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母の病気を治すため、森に薬草を採りに行く話  作者: さまっち
第三章 ロマールの町
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14 湖

 翌朝、宿のベッドで目を覚ました僕は今日も朝の鍛錬をするため宿を出た。

 昨日と同じ場所を確保して鍛錬を始める。

 内容も昨日と同じものだ。

 まずは筋トレを行う。

 腕立て、腹筋、背筋と続け、終わったら剣の素振りだ。

 剣の素振りをしていると今日もミーシャが起きてきた。

 宿を出て僕の元まで一直線にやってくる。


「おはよう。レイン」

「おはよう。ミーシャ」

 僕は素振りの手を止めてミーシャに挨拶を返す。

「今日も見てていい?」

「いいよ」

 僕は素振りを再開する。

 集中して一通りの型の素振りを行った後に、僕は剣を下ろす。

「お疲れ様」

「ありがとう」


 ミーシャと一緒に宿の部屋に戻り、そこで運ばれてきた朝食を食べる。

 昨日の夕食時にも思ったけど、昨日のお昼に食べたシチューに比べると質が落ちると感じてしまう。

 なんだか物足りない。

 一度美味しい物を食べてしまうと舌がその品質を求めてしまうのかも。

 別にグルメを楽しむため、旅に出たわけではないので、良くない兆候だ。


 毎日あのレベルのものを食べるのは止めたほうがいいかも。

 食事を終えると冒険者ギルドに向かう準備をする。

 僕はバックパックを背負い、ミーシャは昨日買ったかばんを手に持った。

「じゃあ行こうか」

「行きましょう」


 僕たちは宿を出て冒険者ギルドに向かう。

 約束の時間は朝の鐘が鳴る頃としてある。

 村でもこの町でも鐘は一日に三度鳴り、労働の開始時間、お昼の時間、労働の終了時間に鐘が鳴る。

 これらは目安で鐘の通りに労働しなきゃいけない訳ではない。

 朝の鐘より前に働く人もいるし、夕方の鐘の後も働く人はいる。

 職種により色々だ。


 冒険者ギルドには朝の鐘が鳴って少しして到着する予定だ。

 昨日と同じような時間でもある。

 冒険者ギルドに向かい歩いていると町の鐘が鳴った。

 もう少しで到着する。

 さらに歩くと冒険者ギルドが見えてきた。

 カールはもういるだろうか。

 僕たちは冒険者ギルドへ入った。


「おはよう、レイン、ミーシャ」

 どうやらカールはもう来ていたようで、冒険者ギルドに入るとすぐに声をかけてきた。

 僕とミーシャも「おはよう、カール」と挨拶を返す。

「今日もよろしくね」

「こちらこそよろしく。それじゃ早速、薬草の採集クエストの受付を済ませちゃおう」

 僕たちは昨日と同じギルド職員に声をかける。


「おはようございます。今日も薬草の採集クエストに行きたいんですけど」

「おはようございます。レインさん。薬草の採集クエストですね。西の草原地帯と南の湖周辺がありますけど、どちらになさいますか」

 そういえば二種類あるんだった。

 どちらにしよう。

 僕が少し迷っていると、ミーシャが「私は湖の方に行ってみたいわ」と主張した。

 僕はカールの意見も聞こうと思い話しかける。


「カールもそれでいい?」

「僕はどちらでも構わないよ」

 僕も特にどちらがいいとかは無いので、ミーシャの希望を採用する。

「じゃあ南の湖周辺の方でお願いします」

「かしこまりました」

 その後、クエストを受けるための手続きを僕とカールの二人分行う。

 クエストの詳細説明は省き、麻袋を用意してもらって準備は完了した。


「それでは無事の帰還をお待ちしております」

 そうして僕たちは冒険者ギルドを出て、湖へと出発した。

 町を出てコンパスを見ながら南に向かう。

 歩きながら僕はふと思ったことをカールに尋ねる。

「湖ということは、水棲の魔物とか出たりするのかな?」


「稀にサハギンが出るらしいよ。僕としては出てほしくないけど。もし出たとしても湖から離れたら追ってこないらしい。後はデビルフィッシュが泳いでいることもあるらしいから、湖にはあまり近づかない方がいいよ。まあ豪胆な冒険者が湖を泳いだっていう話を聞かないこともないけど。泳いでる最中に襲われて命からがら陸まで逃げたっていう話も聞いたことあるから、やっぱり湖には入らない方がいいと思う。どんなに強くても人は水中じゃ戦えないから。命懸けの行為になっちゃう」


 確かにそれなら湖には入らない方が良さそうだ。

 僕がそう納得しているとミーシャが言った。

「でも景観を楽しむくらいは出来るわよね。私、湖って一度見てみたかったの。村の周辺には無かったし、とても綺麗って聞くから」

 確かにそれなら楽しめそうだ。

 あまり意識してなかったけど湖に着いたら僕も景観を楽しもう。


 しばらく歩くと前方に湖が見えてきた。

 大きな湖で周りを一周するだけでも結構大変そうだ。

 僕たちはさらに歩いて湖に近づいた。

 そして湖から距離をとって僕は背負っていたバックパックを下ろした。

 ミーシャも手に持っていたかばんを地面に置く。

 その様子を眺めていたカールが言った。


「結局、レインは荷物を持ってきたんだね。宿の中で盗難には合わないって教えたのに」

「うん。やっぱり心配になっちゃって。盗難に合う可能性はゼロとは言えないと思うし。旅の資金がバックパックに入ってるから、どうしても心配になっちゃう。盗られたら旅を続けられないし。用心して足りないことはないと思う」

「せめてすぐに使わない衣類とかはバックパックから出して宿の部屋に置いてきたらって私も言ったんだけど、全部入ってるよね」


「中身を外に出して部屋に置くと一部が盗られたとき、すぐに気付けない可能性もあるからそれが心配で」

「さすがに心配し過ぎじゃない?」

 カールはそう言うが、僕としては心配なものは心配なのだ。

「そうかな。まあでも僕、バックパックを背負うことはあまり苦じゃないから。日頃の鍛錬みたいなものさ」

「鍛錬ねぇ。まあいいけど」


 カールが少し呆れたように言う。まあ自分で言っておいて何だけど、あまり鍛錬にはならないと思う。

 とりあえず荷物の話は置いといて、僕は薬草の採集を始めた。

 昨日ミーシャに教わった薬草を今でも覚えてるので、それを探し始める。

 するとミーシャが僕に言った。


「ねえレイン。もう少しだけ湖に近づいたら駄目かな。もう少し近くで湖を見たいの」

 僕は採集作業を止めてミーシャに振り向き、答えた。

「これ以上は少し危ないんじゃない? 湖の中から魔物が現れるかもしれないよ」

 ちなみに今は湖から歩いて三十歩ほどの距離を取っている。

「湖の中から何か出てきたらすぐに走って逃げるから。お願いレイン。もう少しだけ」

「うーん」


 僕は少し考えてからカールに質問する。

「ねえカール。サハギンって強いの?」

「陸で戦えばそんなに強くはないんじゃない? 陸で襲われて殺された冒険者の話は聞いたことないから。さっきも言ったけど湖から離れたら追ってこないし、遭遇しても簡単に逃げられるとかじゃない? 町の人に犠牲が出るときは大体洞窟の行き帰りで運悪くゴブリンに遭遇した時とかだから。あいつら頭が悪いから人を見たらとりあえず襲ってくるし。どっちが強いかはっきりとは分からないけど危険度だけでいえばゴブリンの方が危険なんじゃないかな」


 なるほど。

 ゴブリンより危険度が少ないなら、もう少し近づいてもいいかもしれない。

 僕はミーシャに対して告げた。

「わかったよ。ミーシャ、もう少しなら近づいてもいいよ」

「ほんとに? ありがとうレイン。じゃあもう少し近づくね。レインもついてきてよ」

「もちろんついていくよ。さすがにミーシャ一人で湖に近づけられないよ」

「じゃあ僕も」


 結局、ミーシャを真ん中に、左右を僕とカールで固めて、湖に近づいた。

 湖を覗くと底が見える。それだけ水質がいいのだろう。

「水が透き通ってて凄く綺麗ね」

「そうだね」

 ミーシャの言葉に僕は同意する。

「これだけ水が綺麗だと、泳いだりしたくなる気持ちも分かるわね」

「ミーシャは泳いだら駄目だからね」


 僕の言葉にミーシャはクスクスと笑い。

「泳がないわよ。そもそも私もレインも経験がないから泳げないんじゃない? でも水浴びくらいはしたくなるわね。まあしないけど」

 水浴びか。

 魔物が出ないならそれもいいけど。

 魔物に怯えならする水浴びは楽しめそうにない。

 そんな僕たちの会話にカールが入ってくる。


「ねえあそこ見てよ。魚がいるよ」

 カールが湖を指さして言う。

「何ていうの魚かな。カールは分かる?」

 僕が聞くとカールは唸り、

「うーん、分からないなあ」

「捕まえたら食べられるのかしら」


 なんか今にも捕まえて、とか言い出しそうだったので「捕まえないからね」と僕は言っておく。

「もう。分かってるわよ。そんなこと」

 ミーシャが少しむくれる。

 何だか実にのどかな時間だった。しかしそこにカールの少し緊迫した声が響く。

「デビルフィッシュだ」

「どれ?」


 僕が聞くとカールが指をさして教えてくれる。

「あそこを泳いでる」

 僕の目にも確認できた。

 さっきの魚よりもかなり大きい体。

 立派なあぎとが特徴的で、色は少し赤黒い。


「やっぱりいるんだね。まあデビルフィッシュは陸にいれば安全だからここは大丈夫だけど。湖に入るのは本格的に止めた方がいいね。デビルフィッシュは人を餌としか見てないから。食べられちゃうよ」

 カールの言葉にミーシャは、ゾッとしたようで、身を震わせる。

「魚を食べるのはいいけど、魚に食べられるのは最悪ね」

「デビルフィッシュは魚じゃなくて、分類は魔物だけどね」


 カールが言う。

「ねえミーシャ。そろそろ湖を眺めるのは止めて、薬草の採集を始めない?」

 僕の提案にミーシャは「それもそうね」と言って同意した。

「じゃあさっきの場所まで戻ろう」

 僕たちはバックパックを置いた場所まで戻る。

「ここまで離れたら安全だね。安心して薬草の採集を行えるよ」

「そうね」

 そうして僕たちは薬草の採集を開始した。採集はお昼になりお腹が空いてくるまで続けた。

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