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カレンおばさん

陽だまり亭の位置がローブッシュの端の方になるので自警団本部に行くにはメインストリートを縦断していくのがわかりやすい。

受付で腹黒に部屋の鍵を渡し、スイとライを引き連れてメインストリートを歩く。


「やっぱ美人と歩くって気持ちがいいよな~。俺、すんげぇ気分いいわ~。」

「ライ、あとで刺されないよう気を付けてね、あはは。」


無邪気に笑っている二人を見ているのだが、甥っ子を連れて買い物に出かけたことを思い出した。

なんだったら甥っ子よりも若い。実際ならこんな年の子供がいてもおかしくない年齢だ。良縁にさえ恵まれていれば家庭を築いていたのかな。子供嫌いだけど。

だってしゃべるまでは世話が大変そうだし、歩き出したら手が付けられない気がする。スーパーでも食べ物屋でもギャーギャーうるさいでしょ。あれ、苦手なのよね。この子たちくらいまで成長すればまだましかな。

でもやたらと子供には好かれる。寄ってこられたら素っ気ない態度や無視はできない性格だ。全力で相手をしてしまうので、気が付けば子供たちに囲まれている。こんな所でも私の八方美人は発揮されてしまうのだ。だから人付き合いは疲れるし苦手かな。社会人になったらそうも言ってはいられないのだけれども。


ここの店の串焼きは旨いだとか、この屋台の野菜は怪しいだとか、お得であるようなないような話をしながら自警団本部前に到着した。

スイとライは手を振りながら、特にライは名残惜しそうに街の門へと向かって行った。

今日は取り敢えず腕のいい大工さんを押さえておくことにする。息を整え自警団の入口に立った。


「こんにちは!ハイド団長はおられますか?」


嘘くさい笑顔を貼り付けながら元気よく挨拶をした。

みんなが一斉にこちらに目を向ける。


「お!姐さん!ちはっす!今日は団長休みですよ。家族サービスってやつですかね。」


奥からはあのパンチパーマが出てきた。

ズボンに手を突っ込みながら欠伸をかみ殺している。どこを掻いてるのよ!絶対にその手は触らないんだからね!


「あらロベルト、ハイド団長休みなの?なら仕方ないわね。それじゃ、さよなら。」

「ちょちょちょ、待ってくださいよ~。あっしでよけりゃぁ話聞きますぜ!」

「うん、いいや。冒険者ギルドに戻ってクレメントさんに話すから。」

「姐さん!あっしは姐さんの下僕でしょ?」


ロベルトが強引に腕を掴んできた。

そしてすぐさま私の手を両手でしっかりと握り込んだのだ。やめて!その手はさっき股間を直接掻いてたでしょ!引き剥がそうにもがっちりと組まれている手は解けない。

手が!手がぁぁぁ!!

ショックのあまり座り込んだ私の顔にその手が迫ってくる。


「汚いから離れなさいよ!」


思わず蹴り飛ばしてっしまった。

ロベルトは壁に激突したが、受け身のまま“てへへ”と笑っている。もしやこれが手加減というものなのか?かなり勢いよく蹴飛ばしたつもりなのだが、これくらいなら人は怪我をしないのだろうか。いや、ロベルトが頑丈なのに違いない。普通は骨が折れるくらいしますよね?


「はぁ、あんたタフなのね。」

「へへ、一応団員ですんで。」


ロベルトはパシパシとズボンの埃を掃いながら満面の笑みを浮かべている。

もしや痛めつけられて快感を覚えるタイプなのか?


「取り敢えず手を洗ってきてよ。それから話すから。」


え?手?みたいな顔で自分の手を見るロベルトにさっさと行けと命令した。

ちゃんと私も手を洗わせてもらったのは言うまでもない。





「よかったっすね、姐さん。あっしはここいらじゃ顔が効くんですよ。紹介できる人物がいますぜ!」


ここは南支部Aにほど近い職人街だ。

もしや道具屋はこの辺りにあるのではないだろうか。どうりでモーガンとメインストリートを探しても無かったわけだ。


「で、なんで建築が出来るドワーフが必要なんですかい?」

「ローブッシュで建物を改築したり建て直す必要があるからよ。なるべく早く、でも杜撰じゃない職人がいいわ。かなり大きなものを手掛けるから人数が多いに越したことはないわね。」


通りには店先にロープや金盥などの日用品を置いていたり武器と防具の絵が描かれた立て看板があったりするのだが、それよりも大きな倉庫になっているところが目立つ。

中は見えないのだが木材や重機などが置かれているのかもしれない。鉄を打つ音、機織りのような音、色々な音が重なり合ってこの辺り特有の喧騒を醸し出していた。まるでこの街全体が一つの生き物でその呼吸音のように思えてくる。

私は世界に誇れる地域の小さな町工場を思い出していた。


「あれ?ロベルト(クソガキ)、今日もサボリかい?」


なんとも見事な上腕二頭筋の小柄な年増女性に声を掛けられた。

アメリカアニメのブルドッグのような体型だ。上半身が異常にデカくてお尻小っちゃいみたいな。私の胸のあたりまでの身長でちょっと小太りのおばさん。短い金髪にねじり鉢巻きをして、日に焼けた肌で頬の辺りにシミがたくさんあり、ランニングシャツになんともモダンな柄のニッカポッカを穿いて、晒を巻いている。タンクトップではない。ランニングシャツだ。ランニングシャツの上から晒?ちなみにノーブラだ。見ればわかる。


「か、カレンおばさん!ち、違げぇよ!仕事だつーの!」

「へぇ~、美人を連れ回すのが仕事かい?」


カレンおばさんとやらにめちゃくちゃ見上げられている。

なんだったらヤンキーがガン飛ばしをしている感じです、はい。上目遣いで、顎をぐいっと突き出すような感じで。

ロベルトもタジタジになるこの人って何者ですか?!いろいろな意味で目のやり場に困るんですけど。





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