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どうしよう!!!

「モーガンさんですか?」


モーガンがその問いかけに振り返った瞬間、見知らぬ冒険者がいきなり突っ込んできたのだ。

ザシュッ、ザシュッという音と同時にモーガンの身体も揺れる。三度目にその音が聞こえた時モーガンの身体が崩れ落ちた。抵抗したモーガンによって冒険者のフードマントが剥がれる。髭面で褐色の素顔を晒した冒険者は狂気に満ちた目で血の付いた短刀を握りしめたまま立っていた。


「モーガン!!!」


喉が裂けるくらいに叫んだ。

訳が分からない。目の前でいきなりモーガンが刺されたのだ。腹からはまだ血が流れ続けている。咄嗟に何をするべきかわからず手で傷口を押さえることしか出来なかった。


どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!


気付けばあのSE音が鳴り響いている。

モーガンは目を閉じたままだが息はある。自分のポーチから今まで採った薬草を取り出しモーガンの口に放り込んだり、傷口に押し当てたりしてみた。こんなの効くはずがない。今度はモーガンのポーチに手を突っ込み、ポーションらしきものを片っ端から飲ませたり振りかけたりしてみた。


「そんなことしても悪戯に苦しませるだけだぜ、とっとと退場してもらおうじゃないか。お前、デリヘルなんだろ?記念に一発やってから帰ろうぜ。」


ギラギラした眼つきの髭面男は私に目線を合わせるように片膝をつき、ニヤニヤしながら短刀を逆手に持ち替えた。

今しかない。髭面男が右手を振り上げると同時に腰を浮かして鯉口を切り、刀を抜いた。


“ザクッ”


勢いよく振り抜いた刀は髭面男の手首を遠くへ飛ばした。

そのまま刀を振り下ろして髭面男の太腿に突き立てる。軽く息を吐き出し、いったん殺意を押し殺した。


「ああぁぁぁああああぁぁぁ!!!」


腿を刺されてようやく己の右手首が無いのに気付いたのか、髭面男は左手で右手首を押さえて叫び倒している。

そんな叫び声もSE音に混じるただの雑音にしか聞こえない。少し押し下げるようにして肉を裂きながら刀を抜いてやるとゴロゴロと転がって私から距離を取った。


「お、お、女が強ぇえなんて聞いてない!くそっ、誰か!!」


誰もいないだろ。

さっきまでこの広間にいた冒険者は消えていた。きっとこの男に脅されてこの場を去ったか殺されたに違いない。惨めたらしく這いつくばって私たちが入ってきた通路へと向かう髭面男の背中を思い切り踏んでやった。

ギャッと呻くような声が漏れる。少し強く踏み過ぎたか。髭面男は仰向けになって腕で顔を覆い、私を罵倒しながら必死で抵抗している。本当に雑音だな。髭面男の腹に一発蹴りを入れて、ウエストポーチの中身を漁った。三本のアンプルのうち二本はポーションのようだ。一本は見た目の色が毒々しいので違うだろう。そいつは踏みつぶしてやった。


髭面男に背を向け、すぐにモーガンに駆け寄って飲ませる。

半分は傷口にかけた。今、彼にしてあげられることはもうない。息があるだけありがたいと思えた時、SE音も気にならない程度には落ち着いてきた。あとはあの男の始末をするだけだ。

私は再び抜刀し、まだ逃げようと試みている髭面男の方へゆっくりと近づいた。逃がすわけがないだろう。



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