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口に出して言いません!

どうやら天然ドジっ子巨乳ロリ顔女、もといリディアは十回以上に渡ってクエストを連続失敗しているらしい。

そして次のクエストが失敗すると冒険者ライセンスを剥奪されるというのだ。

そういう制度があったなんて知らないけど、別にいいんじゃない?そんなゴミカス女、使い物にならないでしょ。

今の表現をオブラートに包んでクラウンに伝えたのだが、却下されてしまった。


なんでもリディアは人族には稀な光魔法が使えるらしい。

そして潜在スキルに【回復増加】を持っているのだそうだ。人族における光魔法は貴重なのだが、それ単体ならせいぜい電球くらいの価値しかないらしい。しかしスキルに【回復】系があれば別なのだそうだ。光魔法がただの光源ではなく怪我を治せる回復に転ずるという。クレメントさんはどうにかしてそれを開花させたいようなのだ。


この世界では最初に冒険者として登録したギルドから後天的に回復系スキルを持った者を輩出できると国から色々と恩恵を授かれるらしいので、それを狙っているのだとか。

だったら救護班でよくない?怪我した人を治療するっていう経験を積めば、別に最前線に出て戦う必要なくない?

それも言ってみたのだが、リディアは血を見るのも怖いらしい。

ギルドで人知れず怪我人を治療させていたのだがいつも途中で逃げ出してしまうのだそうだ。


だったら荒療治してみようということで臨時でパーティーに組み込んでもらい、ぶっつけ本番で回復スキルを習得させようとしたのだが、これもまたことごとく失敗に終わったそうだ。

比較的強いパーティーに入った時は何もせずに隠れてばかりで役に立たず、普通のパーティーに入った時はパニックになったリディアの風魔法が暴走しメンバーを傷つけ回復どころではなかったそうだ。組まされた冒険者からもクレームが上がっており、今では誰もパーティーに入れてくれないとか。

ダメじゃん、全然。


きっとクレメントさんはクラウンを焚きつけたんだろうな。

王位継承に優位になりますよとか言われたんじゃないの?クラウン、めっちゃ嫌そうだけど。背に腹は代えられない的なものかしら。


だいたい日帰り出来ちゃうくらいの近場のダンジョンで、クラウンみたいな化け物的超人がいればクエスト成功しかないでしょ。

そして彼女は何も出来ずに帰ってくるって言う結果になりますよね。クレメントさんは取り敢えず連続失敗は回避できると踏んだんだろうか。


何にせよ、クラウンとの冒険デートはぶち壊されたわけだ。

そして辻馬車に三人で乗っている訳なのだが、、、、どうしてあんたがクラウンの横に座ってるのよ。

普通辻馬車は街中で営業活動するらしいのだが、クレメントさんが都合をつけてくれたみたいでギルド前からお目当てのダンジョン近くまで乗せてもらえることになった。

クラウンが最初に乗り込んだのだが、彼女は私に遠慮することなく嬉しそうに乗り込んでちょこんとクラウンの横に座りやがったのだ。もう別にいいけど。クラウンも嫌そうだし。





「リディは風魔法が得意なんです!普通なら《トルネード》止まりだと思うんですけど、リディは《エアキャノン》打てちゃうんですよ♪」


リディアはずっとこの調子で一人しゃべっている。

クラウンは相変わらず遠くを見ながら生返事をしているだけだ。それに得意満面に話してるけど、私そもそも魔法の種類知らんし。

クラウンも無反応だし大したことないのかも。かと言って無視するのはちょっと可哀想だしな。


「じゃあダンジョンで魔物と出会った時の作戦を練りましょうか。そのエアキャノンって効果範囲とか使用回数とかどんなものなの?」

「聞いてください、アリスさん!とにかくですね、ぶわ~んって魔物を巻き上げて追い返しちゃうんです!結構何回も使えるんですよ。」


リディアは両手を空に向かって突き上げてぶんぶん回してる。

答えになっていないではないか!擬音語使うな!“結構何回も“って、数字で言え!はぁぁ、この子いくつなんだろう。計算してやってる様子もないし、天然なんだろうな。





馬車から降りたら降りたで“お尻が痛いですぅ”とか“おじさん、ありがとー!”とか遠足じゃないっつーの!

ダンジョンまで鼻歌交じりのスキップで先に歩いて行っちゃうし。


「わかってるとは思うが、このダンジョンは罠多めだからな。慎重に行動してくれ。」


クラウンがリディアの腕をぐっと引き注意を促す。

なるほど、私の真眼を試そうと思ってこのダンジョンの依頼にしたのね。クラウンはまだ私を信用してないのかしら。それとも羨ましいのかしら?

ゆっくりと歩みを進めるクラウンに私はニコニコしながら肩を軽くぶつけた。

どんな反応をしているのだろうとクラウンの顔を覗き込んだ時だ。


「お二人は仲がいいんですね!いいなー、私もちゃんとパーティーに所属したいな~。」


手を頭の後ろにやって天井を見ながらリディアが大きな独り言を言っている。

あれだけクラウンが言ったのにリディアはもう数メートル先を一人で歩いていたのだ。しかもこちらを見ながら後ろ向きに。

その数歩後ろには赤色の魔方陣が横一列にびっしりと並んでいるのが見える。

マズいと思ったその瞬間、先にクラウンが駆け出し間一髪でリディアを抱きかかえた。しかもしっかりとその足で魔方陣を踏んで無効化している。さすがは超人、やっぱ反応速度とかが桁違いね。あのクラウンのチートブーツ、欲しい!


当のリディアは突然クラウンにお姫様抱っこされたわけだから、“はぅぅぅ”と言って顔を赤らめている。

“はぅぅぅ”て何よ!そんな表現、口に出して言いません!



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