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母の病気を治すため、森に薬草を採りに行く話  作者: さまっち
第三章 ロマールの町
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6 報酬の行方

 美味しい食事を終えて、さあ帰ろうとなり、支払いを済ませようとした時事件は起きた。

「あれ? クエストの報酬が入った袋が無いぞ」

 僕は服のポケットに手を突っ込むが袋が見つからない。

「おかしいな。ここに入れておいたはずなんだけど。別のところだったかな」

 別のポケットを一つ一つ探るがやはり袋はどこにも見つからなかった。そんな僕の様子を見かねたミーシャが口を開く。


「ちょっとレイン。もしかして失くしたんじゃないでしょうね」

「そんなはずは……」

「でも、見つからないんでしょう?」

「う、うん」

 そんな会話をしてたら、店員に怪訝な表情をされて言われた。

「あのー、お客様。お支払いするお金が無いとか言わないですよね」


「いえ、それは大丈夫……のはずです。ちょっと待ってください」

 お金はある。

 村で貯めた方のお金があるからだ。

 まさかそちらの方のお金も失くなっていることはあるまい。

 僕は急いでバックパックの中を探す。

 今度はすぐに見つかった。


 ちなみに村で貯めたお金は両親に貰った袋に入れてある。

 ギルド職員に貰ったのよりも大きな袋だ。

 僕はその袋からお金を取り出して昼食代を支払った。

 ミーシャの分も一緒にだ。

 もともとミーシャも手伝った採集クエストの報酬で支払おうと思っていたので、僕が出すべきだろう。

 報酬を失くしたのは僕なのだから。


 支払いを済ませた僕たちを店員が安堵の表情で「ありがとうございましたー」といって送り出してくれる。

 僕たちは「ごちそうさまでした」と告げて店を出た。

 店の前で僕は釈然としない気持ちに襲われる。

「どうしてなくなっちゃったんだろう?」

 冒険者ギルドからここに来るまで距離も時間もそれほどあった訳じゃない。

 その間の道に落としたのだろうか。


「ねえ、ミーシャ。どこかに落としてるのかもしれないから冒険者ギルドまでの道を探しに戻ってもいい?」

「別に構わないわよ。でも落としたのならもう誰かに拾われてるかもしれないわね」

「うん。でもまあ一応。それに冒険者ギルド周辺は人があまりいなかったから、拾われていない可能性もあるよ」

「そうね。戻ってみましょう」


 それから僕たちは冒険者ギルドまで引き返しながら、道に袋が落ちていないかよく見る。

 可能性は低いかもしれないが見つかれば嬉しい。

 そんな願いも虚しく見つからないまま、冒険者ギルドの前まで戻ってきてしまった。

「無かったね」

 僕の沈んだ声が虚しく響く。


「冒険者ギルドの中も一応調べる?」

 ミーシャの提案に僕は迷いを見せる。

 せっかくギルド職員に貰った袋を失くしてしまい知られるのが気まずかったからだ。

 少しの逡巡の後、僕は腹をくくる。

「冒険者ギルドの中も調べよう。ここまで来たらとことん調べよう」


 そういって僕は冒険者ギルドの中へ入った。

 中に入ると冒険者が一人いてギルド職員と話をしていた。

 よく見るとその冒険者はパーティを脱退されられていた少年で、ギルド職員に向かって話しかけている。


「とにかくひどいんだよ。あの冒険者たち。僕のことを甘く見てるんだ」

 どうやらギルド職員に向かって愚痴を言っているようだ。

 ギルド職員がどこか困ったような顔で「はぁ」と相槌を返している。

 とりあえず僕は床に袋が落ちていないことを確認した。

 でも仮に冒険者ギルド内で袋を落としていたら、ギルド職員が気付いて忘れ物や落とし物として管理しているだろう。


 僕がギルド職員に話しかけようか迷っていると、向こうから話しかけてくれた。

 愚痴の相手に辟易していたのかもしれない。

「どうかされましたか?」

「あの、先程僕たちが冒険者ギルドを出た後に、忘れ物や落とし物はありましたか?」

「忘れ物や落とし物ですか? いいえありません」

「ですよね」


 僕はがっくりと肩を落とす。

 そんな僕の様子を見たギルド職員は心配そうに告げる。

「何か失くされたんですか?」

「はい」

「どういったものを失くされたんですか?」

 僕は意を決して答える。

「お姉さんに頂いた袋を失くしてしまって」

「報酬を入れた袋ですね」


「はい。報酬ごと失くしてしまいました」

 僕の言葉にギルド職員もさすがすぐには言葉が出ないようだ。

 代わりに少年が僕たちに興味を持ったのか話しかけてくる。

「報酬を失くしちゃったの? それは災難だね。あ、僕カールっていうんだ。お二人は見ない顔だね。他の町の冒険者かな」

 カールが僕たちに親しげに話しかけてくる。


「そうだよ。僕はレインっていうんだけど、こっちのミーシャと王都を目指してるんだ」

「やっぱり王都は憧れちゃうよね。僕も行ってみたいな。それはそうと報酬を失くしちゃった件だけど。失くしたことにどこで気付いたの?」

 僕は食事を取った店の名前を告げる。

「それってここで報酬を受け取って、そのままその店に向かって、店に着いたらもう無かったってこと?」

「そうだよ」


 カールは少し考えてから告げる。

「勝手に無くならないと思うんだけど。店に向かうまでの間に、何もなかったの?」

「特には何もなかったと思うけど……」

「本当に? 途中で転んだりしてない?」

「転んだりしないよ。子供じゃないんだから」


 その時、僕の隣のミーシャが、あっ、と声を上げた。

 何か思いついたようだ。

「そういえばレイン。店に行く途中で子供とぶつかったじゃない。その時にポロっと落としたとかは考えられるんじゃない?」

「ああ、そういえば、痩せた子供とぶつかったんだった。あの時に落としちゃったのかな」


 僕が落ち込んだ表情を見せていると、カールが聞いてくる。

「それってもしかして、ぼろい服を着た子供ってこと?」

「そうだよ。よく分かったね」

「何暢気なこといってるんだい。それはつまりその子供にすられたってことだよ」

「……それってつまり盗まれたってことだよね」

「そうだよ。そんなの盗られた時点ですぐに気付かなきゃ」


 僕はミーシャと顔を見合わせる。

 正直僕たちの村にはそういう人がいなかったので、その発想はなかった。

「町にはそんな人もいるのね」

 ミーシャが諦めの含んだ表情でいう。

「そうみたいだね。町も良い面ばかりじゃないみたいだね」


 憧れていた町には、良い面もあれば悪い面もあるということを知れて少し勉強になった。

 報酬が盗まれたのならもう手元に戻ってくることはないだろう。

 僕は思わずため息をつく。

 そんな僕たちの様子を見て思わずカールが「そんな田舎者みたいなこと言って」と漏らしたが、すぐに「あ、いや田舎者が悪いってわけじゃないけど……」とフォローしていた。

 田舎者と言われて反応が顔に出てしまっていたのかもしれない。

 少し変な空気が流れたが、それを打ち消すようにミーシャが言う。


「ま、盗まれたんじゃしょうがないわね」

 それに僕も頷いて同意する。

「諦めるしかないね。頂いた袋は残念だけど。報酬自体はまた採集に行けばいいんだし」

 その時、カールが得意げに告げた。


「諦めるのは早いよ。多分大丈夫」

 僕とミーシャは再び顔を見合わせる。

 そんな僕たちに向かってカールは力強く告げた。

「取り返せると思う。僕に任せて」


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