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母の病気を治すため、森に薬草を採りに行く話  作者: さまっち
第三章 ロマールの町
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17 北の洞窟

 洞窟に入るとそこは真っ暗だった。

 冒険者たちはまずランタンに明かりを付ける。

 僕もバックパックから取り出したランタンに明かりを付けた。

「おそらく魔物はそうそう出ないが、念のため警戒は怠るな」

 レオナルドが言い、他のみんなが頷く。

「ルーク。昨日マッピングした紙は用意してるな」

「ああ、ここにある」


 レオナルドの言葉にルークは答える。

「よし、それじゃ進むぞ」

 僕たちは洞窟内を歩き始めた。

 ランタンに照らされた洞窟内が何とも不気味だ。

 通り道の真ん中に松明立てが等間隔で並んでいる。


 本来なら鉱石の採集に訪れた人たちが、松明立てに火の点いた松明を立てているのだろう。

 今は使われていないそれらを見ながら先へと進む。

 しばらく進むと、前方に明かりが見えた。

 松明の明かりだ。

 カールが言うには確か分かれ道の所だけ松明を灯しながら進んだんだっけ。


 僕がカールの言葉を思い出しているとレオナルドが言った。

「分かれ道だ。ルーク。道の確認を頼む」

「分かった。そこを右だ」

 ルークの言葉に従って右の道へと進む。

「分かれ道の直後は特に魔物を警戒してくれ。進まなかった方の道から来た魔物に背後を取られる可能性も無いわけじゃない」

「分かりましたわ」

 後衛のアリシアが答える。


「それにしても、あの松明は本当に一日中燃えてるんだな」

 レオナルドの言葉に僕は少し疑問を抱く。

 僕は声を潜めて後ろにいるカールに話しかける。

「ねえ、カール。あの松明は町の人じゃないと安く買えないんじゃなかったっけ?」

 僕の疑問に答えたのはカールではなく、その隣にいたアリシアだった。

「特別に町長から安く購入する許可を頂いたんですわ」


 そういってアリシアは、にこりと微笑む。

 なるほど。そういう事もあるのかと僕は納得する。

 その後は順調に洞窟内を進んだ。

 分かれ道のたびにレオナルドがルークに道を確認し進んでいく。

 レオナルドが言っていたように魔物は全然出ないままだ。

 このままダークフラワーのいる場所まで魔物にまったく遭遇せずに行けるかと思ったけど、そう甘くはなかった。


 ある地点まで来たところでレオナルドが言った。

「警戒しろ。魔物の気配がする」

 僕たちに緊張が走る。

 魔物の姿よりも前にまず悪臭が漂ってくる。

 吐き気をを催すような匂いだ。

「前衛は戦闘準備。中衛はランタンで明かりの確保。後衛は待機しておけ」


 レオナルドとフェインが戦闘準備に入る。

 二人は足元にランタンを置いて剣を構える。

 僕とルークはランタンを高く掲げてなるべく遠くまで明かりが届くように配慮した。

「この匂い。おそらくゾンビだ。まだ残っていたんだな」

 洞窟の奥の暗闇からひたひたと足音が聞こえてくる。

 そしてランタンの光に照らされた通路の奥からそいつは徐々に姿を現した。


「ひえー」

 カールの悲鳴が後ろから聞こえてくる。

 確かに腐った死体が歩いてくるその様子は恐怖を抱かせるのに十分だ。

 だが僕とカール以外の四人は慣れているのかまったく動揺した様子を見せない。

 落ち着いてゾンビが近づいてくるのを待っている。

 ランタンの明かりの向こうから二体目のゾンビも姿を見せた。

「一体目は俺がやる。二体目はフェインに任せる」


 ゾンビを十分に引き付けてからレオナルドが手に持つ大剣で切りかかった。

 速い。

 大剣を振り回しているとは思えない速さだ。

 大重量の大剣がゾンビの首に吸い込まれていく。

 そして首から上を一撃で切り落とした。


 切り落とした頭が洞窟内に転がる。

 それでもゾンビの体は歩みを止めずレオナルドに組みつこうとするが、次の瞬間にはレオナルドに蹴り倒されていた。

 倒されたゾンビはまだ動いているが、起き上がる事が出来ないようだ。

「雑魚が」

 レオナルドが吐き捨てる。


 一方、フェインの方も動き出していた。

 右手に標準的な片手剣、左手には盾を持ち、剣を構えながら距離を詰める。

 そしてレオナルドと同じようにゾンビの首めがけて切りかかった。

 攻撃が深々と命中する。

 ゾンビの首が切断されるかと思ったが、完全に切断するには至らなかった。

 しかしフェインは焦らずもう一度ゾンビの首に攻撃を叩き込んだ。


 今度こそ首は切断され頭が転がった。

 あとはゾンビの脚に切りかかり、ゾンビがその場で倒れた。

 倒れたまま手足が動いているが、やはり立ち上がることは無かった。

 その後、レオナルドとフェインがそれぞれ自分が切り落としたゾンビの頭を足で転がしながら、本体の近くまで移動させた。

 それに気付いたのかゾンビが頭の方に手を伸ばすが、届かない距離だ。


「アリシア、浄化を頼む」

「分かりましたわ」

 アリシアが前に出て、呪文を唱えてからターンアンデットの魔法を使った。

 するとゾンビの体は光とともに消え去った。

 ゾンビの一体目と二体目が倒れている場所に少し距離があったので、まずは一体目しか消えなかったが、すぐにもう一体のゾンビもターンアンデットで浄化した。

 すると辺りに漂っていた異臭も浄化されて匂いが無くなった。


「終わりましたわ」

 アリシアが告げて後衛に戻る。

 レオナルドとフェインが床に置いていたランタンを拾い、その後、陣形を整える。

「それじゃ、先に進むぞ」

 レオナルドの言葉に皆が頷き、洞窟内を進む。

 歩きながら僕はアリシアに話しかけた。


「この洞窟はアンデットが出るんですね。ゾンビは死体がないと生まれないって聞きますけど、元々はここで犠牲になった町の人なんでしょうか?」

「間違いなくそうですわね。ダークフラワーが現れて、洞窟内の魔力濃度が上昇した結果、魔物が活性化して狂暴になったり、死体がアンデット化したりしたのでしょう」

「ということはゾンビは元々この洞窟内に生息していた魔物ではない、ってことですよね」

「そうね」


 本来、生息していた魔物はどんな魔物なのだろう。

 少し気になったのでカールにその事を聞いてみる。

「ねえ、カール。この洞窟には元々どんな魔物がいたの?」

「この洞窟の魔物? 巨大モグラだね。巨大モグラは大人の腰くらいの大きさで鋭い爪で攻撃してくる魔物だね。足が短くて速く走れないから簡単に逃げきれる魔物だよ」

「巨大モグラが狂暴化して町の人に被害が沢山出たのかな?」

「いや、最近になって急にスケルトンが出るようになったみたいで、みんなスケルトンにやられたみたい。それもダークフラワーの影響なのかな」

「そうでしょうね」


 アリシアが同意する。

 その時、ルークが僕たちに告げた。

「お喋りはその辺にしておくんだな」

 少し緊張感が欠け過ぎたか。

 僕がそう思って反省していると、さらにルークが続けた。

「そろそろダークフラワーがいた場所だ。奴が移動をしてなければそこで戦闘になる。気を引き締めておけ」

「分かりました」


 ダークフラワーとの戦闘を間近に控え、緊張感が増す。

 何気なくカールの顔色を窺うと、青白い顔をしていた。

「カール、大丈夫? 怖くない?」

「怖いのは怖いけど。でも僕がやらなきゃ」

「そうだね。頑張って、カール」

 僕がカールを応援していると、レオナルドが足を止めた。


「ルーク、念のため聞くが。ダークフラワーがいたのはあそこで間違いないか」

 レオナルドが前方を指さしてルークに聞く。

 レオナルドが指さした方向に僕も視線を向けるとまず目に入ったのは赤々と燃える松明だ。

 本来分かれ道のところで松明を使っていたが、その松明の周辺に分かれ道は確認できない。

 代わりに前方に少し広い空間が広がっている。


 広い空間自体はここまでにも何度かあったが、前方の空間はよく見ると床に根のようなものが走っている。

 あれがダークフラワーの根なのだろうか。

 松明の火が照らす位置にはダークフラワーの本体が確認できない。

 僕が考えていると、ルークが告げた。


「ああ。間違いない。あそこが昨日、ダークフラワーと戦った場所だ」

「だよな。おそらく奴は移動してないだろう。移動するとせっかく張った根が無駄になるからな。それじゃ突撃前に最終確認をするか」

 そういって僕たちは最後の確認を行う。

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