お風呂屋さん
「あんたね~、綺麗じゃないって言うけれどぉ、そんなに不衛生ではないわよぉ。子供たちには毎日身体を拭かせてるんだから~。ちなみにあたしは毎日きちんと行水してるのよん、淑女の嗜みねん。それにちょぉっと古ぼけた建物が多いけれどぉ、ホントはみぃんな綺麗好きなのよぉ。よそから来たチョイ悪的なやつらが~ポイ捨てとかすんのよぉ、嫌んなっちゃう。」
なんかだるいしゃべり方だなぁ!
怒ってませんよ、イライラもしてませんよ。はよしゃべれって思っただけです、はい。ちゃんと顔は能面のように無表情を貫いていますからご心配なく。
「行水って、お風呂じゃないんですか?」
三人ともに“は?”という反応だ。
行水って、桶に水入れてバシャバシャって感じですよね?風呂キャンが流行っているのか?いや、冒険者なら数日風呂に入られない者もいるだろう。でも住む家のある者は風呂くらい入るのではないのか。秀吉だって下水道を整えているのだからこの世界にだって下水施設は整っているはずだ。街ではところどころで井戸を見かけたが、カミルの屋敷も腹黒の宿屋もきちんと風呂はあったし、蛇口もあったし、何ならトイレは水洗だった。
「風呂なんて貴族か富裕層にしかあるわけないだろ、男なら黙って行水よ!」
「何えらそうに言ってんのよぉ、アンタそんなんだから女にモテないのよぉ!」
ヤンキーの喧嘩のように顔面同士を近づけて激しく罵り合う二人。
横では急にハイドさんが腕を上げて自分のニオイを嗅ぎ始めた。これは風呂入ってないな。でもこの人たちからはツンとした臭いはしない。現実世界でも異常に聴覚・嗅覚はいい上に、腹黒の血のお陰で更にパワーアップした私なら臭かったなら直ぐにわかるはずだ。冒険者ギルドの受付フロアは申し訳ないがちょっと臭った気がする。
「じゃぁ、風呂屋作ったらよくないですか?お風呂屋さんがあったら、あなたたち行きますか?」
こんなに簡単にテコ入れ事業が見付かっていいのかとは思うが、今までの会話から思いつくものはこれしかない。
石鹸やシャンプーの相場、そもそも水道代などは払っているのかなどを詳しく聞いた。そんなスーパー銭湯的なものがこのゲームの世界で造れるのかと言われれば疑問があるものの、作ろう系なら風呂屋の設計図入手やこの場所にカーソルを合わせて配置を決めるとか和風とかヨーロピアン風とか適当にボタン選択して決定キーを押せば出来るくらいなんだからいけるんじゃないの?だいだいこれ、RPGでしょ?造る要素に手間をかけますかって話よ。カフェも何とかなったんだからスーパー銭湯も何とかなるでしょう。時代にそぐわないのなら、また制作側で削除するなりなんなりしてくださいなって話。私はこのゲームをやってあげているんだから。
大収穫に満足した私は取り敢えずクラウンに一報だけでもしたかったので陽だまり亭に向かうべく先生二人と子供たちに見送られながら教会を後にした。
ちなみにオージンは女装家でチィスはゲイらしい。チィスのおっぱいは羊の毛を柔らか素材の革袋に詰めたものだそうだ。そんな情報要らないんだけど。
早く帰りたいのに二人からどんな化粧品を使っているのだとか毎日の肌の手入れ方法だとか化粧の仕方だとか質問攻めにあって挙句の果てには髪や肌を触られまくった。もちろん触ってきたのはチィスだけなのだが。ちょっと鳥肌が立ったので、テリーをモフりまくって心を落ち着かせたのだけれども。
もう少しいろんなところを案内してほしいのでハイドさんにも陽だまり亭に一緒に来てもらった。
クラウンはいるかと受付に尋ねたのだが、今朝ボルボと一緒に出掛けてしまったらしい。夕方までには戻るそうだ。帰ってきたら私が例の件で時間を取ってほしいと言っていると伝言をしてもらうように頼んでおく。早めにクラウンの身柄を押さえておかないと多忙がゆえに後回しにされかねない。まあクラウンも私の案件が最優先事項だと判断すると思うのだが、ボルボや女狐が横槍を入れてくる可能性はある。それになんたら男爵との面会を取り付けてもらう必要もある。あー、忙しくなりそうな予感。
ついでで申し訳ないのだがモーガンの様子も見てきた。朝よりは顔色がよかったが眠っていた。お昼は重湯を口に出来たらしい。また夜、ギルドに行く前にでも顔を出すかな。




