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母の病気を治すため、森に薬草を採りに行く話  作者: さまっち
第三章 ロマールの町
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4 初めての報酬

 空腹で町に戻った僕たちは昼ご飯の前に冒険者ギルドに寄って、採集した薬草を届けて報酬を得ようということになった。

 さっそく冒険者ギルドに入り、ギルド職員に声をかける。

「あの、薬草を採集してきました。これなんですけど」

 そういって僕はカウンターの上に薬草の入った麻袋を置く。


 ちなみにここに来る前に、ミーシャが集めていた珍しくない方の薬草もギルドから渡された麻袋の中に入れている。

 別々の麻袋のまま提出してもよかったが、冒険者でなくクエストも受けていないミーシャが集めた薬草に対してきちんと報酬が支払われるのか自信が無かったから、一緒にしてしまった。

 これなら何の問題も無いはずだ。


「確認しますね」

 そういってギルド職員が麻袋の中を軽く覗き込み、頷く。

「それでは薬草の種類ごとに仕分けますのでしばらくお時間を頂けますか? 報酬のお支払いはその後になります」

 わざわざそんなことをするのか。

 薬草は種類ごとに報酬が違ってくるので、必要なのは分かるが、大変そうだなと思ってしまう。

 僕がそんなことを考えているとミーシャが声を出した。


「それなら私も手伝います。種類ごとに分ければいいんですよね」

「いえ、お客様にそんなことをさせるわけには……」

「いいんです。どうせ待つ間は暇なので。お手伝いした方が早く終わりますよね。その代わり、作業をしながらこの町について色々と教えてほしいです。私たちこの町に来たばっかりで、この町についてよく知らないんです」

 ギルド職員は少し悩んだ後、「分かりました。そういうことでしたらお手伝いをお願いします。私に分かることでしたら答えますので、何でも聞いてください」


「ほんとに。やった、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございます」

「ちなみにレインもお手伝いだからね」

「わかったよ」

 そうして僕たち三人は薬草の仕分けを始めた。

 仕分けをしながらミーシャがギルド職員に話しかける。


「お姉さんは一人でこの冒険者ギルドを運営しているんですか?」

「いいえ。私にも上司が一人いますし、それに本来ならお手伝いさんが沢山いるんです」

「今はお姉さんしかいないみたいですけど」

「そうですね。本来なら町の人たちが北の洞窟の採集クエストを受けるために、この場所に沢山の人が訪れるんですけど、今は問題があって」

「そういえばクエスト一覧のところに魔物活性化の兆しあり、って書いてありましたね」


「ええ。北の洞窟内で最近、町の人が立て続けに魔物に襲われて、犠牲者が結構出てるんです。クエストを受けてる人は冒険者登録はしていても、この町では一般の人がほとんどですから。それで町の人たちは今、クエストを控えている状態なんです」

 そういってギルド職員はため息をつく。

 なるほど。町の人は今困っている状況なわけだ。

 僕は気になったことを聞いてみる。


「洞窟内の調査の緊急クエストがありましたけど、誰か町の腕自慢の冒険者が調査に向かったりしてるんですか?」

「町の人で腕自慢かどうかは分かりませんが、何人か調査に向かいましたけど、今のところ、皆さん力不足で原因を発見できずに帰ってきました」

「そうなんですね」

「この町の人は基本的に受けるのが採集クエストなんで、皆さん特にパーティを組んでいないんです。元々魔物はそんなに出る方じゃないですし、魔物が出ても走って逃げる人がほとんどです。魔物と戦う人は本当に一握りの人だけですね」


「それじゃ調査に向かった町の人たちもソロだったんですか」

「そうです」

 ギルド職員は断言した。

 なるほどそれで力不足で皆、帰ってきたというわけか。

 そこまで考えて、僕はふと疑問が湧く。

「あれ、でも今日の朝に冒険者パーティがここから出てくるのを見たんですけど」

「彼らは町の外から来た冒険者パーティです。私の上司が他の町の冒険者ギルドに緊急クエストの依頼を出したので、それを見てやってきた冒険者たちですね」


「ということは、北の洞窟の調査に向かったんですか?」

「はい。だから近いうちに魔物が活性化している原因が判明するかもしれませんね」

 僕は今朝すれ違った冒険者たちの様子を思い浮かべる。

 正確な所は分からないが、結構強そうな冒険者のようにも見えたので、彼らなら原因を究明できるかもしれない。

 僕が考えを巡らせていると、再びミーシャが口を開く。


「魔物が活性化する原因ってどんなものがあるんですか?」

「強い個体が発生すると周辺の魔物が活性化するようです。歴史を振り返ってみても、それが原因のほとんどですね」

「なるほど。じゃあ洞窟の奥に何か強い魔物が現れたということですね」

「そう考えるのが妥当です」

「それにしても北の洞窟が危険で採集に行けないのは分かりましたけど、皆さん代わりに薬草の採集に向かおうとはならないんですね」


「そのようですね。鉱石の採集は薬草の採集に比べて格段に稼げるんです。鉱石の採集をしていた町の人たちは貯蓄も結構あると思いますので、わざわざ稼ぎの低い薬草の採集に向かう気にはあまりならないのかもしれません。薬草の採集に向かう人もゼロではないのですが少ないですね」

 その後もミーシャが色々とギルド職員に質問をし、そのすべてに丁寧に答えてくれた。

 話をしながらだったから仕分けの方の手が滞り気味だったけれど、それでも遂に薬草の仕分けが完了した。


「二人ともありがとうございます。おかげで楽しい時間を過ごすことが出来ました。後はそれぞれの薬草の重さを量るだけです」

 そういってギルド職員は量りを部屋の奥から持ってきて、薬草の重さを量りながらメモを取る。

 すべての薬草の重さを量り終え、少し計算をした後、小さな袋にお金を入れて僕に差し出した。


「こちらが今回の採集クエストの報酬になります。ちなみにこの小さな袋は仕分けを手伝ってくれたお礼のサービス品です。小銭入れとしてお使いください」

「ありがとうございます」

 僕はお礼を言って小さな袋に入ったお金を受け取った。

 早速、袋の中を覗き込んでお金を確かめる。

 僕の冒険者としての初稼ぎだ。

 朝から昼までしか働いていないから、金額的には多いわけではないが、それでも僕にとっては嬉しかった。


「ねぇ、レイン。今日の宿代くらいにはなった?」

「二人で一泊する分には足りないみたいだね。でも昼からも薬草の採集に向かえば一日分の宿代は稼げそうだよ」

「なら昼からも薬草の採集に行く?」

「それでもいいし。町の中を見て回るのもいいんじゃない? でもとりあえずはお昼ご飯だね」

「そうね。ねぇ、お姉さん。私たちこれからお昼ご飯を食べに行くんですけど、どこかおすすめの場所はありますか?」

「そうねえ……」


 ギルド職員がおすすめの店の名前と料理名、それと大体の場所を教えてくれる。

 僕たちはギルド職員に感謝を述べ、ミーシャとそこに行ってみようと盛り上がる。

「そういえば、お姉さんはお昼はどうするんですか?」

 ミーシャがふと思いついたように告げる。

「私はお弁当を作って持ってきています。今日はここに私一人しかいないので、離れるわけには行きませんし」

「そうなんですね。あれ、もしかして私たちの対応をしているからお昼が食べられないとかですか?」


「そんな風には思っていませんけれど、誰もいなくなったらその間にお昼を食べようとは思っています」

 ということは、やはり僕たちのせいでギルド職員は食事を取れない状態が続いているのかも。

 僕たちはさっさと撤退した方が良さそうだ。

「それじゃ、ミーシャ。僕たちはそろそろ食事に向かおうか」

「そうね、レイン。お姉さん、またお話を聞かせてください」

「はい。かしこまりました。それではまたの訪れをお待ちしています」

 ギルド職員の言葉を最後に、僕たちは冒険者ギルドの出口へと歩き始めた。


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