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役者デビュー

「と言う訳で、第一回“湯快ワールド”立ち上げ会議を始めたいと思いまーす!ドンドンドン、パフパフパフ~♪」


よし、テンション上げていきましょー!

ガッツポーズを決めたものの、皆一様に無反応だ。こんな時くらいクラークさんが声を出してはしゃいだらどうなのよ!

しーんと静まり返ってしまった陽だまり亭の私の部屋。

ビジネスホテル張りに小ぢんまりとした部屋の、これまた小さなソファーにはクラークさんとマリーさんが鮨詰めで、ラウンドテーブルの反対側のベッドにはカミルが座っていた。私は鏡台の丸椅子を持って来て入口に近い位置に座っている。


「ハニー、ゆかいわーるどってもしかしてお風呂屋さんの事かな?」

「そうよ!”湯に快い”と”愉快”を掛けてみたの。いい名前でしょ?」

「なるほど!アリスさんのネーミングセンスにはパッションが感じられますよ!」


どこがですか?

スパ施設の名前、パクりまくっただけですけど。ダメだったら消しちゃってちょうだいよね、運営諸君!

取り敢えずはマリーさんの有用性をカミルに見てもらったんだけど、合格をいただけたようで何よりでした。この雰囲気にはまだ馴染めていないようですけれど。

そして今からは仕事内容と従業員の配置箇所や敷地内の屋台の選別、タオルや石鹼などのアメニティグッズの取引先やらを決める会議を開こうと思っている次第なのである。もちろんバス○リンの事もね。


「あの、本当に私でよろしいんですか?オズワルドは私の夫でもあったなので快く思わない人がいると思うんです。営業に支障をきたしてしまうのではないかと心配で。」


おどおどしながらマリーさんが口を開いた。

あのあれでしょ、オズワルドだけ嫌われてました的なやつで解決でしょ?奥さんと子供は逆に気の毒に思われてたってやつでしょ。


「そんなこと気にしないで、マリーさん。私なんか黒い服を着てただけで殺人犯と間違われたんだから。イメージダウンになるって言うならお互い様よ。」


間違われていい迷惑だったのだが、まさかこんなに胸を張って言えるときが来るなんて思ってもみなかった。

でもこれでマリーさんを安心させることができて仕事に取り組んでもらえるのなら安いものだ。そう思って言ったのだが、それを聞いたカミルの様子がおかしい。


「それってどういうことだい?僕は聞いてない!誰がハニーにそんな疑い掛けたの?今からでも僕がそいつらを人生ごと握りつぶしてあげようか?」

「い、いや結構です。もう済んだことなんで遠慮します。」


怖いよカミル。

そんなのもう権力使いまくりでしょ。自警団が潰れたらこの街はどうなるのよ。


「ハニーは優しすぎるよ。まぁそういう所が愛おしいんだけど。」


カミルは何気にベッドから立ち上がり私の傍に跪いて手の甲にキスを落とした。

何するんですか!!不細工だったら殴ってるぞ!そんな顔で見るのは止めろ!とろけてしまうやろ!


「でもそのお陰でこんな素敵なドレス姿を見られてるんだから、ある意味感謝しないといけないかな。ただクラークが贈ったものだってことを除いてはね!」


今度は険しい顔つきで立ち上がりクラークさんを指差している。

何なの?何かの演劇が始まってますか?


「カミル!それは心外だなぁ!アリスさんには感謝の意を込めて贈っただけの事!それより深い意味はないさ!それが証拠に私の色は一つも入ってはいないだろ?親友の彼女を奪うなんて芸当、この私には出来やしないさ!」


演技が眩しいわクラークさん。

どこからかスポットライトが当たってるんじゃないかしら。もう窮屈だからマリーさんがドン引きしてますって。


「一応クラークの言葉を素直に受け取っておくよ。ハニー、今度は僕が買ってあげるからね。」


なんですか、そのポーズは。

二人で舞台役者デビューですか?もう全然話が進まないじゃない。早く二人とも座ってくれ。こんなんじゃマリーさんに逃げられてしまうじゃない。


ようやく二人が落ち着いてくれた時に部屋のドアがノックされた。

せっかく会議を始めようと思ったのに。誰かがルームサービスでも頼んだのかと皆の顔を見回したが違うようだ。取り敢えず出てみるか。


「はぁい、お待ちくださ~い。」


誰だろう、こんな時間に。

思い当たる節もないので恐る恐るドアを開けてみた。



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