13 町の散策3
冒険者用の店を見て回った後、ミーシャの希望だった一般人用の店を回った。
カールが内容が充実していると言っていただけあって、どの店も豊富な商品を取り揃えていた。
興味があれば見ているだけで楽しめただろう。
あいにく僕は一般人用の服とか靴を見ても、あまり興味がないので楽しめなかった。
少し離れたところでお店を楽しむミーシャを眺めていただけだ。
道具屋では少し小さめのかばんを買うかどうかミーシャは悩んでいた。
僕もミーシャも今は旅の荷物がすべて入ったバックパックを背負っている。
ミーシャは宿に置いておく荷物と持ち運ぶ荷物で分けたいらしい。
そもそも朝はこの町の治安がどんなものか分からず、宿の中で盗難に合うのを恐れて荷物をすべて持ってきたけど、カールに確認すると「この町の治安はいい方だと思うよ。宿の中で荷物の盗難にあった冒険者の話は聞いたことないなあ」との事だった。
なので余計なものは持ち運ぶ必要は無いのかもしれない。
結局、ミーシャは少し小さめのかばんを買った。
レインも買ったらとミーシャに言われたけど、皮の服ですでに出費があった僕はやめておいた。
その後に行ったアクセサリー屋や化粧品店は女性向きの店で僕には肩身が狭かった。
薬屋は店内の見える範囲に薬が陳列されているわけじゃ無かったので、ミーシャが店主と少し話をしただけだ。
この町でよく売れる薬は何かとかを聞いていた。
自分がお店を開いたときの参考にするためだとミーシャは僕に話した。
そして色んな店を見て回り少し疲れたというミーシャのために、お茶が楽しめる店に入った。
カールおすすめのお茶を頼み、今は椅子に座ってくつろいでいる。
「疲れたー。でも色んな店に行けて楽しかったわ」
ミーシャが嬉しそうに言う。
「僕も冒険者用の店に、色々行けて良かった。とても満足だよ」
町を案内してくれたカールには感謝しかない。
「そんなに喜んでくれると僕も嬉しいよ」
カールがお茶を飲みながら言う。ちなみにカールのお茶代は町を案内してくれたお礼に僕が出している。
さすがに何もお礼をしないのは僕の気が収まらなかったので。
「ところで一つ君たちに聞いてもいいかな。レインとミーシャって出身地は同じ場所なの? 仲はいいみたいだけど」
「同じ出身地だよ。二人ともシルド村で育ったんだ。幼馴染ってやつだね」
「そうなんだ。シルド村から来たってことは、まだ旅を始めたばかりなんだね」
「うん。この町が僕たちの旅で初めて訪れた町だよ。今までシルド村を出たことが無かったから」
「自分の生まれた町以外の町って普通に生活してたら案外行かないよね。僕もこの町しか知らないよ」
「僕、父さんが元冒険者でさ。今は冒険者を辞めて村の用心棒をしてるんだけど。僕は小さい頃から父さんの冒険話を聞いて育ったから冒険者に凄く憧れてたんだ。それで昨日ようやく旅に出ることになって、この町に来ることができたんだ。ちなみにミーシャはおまけみたいなものだよ」
「ちょっとレイン、おまけは酷いんじゃない。私だって王都で薬屋さんを開く夢のために旅に出たんだから。ちゃんと説明してよね」
「そういえばそうだったね」
正直、勝手についてきたイメージが強いけど。
「旅かぁ。なんかいいね。冒険者って感じがする。僕も本格的な冒険者に憧れてるんだけど。この町の冒険者は鉱石の採集に行くだけの人がほとんどだから、僕もなんか周りに流されちゃって……。気付いたら僕も鉱石の採集に行くだけになっちゃってる。元孤児院の仲間とか知り合いも大体そう。まあ鉱石の採集はそれだけで結構稼げちゃうから。他のことをしようとする気力が湧いてこないっていうのもあるかも。魔物と頻繁に戦う冒険者に比べて安全だしね。洞窟が崩れて生き埋めになる事故は、洞窟内の天井を土魔法で強化するようになってから一度も起きてないらしい。とてもいい事だと思う。でも僕は今の生活に充実したものをあまり感じてないんだ。もっと冒険者らしいことがしたいんだと思う」
「それでカールは外から来た冒険者パーティに参加しようと思ったんだね」
「そうだね。まあ北の洞窟のことは孤児院が大変なこともあって何とかしたいと思ったんだ。早く鉱石の採集作業が再開できるようにならないと孤児院の運営が危ういと思ったから」
確かに孤児院の状況を知ってればそれを何とかしたい気持ちもわかる。
「冒険者パーティに入って活躍できれば良かったんだけど、すぐにクビになっちゃったから」
「まあ元気出しなよ。きっとまた別の機会があるよ」
「そうだね」
その後、お茶を飲み干してから少しゆっくりし、再び町の散策に出かけた。
「結構、町を回ったと思うけど、あと残ってるのはどこ?」
僕はカールに聞く。
「町長の家と教会だね。僕は町長は好きじゃないけど立派な家だから眺めるのは楽しいと思うよ。教会はまあ普通と思う。シルド村に教会はあるの?」
「無いよ」
「じゃあ寄る価値はありそうだね。町長の家も教会も商業区から離れてるから少し歩くよ」
「わかった」
僕たちはまず町長の家に向かうことにした。
町長の家に着くまでの間、雑談をしながら歩き続けた。
そして前方に他の建物に比べて明らかに広い土地を有する建物が見えてきた。
「あれが町長の家だよ。立派な家だろう?」
「あれかぁ」
「すごーい、ひろーい」
僕とミーシャが感嘆の声を上げる。
僕が住んでた村の村長の家の十倍以上の広さがありそう。
驚くほどの広さだ。
しかも二階建て。
こんなに広い家が建てられるのは、それだけ儲かっているからだろう。
一体、何人で暮らしているのか。
町長の家族だけでは広すぎる気がするけど。
カールに聞いてみる。
「この家って町長の家族だけが暮らしてるの?」
「いや。メイドや執事を沢山雇ってて、家の中にメイドや執事が生活する部屋があるらしいよ」
「へー、そうなんだ。さすがに町長の家族だけだと家の管理が大変そうだもんね」
「確かに家の中をお掃除するだけでも大変そうね。廊下とか凄く長そう」
僕たちはしばらく町長の家を眺めて、感想を言い合った。
「それじゃ、そろそろ次の場所に行こうか。僕が案内するのは次が最後だよ」
「教会だね。ここから遠いの?」
「遠くないよ」
「それは良かった」
僕たちは教会に向けて歩き始める。
カールの言った通り教会にはすぐに着いた。
「ここが教会か。なんか独特の建物だね。ここだけ他の建物と雰囲気が違うよ」
「そうだね。見た目はかなり凝った外観をしてる。教会の外観は町によっても全然違ったりするらしいよ」
「そうなんだ。ちなみに教会って誰でも入れるの?」
「大丈夫だよ。早速、入ってみよう」
カールが教会へと入っていく。
僕とミーシャもそれに続く。
「わぁ、凄く素敵な場所ね」
中に入った瞬間ミーシャが感嘆の声を上げる。
外観も独特だったけど中はさらに独特な感じだった。
荘厳な感じといえばよいだろうか。
今にも天使や神が舞い降りて来そうな雰囲気だ。
天井は高く、窓と思われるものは七色に輝いている。
奥の方に人をかたどった像があり、教会に訪れた人たちを優しく見下ろしているようだ。
僕が放心したように内装を眺めているとカールが色々と説明してくれる。
「教会の見どころといえば、まずは綺麗で大きな窓。ステンドグラスだね。いろんな色のガラスが集まって出来ていてとても綺麗だろう。これだけでも見に来る価値があるよ。それからもう一つ忘れてはいけないのは女神様の像だね。とても精巧に作られているらしい。お祈りすると願いが叶うって言われてる」
女神様は父が言うには王都にいるらしい。
人々を率いて魔物たちと戦う国の最高権力者。
それが女神様だ。王よりも上の立場におられる唯一の存在でもある。
ちなみにこの世界には二人の神がいる。
もちろん一人は女神様だけど、もう一人は残念ながら人と敵対する存在。
魔物たちを率いて人を滅ぼさんとする邪神、つまりは魔王だ。
僕が神について思いをはせている間もカールの話は続く。
「この教会は冒険者にもお馴染みの場所だね。治癒士の方もここにいるからお金を払えば傷を癒してくれるよ」
「治癒士の方はここにいるんだね。僕の村では治癒院で治癒士が仕事してたけど」
「この町に治癒院はないよ」
「そうなんだ」
町によって色んな特色があるんだな。
その後、しばらくステンドグラスや女神像を眺めて教会内を満喫した後、僕たちは外に出た。
「今日は楽しかったー」
「楽しかったね」
僕とミーシャが興奮気味に話す。
初めて訪れた町の散策は、村との違いが沢山あって、大変興味深かった。
朝は初めてのクエストに行けた。
昼はお金を盗まれたけど返ってきたので、悪くはない。
むしろそのおかげでカールと出会えて楽しい一日を過ごすことができた。
結果として良い事ばかりな気がする。
本当に冒険者として旅に出て良かったと思う。
「レインたちは明日はどうするの?」
「明日はまた朝から薬草の採集クエストに行くと思う」
「今日はお買い物でお金を使っちゃったしね」
カールの質問に僕とミーシャが答える。
「もしよかったらさ。薬草の採集クエストに僕も一緒に連れて行ってくれないかな」
「別に構わないよ。ミーシャもいい?」
「もちろんいいわよ」
「ありがとう。二人とも」
「ちなみにカールは薬草の採集クエストに行ったことはあるの?」
「あるよ。僕、成人して孤児院を出たらすぐ冒険者登録したんだけど、冒険者になって最初の頃に一度だけ薬草の採集もしたことある。採集中、周辺に人が全然いなくて、魔物が出たらどうしようって思っちゃって怖くて結局すぐに帰った記憶があるよ。鉱石の採集の方は周辺に人が沢山いるから怖くなかったけど」
なるほど。
今日の朝、僕たちが薬草を採りに行った時も全然人が周りにいなかった。
確かに一人だと魔物の発見が遅れたりして危険かも。
薬草の採集クエストが不人気なのは稼ぎの低さだけでなく、そういう要因もあるのかも。
「明日の待ち合わせは冒険者ギルドでいいよね」
「構わないよ」
それから僕たちは明日集まる時間を決めて解散した。




