人物の方へと向かった。


途中、幅一メートルほど地面が焦げているところに黒い炭のような燃えカスがあった。

ところどころが白い。骨なのか?祖母の焼骨を箸で取った時のことを思い出した。ということは誰かが燃えたのだろうか。


「思い切り踏んでるな。あそこにいる奴の仲間か?」


クラウンは落としていた視線を壁にもたれるように座り込んでいる人物に移す。

左腕辺りに火傷を負い、鉄の槍で右鎖骨辺りを貫かれている。その槍は壁にめり込んでいるように見えた。遠目で見ても出血しているのが確認できる。


「ひゃぁぁぁ、無理ですぅ、私、無理ですぅ!!」


リディアはその場で蹲ってしまった。

あの状態はダメで焼死体はいいのか?まあほとんど炭のような状態だから何とも言えないけれど。なんとかリディアを立ち上がらせている間にクラウンは動かない冒険者らしき人物に近づいている。無理矢理リディアを歩かせて後を追った。



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