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啖呵を切る

「姐さん、こっちがカレンおばさん。見ての通りドワーフだ、建築専門の。」


見ての通りと言われても、ドワーフが私の思い描いているようなものであればその通りと言うべきだろうか。

小さいくてごついところしか合っていない。ちなみに私のドワーフのイメージは小さい爺さんで顎髭があって偏屈者だ。王都でカミルに紹介された人が正に“ザ・ドワーフ”だと思う。名前なんだったかな。またカミルに聞いておこう。


「何が見ての通りだよ!こんなに可愛らしいドワーフがいるもんかね!それに建築じゃないわよ、芸術よ!」


カレンおばさんは頭の後ろに手を回し、セクシーポーズを取っている。

まあ、漫画とかでよくある返しですわな。それは置いておいて、建築ですか?これは特攻服じゃなくて作業着ですか?色々ツッコミどころは満載なのだが、ロベルトが紹介しようとしていたのはこの人で間違いないだろう。


「あの~カレンさん、はじめまして。アリスと申します。わたくしですね、この度、腕のいい職人さんを探しておりまして、、、。」


何だか胡散臭いセールスマンのようなトークになってしまったが、一応空き家の改築、とある一画をまるまる入浴施設にすることなど主旨は伝えたつもりだ。

話を聞いたカレンさんはぐっと腕組みをし、目を瞑っている。

あの教会の女装家よりもたくましい腕だ。凄い、凄すぎる。いや、腕に見とれている場合ではない。あまりにもざっくりとした話で、カレンさんはきっと金銭面や人手、工事期間の事も気になっているに違いない。


「お代はそれ相応の金額をお支払いいたしますし――」

「何言ってんだい!そういう問題じゃないんだよ!」


はい、まだこっちが話しているのに遮られました。

商談の相手がこんなだとちょっとムカつくんだよね。いるんですよ、現実世界でもこっちが話しているのに被せて話してくる顧客が。相手が話し終わってから意見しろっていつも思う。企画部員は営業さんに同行してプレゼンを任されることが多いのだ。後ほど質問タイムを設けておりますのでって言ってんのに進行を妨げる奴が一定数いるんですよ!いつも笑顔で受け流してますけども!


「と申しますと、、、どういう事かお伺いしてもよろしいですか?」

「まどろっこしい女だね、まったく!ドワーフってのはね、仕事を受けるか受けないかってのはさ、さしで勝負して勝つか負けるかで決めるんだよ!」


なんでいちいちそんな啖呵を切るんですか。

言い方が極道ですよね?そんなしきたりは聞いたことないし、知るわけがないでしょう。もうこの手の下り、要りますか?ひょっとしてこれもサブイベントですか?

どう考えてもドワーフの方が力強いでしょう。どうせ腕相撲とかなんでしょ!負けイベか!

ああ、私は今笑顔だろうか、、、、。


「ち、ちなみに、何の勝負ですか?」

「決まってんだろ、これだよ!やめとくなて言わないでおくれよ。」


カレンさんは手を軽く握って手首を少し上に傾けた。

ジョッキをあおる感じだから飲み対決ってことでいいですよね?腕相撲じゃないですよね?

ロベルトはめちゃくちゃプルプル震えているし、この怯えようはまさか飲み対決ではないということなのか。この世界ではあのジェスチャーは別の意味でもあるのだろうか。


「あ、あ、姐さん!すんません!姐さんには勝ち目はねぇ。こればっかりはあっしにもどうにも出来ねぇんでさぁ。」


直角に腰を折って私に平謝りするロベルト。

何なのよ!何が行われるの?怖いんですけど!勝ち目が無いのに引き合わせたってどういうことよ!

そのままカレンさんに強引に手を引かれ、ディープな南部へと連れて行かれた。



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