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新手の詐欺

南地区の職人街。

昨日清掃活動をしたことによっていい感じにさっぱりしている。やっぱポイ捨てとか許せないもんね。これからも定期的に美化活動を依頼してもらうようにするかな。ロリーズは呼ばないけどね。

何軒か道具らやしき物件を見かけたが、ただ店頭で売っている店と裏や他の敷地に工場(こうば)を設けて生産もしている店とがあるらしい。

ライが泊まらせてもらっている道具屋は店の裏手が工場(こうば)になっているタイプだった。店構えは高架下にあるような金物屋さんって感じ。店先にはバケツや掃除用具などの単価が安いものが並べられており、店の奥に液体の薬系や謎のアイテムが豊富にあった。カウンターの後ろには薬が入っているような箪笥が置かれている。きっと粉や葉っぱそのものが入っているのだろう。


「ダル爺、おはよー!ライ、起きてる?」


うわぁ、子供は無駄に元気だな。


「よお、スイ。おはよう。ライなら工場(うら)の方にいるぜ。」


カウンター奥の暖簾から白髪交じりの男性が顔を出した。

なんだか高級寿司屋の職人のような服装だ。この人がダル爺さんだろうか。言うほどお爺さんには見えない。ふと変な帽子がから覗いている耳が目に入った。先端が尖っている。エルフなのか魔族なのか。


「スイ、そちらのお嬢さんは?」

「あ、初めまして、アリスと申します。スイ君には大変お世話になっております。」


ガン見してたらめっちゃ目が合ったわ。

ペコリとお辞儀をして視線を外したけど、耳を凝視してたのはバレてるわよね。


「アリスはね魔族なんだよ。ダル爺と一緒だね!」


なんですとー!?魔族とな?

普通に生活してるじゃん。嫌われてないじゃん。定住してて店まで出してるじゃん!あの帽子の下には角なんかあったりするのかな?


「へぇ、見ただけではわからないもんだね。それだけ別嬪さんならサキュバスか?俺はまあフォラスの末裔と言っちゃ聞こえはいいが、分家の分家の分家くらいだから大したことはないな。だからこうやってポーション作っておとなしくしてるんだよ。」


ニコニコと人当たりよく話してくるダル爺さんは、ほんとその辺にいるオッサンと変わりない。

魔族っていうだけで斜に構えてしまったが、よく考えれば魔族は悪い奴という先入観がそうさせているだけであって、現実世界で道を尋ねてくる人くらいの感覚でいいのかもしれない。それにしてもやっぱりサキュバスのイメージなのね、私。そして“フォラス”って何?悪魔の種類?血筋?わかんない。分家とか言うんだ、この世界でも。ポーション作りってことは薬草に関する作り手みたいな家系なのかな。


「ポーション作れるなんて凄いですよ。憧れます、生産職って。生産職無双もあるあるですから。」

「むそうあるある?」

「いえ、こっちの話です。それにしてもたくさん取り扱っているんですね。ポーションだけでも微妙に色が違うし、見たことのない素材も多いですね。」


ポーションの小瓶を手に取ってそう言うと、ダル爺さんの眉が一瞬ピクリと動いたような気がした。

何かマズいこと言ったかしら。小瓶をそっと元の位置に戻す。

カウンターから出てきたダル爺さんはキョロキョロ辺りを見渡してからそっと私に近づいてきてこう言った。


「人族だけには全部透明に見えるんだとよ。」


ウソっ?!マジで?

こんなに綺麗なアクアマリンなのに?ひょっとして薄めてこの色になってる?人族相手ならぼったくり出来んじゃないの?ギョッとしてダル爺さんの顔を見た。

私の考えていることがわかったのか、ニヤリと笑ったダル爺さんは自分はそんなことはしないと言った。ってことは他の店ではあるかもって事よね?そもそも作っている人が人族なら濃さはわからないのでは?店頭で並んでいるものにムラがあれば濃い方を買った方がいいって事よね?


「まぁちゃんとした職人なら測定器くらい持ってるだろ。ハブパラなら個々に持たされてるだろうしな。」


へ~、納得。

でもその測定器とやらは一般には入手困難なようで、それはもう店を信じるしかないと言う。私には関係ないが怪しい店では購入しない方が良いということだな。


つまりこの会話はポーションの色がわかるのは真眼のお陰ではないというお知らせみたいなもんね。

でもポーションだけなのかな?人族以外は“これ毒入りです”みたいに色で何でも判断できたりする?そもそも同族の親友はいないし、毒など見たことがないからわからない。まあ私には真眼があるし【マイナス効果耐性】のスキルもあるから、放置でいいかな。でもカミルの指示で攫われたときは毒でやられたんだったけ?耐性より無効の方が欲しかった。


それはさておき、ダル爺さんの店はなかなかに適正価格で商売をしているようだ。

この場合は真眼様が働いてくれているのがわかる。話を聞きながらも店の商品を見ていたのだが、ポップアップしてくる数字とプライスカードの数字にあまり乖離はない。スイとライが認める店だけはあるのかな。

ふと店内のワゴンに伊賀栗のようなウニのような小指の爪ほどの小さな物体が目に留まった。

何の素材なんだろう。触ると痛いのだろうか?ハリネズミみたいに意外と痛くなかったりするのだろうか。キラキラと光るそれに興味本位で触れてみた。


「痛っ!!」


思わず声が出た。

めっちゃ刺さるじゃん!人差し指にはぷくりと血の玉が出来ている。ギルドカードを作った時を思い出して苦笑いしてしまった。取り敢えず舐めておくか。あ、黒モフを助けた時に腹黒に指を押し付けられたっけ。リアルに思い出して顔が赤くなる。

そんな百面相を繰り広げている時にダル爺さんに肩を掴まれた。


「おいおい、嘘だろ?あんた、まさか伝説の魔族、、、、な訳ないか。こんな姿のはずないだろうし、彼の御仁に子供がいるなんて聞いてねえし。ええい、とにかく面倒ごとは御免だぜ!その血の付いた商品も買い取ってくれよ!いいからさっさとカバンに閉まっておくれ!ちゃんと止血して、ニオイをそれ以上漏らさないでくれ!」


え?え?え?え?

私なんか怒られてる?店の商品で傷ついたのは私なんですけど!お客様相談室に言いつけるわよ!なんだかんだ言われてこの伊賀栗モドキを箱ごと買い取らされてしまった。新手の詐欺か?ダル爺さんの機嫌がすこぶる悪い。

微妙な空気の中、先に工場(こうば)に行っていたスイが店の裏口から戻ってきて私の手を引いてくれた。



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