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だってゲームでしょ?

翌朝、一階に下りて行くともうクレメントさんがカウンターの拭き掃除をしていた。

まだ職員揃わないんですか?昨日もここで寝泊まりしたんですか?まさかあのドタバタ劇に勘付いてはいないだろうか。少し探りを入れてみることにする。


「おはようございます、クレメントさん。体調はいかがですか?よく眠れましたか?」

「ああ、おはようアリス。昨日は早めに眠れたよ。まだ雑務は残ってるんだが、オズワルド関係は終わったからな。実務は俺がほとんどやっていたから引き継ぐこともないし、あと屋敷も今売りに出しているところだ。日にちを区切っているから近日中にはまとまった金が入るだろう。最後はあの応接だな。」


露骨に嫌な顔をしている。

余程あの応接室が気に入らないのだろう。よし、この反応ならバレてないはずだ。廊下に面した部屋なのでもしかしたら少しは防音されているのかもしれない。職員の会話が丸聞こえな控室はどう考えてもよろしくない。ぎゃははと馬鹿笑いが聞こえ様ものなら、私ならお客様相談室に即クレームの電話を入れる。これは断じてカスハラではない。


クレメントさんは説明会の開催を二回とも夜の十時からと希望してきた。

明日以降なら分かれてだが全員が参加できるそうだ。場所も一階を使って行ってもらう予定だという。クラークさんは二日後と三日後がいいと言っていたのでそのことを伝えると、どちらにも参加する者がいていいかどうか確認された。王都での職安ギルドの噂もあり両日ともに参加を希望するものがいるようだ。なかなかにローブッシュの冒険者ギルド職員は見所があるではないか。前向きな職員は大歓迎だと了承した。

いい人材を確保できればその分スムーズに開設できる。そんな時間からであればクラークさん以外にも立ち会ってもらえそうだ。新ギルド用のプレートやらはもう休憩室に運んでもらおう。輸送代もバカにならないと思うのでここは有意義に私のスキルを使うことにする。


次に一階の配置について話し合う。

現在ギルド内の掲示板は両カウンターに対して垂直に建てられているいくつかの壁に掛けられてある。これを平行に出来ないかと提案した。

完全な壁にするのではなく、あくまでも衝立みたいな感じでお願いしたい。出来れば一枚ではなく間に隙間があって、両ギルドを行き来できるような、向こう側の受付カウンターが見られるような造りがいいなと思う。その方が来てくれた人がどちらのギルドの依頼も見られるし、並行して受けられるものは無いかと探してもらえて受注率も上がるのではないだろうかと考えるからだ。

この考えにクレメントさんも賛同してくれた。またお互いをライバルに見立てた競争が出来るのではとでも思っているのだろう。でも犬猿の仲にはなってほしくない。あくまでもお互いを尊重しつつ高め合ってもらいたいのだ。そこのところは釘を刺しておく。


衝立や依頼の配置なんかはクレメントさんに任せることにした。

工期だが壁を取り壊すくらいなら閉館から朝方までの間に出来そうなので、説明会が終わった翌日の夜から取り掛かってもらうことにした。何せ王都ではビックリするくらいの速さで完成したのだから、それくらい余裕だと思う。だってゲームでしょ?造っているところはそんなにはっきりとは見ていないのだけれども魔法とかですっと出来ちゃうんじゃないの?


ある程度の打ち合わせは出来たと思うし、取り敢えず朝ご飯が食べたいので宿屋に戻ることにした。



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