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母の病気を治すため、森に薬草を採りに行く話  作者: さまっち
第三章 ロマールの町
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16 北の洞窟前

 町を出た僕たちはルークに連れられて北へ向かう。

 歩きながら僕はルークに少し気になっていたことを尋ねる。

「どうしてルークさんだけ町に戻ってきてたんですか。他の方はどうしたんですか?」

「俺だけが戻ってきたのは、それがリーダーの指示だからだ。仲間は洞窟の前で待機している」

「どうしてみんなで帰ってこなかったんですか? 確かカールをパーティから脱退させる時はみんなで帰ってきてましたよね。その時ちょうどすれ違ったので覚えてます」


 僕が告げるとルークは少し困ったような表情を浮かべた。

「リーダーが何を考えて、俺だけに町へ戻って調査報告をさせたり、カールを呼び出したりさせたのか、正確な所は分からない。とりあえず言えることは俺はシーフという職業柄、パーティ内の面倒ごとを良く押し付けられる立場にあるということだ。今日のこともリーダーが面倒に感じたんだろう。もしかしたら一度、役に立たないとクビにしたカールを再び呼び戻すことに抵抗を感じていて、自分で呼び戻すことを嫌がったのかもしれん。俺の想像だから事実は分からないがな」


 なるほど。

 ルークは想像と言うが、それなら確かに納得出来ると僕は思った。

 ルークの言葉を聞いていたカールも呟く。

「僕はもうクビになったことはあまり気にしてないけどね」

「そうなの?」

 ギルド職員に愚痴ったり、結構ダメージを受けてた気がしたけど。

「そりゃ最初は憤りが強かったけど、それからいい事もあったしね。だから大丈夫。それよりこうして頼ってもらえて誰かの役に立てることが嬉しいんだ」

「そう言ってくれると、こっちとしては助かる」


 ルークが言う。

 それからしばらくは黙って歩き続けた。

 そして冒険者たちが待機している場所までやってきた。

 頬に傷のある大男が、僕たちを見ると告げた。

「なんでガキが二人もいるんだ。カールを連れてこいとは言ったが、他のガキをスカウトしてこいとは言ってねえぞ」

 なんかいきなり前途多難な感じのことを言い出した。


「ダークフラワー討伐に参加希望との事だ。ここまで連れてきたが、実際に討伐に連れていくかどうかはお前が決めればいい、レオナルド。俺はリーダーの考えに従うつもりだ」

 レオナルドというのが大男の名前みたい。

 レオナルドが僕に視線を向けた。

 歴戦の冒険者って感じの面構えで、ちょっと怖いけど格好いい。

「お前、名前は?」

「レインです。旅に出たばかりの駆け出しの剣士ですが、よろしくお願いします」


 まずは自己紹介だ。

 僕は頭を下げながら告げた。

 頭を上げてレオナルドの方を見ると苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

「つまりは初心者か。あのな、俺たちは遊びに行くんじゃないんだ。お前みたいな初心者を連れて行って何の役に立つっていうんだ。初心者じゃ足手まといにしかならない」


 やばい。

 いきなり自己紹介に失敗したっぽい。

 初心者認定されてしまった。

 まあそれは間違いではないけど、もっと魔物と戦った経験を交えながら話すべきだったかも。

「初心者かもしれませんが、魔物との戦闘経験はあります」

「どんな魔物だ。まさかブルービートルとか言うんじゃないだろうな」


 ブルービートルとは甲虫型の魔物で、発見されている魔物の中では最弱に位置する。

 分類上魔物とされているが、もはや手のひらサイズのただの虫である。

 動きは非常に遅く、たまに飛んで相手に近づき、噛みついて攻撃する。

 噛まれると痛いが、毒を持っている訳でもなく死ぬことはない。

 そんな魔物だ。


「ブルービートルではないです。そうじゃなくてトレントとか……」

「トレント? あの森にいる奴か。ブルービートルほどじゃないが雑魚には違いない。他には?」

「同じ森で。魔獣と戦いました」

「魔獣だと? お前、それはひとりで戦ったのか? いやそんなはずねえか。初心者が戦って勝てる相手じゃねえ。それは何人で戦ったんだ」

「父と二人です」

「二人……。それは少ないな。二人で魔獣は倒せたのか?」


「はい。何とか倒せました。父のおかげですけど」

「……なるほど」

 レオナルドはそう言って少し考え込むように黙った。

 表情も真剣なものへと変わっている。

 僕のことを多少は認めてくれたのだろうか。

 それなら嬉しい。

 黙っていたレオナルドが再び口を開く。


「他に戦ったことがある魔物はいるか?」

「つい最近、ゴブリン三体と同時に戦いました」

「それも父親と一緒にか?」

「いえ、それは僕一人で戦いました」

「三体とも倒したのか?」

「はい。倒しました」


「ふむ。ダークフラワーの討伐に参加したいというだけあって、確かにただの初心者では無いようだな。うーむ、どうしたものか」

 レオナルドが考え込んでいると、それまで話を聞くだけだった唯一の女冒険者が口を開いた。

「良いではありませんか、レオナルド。連れて行って差し上げれば。二人で魔獣と戦って、あまり戦闘に貢献していないとしても、生き残っただけでも凄いことですし、ゴブリン三体を同時に戦って倒す初心者なんて、そうはいませんわよ」


「確かにそうだが、豪運を発揮しただけという可能性もあるだろ、アリシア」

 アリシアと呼ばれた女冒険者が頷き、そして告げる。

「それならダークフラワー戦でもその豪運を発揮してもらいましょう」

 レオナルドが最後の一人の男に視線を向けて話しかける。

「フェインはどう考えてる。連れて行っても構わないか」


「俺は構わん。守る対象がもう一人増えた所で問題はない」

 フェインはカールが守備型の戦士と言っていた人だろう。

 守備力が高そうな鎧を纏っている。

 ダークフラワー戦ではカールを守ることが戦いの主軸になるので、フェインの役割が一番重要そうに思える。

「そうか。よしわかった。レインといったか。お前も連れて行ってやる。ただ無茶はするなよ。今日初めて会った奴でも死なれたら寝覚めが悪いからな」


「ありがとうございます」

 僕はもう一度頭を下げて礼を言った。

「よしそれじゃ、人も予定より一人増えたし、作戦会議と行くか」

 その後は洞窟内での陣形の確認を行う。

 前衛がレオナルドとフェイン、中衛がルークと僕、後衛がアリシアとカールに決まった。

 これが洞窟内を移動する時の陣形だ。

 ちなみにダークフラワーがいる場所は少し広くなっているらしく、陣形を前衛二人、後衛四人になって戦う。


 中衛だったルークと僕が、後衛の両脇に移動する形だ。

 それからダークフラワーの攻撃手段についても話し合う。

 基本的な攻撃はダークフラワーの触手による攻撃だ。

 ダークフラワー本体からの触手と張り巡らされた根から生えている触手の二種類があるようだ。

 本体からの触手攻撃は激しいが、根からの触手攻撃はそれほど頻繁ではないらしい。


 本体からの触手攻撃は前衛の二人が全力で対処し、根からの触手攻撃はカール以外の後衛で対処してほしいとのことだ。

 カールはもちろん魔法を唱えることに全力集中。

 ダークフラワーは火に弱いらしく、エクスプロージョンが使えるなら一撃で葬れるだろうとの事だ。

「カールは責任重大だね」


 僕が呟くと、カールは少し青い顔で「ははは、そうだね」と苦笑い。

 大丈夫だろうか。

 ダークフラワーを前にして頭が真っ白にならなければいいが。

 とても心配だ。

 でも任せるしかない以上、カールを信じるしかない。

「ダークフラワー討伐の作戦は以上だ。何か質問があるやつはいるか?」


 僕は気になることを質問する。

「ダークフラワーとの戦いについては分かりましたけど、それ以外の道中での魔物との戦闘はどんな感じで戦うんですか?」

「道中の魔物は洞窟内を移動する時の陣形でいいだろう。雑魚は基本、俺とフェインの二人が対応すればいい。昨日もそうだったしな。ちなみに昨日、目にした魔物は全て狩りつくしたから今日はそもそも魔物が出てこない可能性が高い。魔物が増えるのもある程度の時間が必要だからな」


 洞窟内がどれくらい広いかは分からないが、それでも一つのパーティが一日で魔物を狩りつくすのは凄い事じゃないだろうか。

 僕が驚いているとレオナルドが続ける。

「まあこの地域は強い魔物なんて基本出てこないからな。俺たちの敵じゃない。洞窟の奥に現れた強個体もダークフラワーじゃなきゃ俺たちだけで何とかなった可能性が高い。俺たちは本来もっと魔物との戦いの前線に近い所で活動してるからな」


「そんな凄腕の冒険者がどうしてこの町にいるのか聞いてもいいですか?」

「この町の近くの町に、引退した魔法使いの仲間を見送りに来ていたんだ。世話になった奴だし、奴の故郷も見てみたかったからな。それで魔法使いと別れた後にギルドに行くと緊急クエストが出ていて、それでこの町の事を知ったんだ。かなりの高額の報酬を提示していたからな。金に釣られて、のこのことやってきた訳だ」


 なるほど。そんな事情があったのか。

「報酬が高いから急いでこの町まで来たが、あまりぐずぐずしてると、他の冒険者もやって来るかもしれん。聞きたいことは以上か? 他にないなら早速洞窟に向かうぞ」

「もう、大丈夫です。洞窟に向かいましょう」

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